第13話 態勢を整えるために街へ戻る
わたしは木から降りるとブリード様の元へ駆け寄ります。
「ブリード様、しっかりしてください」
わたくしが声をかますと、ブリード様は
「また……やられてしまいました……」
と悔しそうにつぶやきました。
「仕方がありませんよ……」
「1日に2度もこんな失態をしたら……エルマに合わせる顔がありません……」
「いえ、ブリード様にはエルマ様と顔を合わせて頂かないと困ります」
「……確かに、そうですね」
「わたしもエルマ様の護衛でありながら、盗賊団に攫われてしまいましたので、護衛失格ですし」
「そうでしたね……落ち込んでいるのはアストリアも一緒でしたね」
「はい、なのでエルマ様を救出に行きましょう」
「ですね」
ブリード様は立ち上がりますが、エルマ様を追いかけるにしても
もうわたしには加護の力は使えませんし、ブリード様も武器がありません。
「追いかけても、今の私たちではエルマを救出できません。
拠点はわかっていますので、ある程度目星は付きますが……
拠点と言っても、砦みたいなものなので部隊を率いらないと戦えません」
「そうなのですか?」
「はい、拠点と言っても軍の駐屯地みたい物ですから」
ブリード様の説明では、盗賊団の拠点は軍の駐屯地や基地と同じだそうです。
なので、エルマ様を助けるにしても、こちらも部隊を率いらないと
いけないそうですが、これが盗賊団の討伐の手間取っている理由の1つです。
つまり、盗賊団と言いましても、軍と戦うのと一緒だそうです。
さらに、デリーは拠点を定期的に移動しますので、どこに居るのかも分かりません。
自然の洞窟などを利用しているため、まだわかっていない拠点もあるそうです。
ただ、1年前はスパイの情報により、居場所がわかり一斉に攻撃をし
ブリード様とデリーの一騎討の末、お互い大怪我を負いました。
そして、その混乱の中、デリーは部下たちに運ばれて脱出したそうです。
そのまま死んでもおかしくない怪我でしたが、どのように治療をしたかわかりません。
しかし、怪我を治しこのように再び活動を再開したそうです。
「この辺りでも、大小3つの拠点がありますが、どこにいるかまではわかりません」
「そうなのですね」
「なので、3つ全てを同時に攻めるか、デリーとエルマの居場所を特定して
エルマの救出とデリーの逮捕をするしかないです」
「定期的に動きますと、難しいですね」
「そうですね。ただ、食料や水の問題もありますので、2つに絞れますが
態勢を整えるため、デジョンに戻りましょう」
「そうですね。あと、この盗賊たちはどうしますか?」
「ほっといても良いですが、警察に任せましょう」
「そうですね」
警察もブリード様がおられないのなら、きっとこちらに来ます……と思いましたら
「ブリード様!」
と言う声がして、警察たちがこちらへやって来ました。
「ブリード様、ご無事でしたか」
「私は無事ですが……エルマは助けられませんでした」
「そうでしたが……」
警官たちはこれを聞いて、帽子を深くかぶります。
「仕方がありません。ただ、逃げ込む拠点は目星がつきます。
なので、デジョンに戻り態勢を整えましょう」
「わかりましたが……軍の部隊を集めるのは早くて数日はかかりますよ」
「そうですが、数日も待っている時間はありませんので、私たちで救出する作戦をたてましょう」
「わかりました」
軍を待っている時間はありませんので、ブリード様は自力でエルマ様を救出する事にします。
「あと、あそこに倒れてる盗賊もお願いします」
「死んでいるのですか?」
「どうでしょう、わかりません。この先にも残りがいるようなのでお願いします。
私たちは先に馬で、デジョンに戻りますので、あとは頼みます」
「わかりました、お気をつけて。おい、収容をするぞ」
「はい」
警察たちは3人の盗賊を馬車に収容し、残りの3人の様子も見に行きます。
わたしとブリード様は先程乗って来た馬に乗り、デジョンに戻りましたが……馬に乗るのはとても疲れました。
デジョンの別邸に戻ると、ブリード様はエルマ様が昨晩使った部屋にわたしを案内しました。
「アストリア、お疲れですのでお休みください」
「ありがとうございます。でも、この部屋で良いのでしょうか?」
「エルマが居ませんし、アストリアは活躍しましたのでここで休んでください……」
「わかりました、ありがとうございます」
「では、ゆっくりしてくださいね」
ブリード様は部屋を出ていきますが、表情は寂しげです。
予定では本日中、ブソンニに到着し、3日後に結婚式を挙げる予定でした。
しかし、このような事になってしまいました。
ブリード様も盗賊団の襲撃はお考えになっていましたが、相手がそれ以上でした。
本来ならば、ちゃんとしたエルマ様の護衛をつけるべきでしたが……それを言っても仕方ありません。
公爵様もこのような事態になるとは思っていなかったはずです。
ただ、こうなった以上はエルマ様を救出しなければなりません。
それに、この事は公爵様にもご報告しないといけませんので、ブリード様も気が重いと思います。
そして、わたしも護衛として失敗をしましたので……覚悟はしています。
「でも……このベッドはフカフカですね……」
戦いの疲れと加護の力を使った疲労から、ベッドに横になるとそのまま眠ってしまいました。
第1章完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます