第3.5膜 フィリアはお医者ちゃん編
三十四発目「オ○ニー救急車は空を舞う!」
「うがぁぁぁっ!! 痛い痛い痛いぃぃっ!!」
夜明けの和室で、
リリィさんが解毒魔法をかけた途端、
リリィさんは慌てて腕を引っ込めて、明らかに動揺していた。
「おかしいですね…… 解毒魔法も回復魔法も効かないどころか、むしろ悪化している……?」
リリィさんは顔を俯けて、深刻そうに自問自答した。
「ねぇっ……
その顔色は真っ青で、涙をぽろぽろと流して、目線を右往左往と迷わせている。
「ねぇリリィちゃん。どうすればいいの? なんで和奈がこんな目にっ?」
「分かりませんよ…… あたしは医学の専門ではありません。 解毒魔法が効かないどころか悪化するなんて症状は、聞いたことがありません。
公国の病院に行くことが出来れば、治療が出来るかもしれませんが…… 公国には、世界一の名医、シャイニング・ジョーカーがいます。
「公国!! 着くまでどれくらいかかるんだ?」
俺はリリィさんに尋ねた。
「まる
「二日……か……」
あまりに遠かった。
今の
でも、こんな苦しそうな状態なのだ。
一刻も早く、なんとかしなければいけないと肌で感じる。
あぁもう。なんでこんな事になっているんだよっ。
神様は俺を休ませてくれないのか?
ただでさえ、洞窟内の絶望的な状態から、仲間を増やして立ち上がって来たのにっ。
どうしてまた、困難が起こるのだ?
考えても、考えても、答えは出なかった。
俺には知識がない。何も知らない、無力なのだ。
「大丈夫だ!!」
そんな時、図太い声が和室に響いた。
「この獣族独立自治区にも、最高の名医がいる。 フィリアの父、
驚いた俺は、声のする方へと振り返ると、
そこでは、浴衣姿の
「
リリィさんが、驚いた様子で
「あぁ。
俺は安心して、泣きそうだった。
思わぬところから助けがきた。
昨日、俺達が助けた、
無駄じゃなかった。
リリィさんを信じたことも、あのボス戦の後に、浅尾さんと直穂の二人ともを助ける選択をしたのも。
全て、間違っていなかったと思う。
とにかく
俺は勢いよく立ち上がった。
「ありがとうございます、
えっと、
俺はそう言い残して、敷布団の上から腰を上げて、
和室の外へと飛び出した。
「
俺の意図を汲み取ってくれたのだろうか。
閉めた襖の向こうから、
それは、寝起きの俺の息子を元気にさせるのには十分だった。
(ありがとう……)
さすがに口に出すのは恥ずかしいから、心の中で感謝して、
俺は自身の竿へと手をかけた。
随分と年月を感じる、木造の渡り廊下。
赤土が剝き出しの
天井からは、朝日の残滓が舞い降りてきて、夏の朝の涼しい解放感に包まれるようだ。
なんて、感傷に浸っている場合ではない。
早く、早くっ!!
俺は、賢者にならなければイケないのだ。
俺は手を動かしながら、全神経を妄想に集中させた。
つまりこんな風に、あのお淑やかな浴衣を、はらりはらりとめくった先には……何もない。
いや、あるのだ。
真っ白な二つの大福が。
その頂点には小さなさくらんぼが!!
っつ……!!
興奮と運動が加速する。
俺のオ〇二ーは、もう誰にも止められないぜ……
そう思った。
「――・・・?? ・――・・・??」
俺のすぐ左隣から、猫みたいな可愛い声が聞こえた。
え? 誰?
俺は慌てて、左隣を見た。
そこには、獣族ロリ幼女がいた。
毛深い毛並みに、あなどけない綺麗な瞳、
そして白いシャツに、オムツのようなモコモコしたパンツ。
身長は俺の腰より低い。
幼稚園児くらいだろうか? 小学校低学年?
そんなケモ耳幼女が、リリィさんみたく興味深々の目で、俺を見上げていたのだ。
「――・・・?? ・――・・・??」
少女は真剣な目で、何かを尋ねてくる。
獣族語を知らない俺には、何を言っているのかさっぱり分からない。
オ○ニーの手を止めるべきだろうか?
俺は迷った。
俺が今行っている
しかし俺の限界も近かった。
俺は、止まる訳にはいかなかった。
それに、見られながらの方が、興奮するじゃないかっ!
俺はロリ少女に構うことなく、
ロリ少女に見られながら、高みへと登っていく。
「
思わず俺の口から、彼女の名前が飛び出した。
あ、しまった、と思った。
情けない声が、本人にも聞こえてしまった筈だ。
俺のすぐ後ろの襖の向こうには、彼女達がいるのだから。
「
俺の後ろから、
すこし声が震えていて、恥じらいながら、でも真剣な声だ。
襖の向こうで
可愛い。
人の目を気にするところがあって、実はアニメオタクだということも、友達に隠してしまうほどに。
そんな彼女が、勇気をだして、俺を励ましてくれた。
俺は嬉しくて、幸せで、胸が熱くなった。
同時に下半身も熱くなった。
もう駄目だった……
「……うっ………」
一晩で溜まったモノを、全て解放して。
俺は、賢者になった。
『白いおしっこ……変なにおいする。おにーさんナニモノなの?』
俺の足元で、そんな声が聞こえた。
そこには無視していたはずの獣族幼女が、つま先立ちで背伸びをして、俺のパンツの中を覗いていたのだ。
「うわぁぁぁ!?」
俺は驚いた。
獣族幼女は、可愛い顔で俺を見上げる。
『ねぇねぇ、どうして光ってるの?』
ケモ耳幼女は、不思議そうに俺に尋ねた。
光っている、というのは、"賢者の白い光"の事だと思う。
賢者になった俺は、体が白く輝いていた。
俺は、獣族語を理解していた。
目の前の複雑な発音も聞き取れる。
言葉の意味も、すべて知ってる。
これも全て、全知全能の「賢者の力」である。
なんて便利なのだろうか。
賢者になれば、どんな複雑な言語だろうと、全て
『ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。僕はお医者さんを探しているんだ。お医者さんがどこにいるか分かる?」
俺は、賢者の力が教えてくれた獣族語で、なるべく丁寧な言葉で少女に尋ねた。
しかし発音が難しくて、少し話しただけで頬っぺたが痛くなった。
うまく伝わったのだろうか?
『まずはネルの質問に答えるの。おにーさんはナニモノなの?』
ネルという幼女は、不満そうにして。
先に私の質問に答えろ、と主張した。
『頼む、急いでるんだ。教えてくれないか?』
『嫌なの。先におにーさんが教えるの。 おにーさんはナニモノなの? ネルもおにーさんみたいに光りたいの。 教えてくれたらネルも、お医者さん教えてあげるの』
『なんだとぉ、じゃあ俺も教えてあげなーい。ほかの人に聞けばいいしな。
でももし、ネルちゃんが先にお医者さんのコトを教えてくれたら、俺も本当の事を教えるよ』
『なっ、ずっ、ずるいのっ……』
幼女は、顔を真っ赤にして怒った。
『ほ、ほんとに?? ネルが先に答えても、ちゃんとネルに教えてくれるの?』
『あぁ、俺は嘘はつかない』
幼女は訝しんだ目で、俺の身体に顔を近づけて、クンクンと鼻を鳴らした。
そして、ある方向を指差した。
『お医者さんは向こうなの、山を二つ超えた先の、大きな村の崖の上にあるの』
幼女はそう言った。
賢者としての俺の知識は、幼女の話が嘘ではないと、教えてくれた。
『そうか、ありがとう!! じゃあ俺も質問に答えてあげる。 俺が何者か? だって? 俺は人間だ。 そして今、俺がしていたコトは、"オ○ニー"だ!』
『"おあい"? なにそれ。意味が分からないの」
俺は"オ○ニー"の部分を、あえて日本語で発音した。
それが功を奏したのか、目の前の幼女はしきりに首をかしげている。
『おにーさんが嘘はついていないのは、においで分かるのっ!! でも
、"おあい"って何なの? 教えるのぉぉ!!』
幼女は怒って、俺にしがみついてきた。
だがこれ以上、幼女に構っている時間はない。
賢者タイムは残り八分。
早く、浅尾さんを医者の元に連れて行かないといけない。
俺は和室のふすまを開けて、幼女を優しく振り払って、和室へと戻った。
和室の中には、
不安そうな顔。苦しそうな顔、恥ずかしそうな顔。
いろんな顔が俺を見ていた。
みんなの顔を見て、俺は笑顔を作った。
「もう大丈夫だ、
俺は
腕の中でぐったりとした
「気をつけてね。
心配そうに見上げる
俺は空へと舞い上がった。
『すっ、空を飛んでるのっ!!』
獣族の幼女ネルちゃんは、大空へと飛び立つ行宗を見て、目をキラキラと輝かせていた。
「お別れを、言えませんでしたね……」
金髪ツインテ美少女は、小さな声で呟いた。
ーーーーー
ごぉぉぉぉ!!
風を切り裂く轟音と共に、俺は賢者の力で、大空を舞っていた。
眼下には、草木の少ない岩肌の多い山がある。
自然豊かだとはいえない、砂漠のような山々であった。
きのう水浴びした森と比べても、景色が全く異なっていた。
「
俺の背中にしがみつきながら、
「ごめんねっ、私はいつも迷惑かけてばっかりで。ほんとに私は、助けてもらってばっかりだよっ……」
だって、教室で俺が見ていた浅尾さんは、いつも元気で強かった。
みんなを励まして前向きで、一昨日のスイーツ阿修羅との戦いだって、先陣を切って戦っていた。
今の
「
俺がそう言うと、
「それは買いかぶり過ぎたよ…… 今の私を見れば分かるでしょ? 私はただ、平気なフリをしてただけだよ……」
俺が、なんと答えようかと迷っていると、
「ねぇ、
「……まぁ、俺は帰宅部の二次元オタクだからな。少食なんだよ……
逆に
俺は言い淀んだ。
俺の背中には、浅尾さんの爆乳が押し付けられている。
弾力とエネルギーに満ち溢れた張りのある筋肉である。
いかんいかん、変な想像をするのはよそう。
俺は
たとえ妄想の中であっても、浮気するのは良くないはずだ。
「膨らんでるって……はぁっ!?、私が太ってるって意味っ!?」
急に不機嫌になった浅尾さんが、俺の両頬を軽くつねった。
「いや違うっ! 筋肉が膨らんでるというかっ。胸が柔らかいというかっ」
「え? ……胸っ?! へっ、変態っ!」
今度は強くつねられた。
「いやー。まずいな」
俺は呟いた。
二つの山を越えると、獣族幼女は言っていた。
そして今、やっと二つ目の山へと差し掛かった。
賢者タイムは、残り2分しかない。
「間に合わない……」
焦りながらも、俺は少しでも前へと空を飛んだ。
浅尾さんは、苦しそうに息をしているものの、会話できる程には状態が安定していた。
俺達は、賢者タイムの終わりと共に、二つ目の山の山頂付近へと降り立った。
ここから先は、山道を歩いていくしかないようだ。
「うっ……! くっ……」
「
空から見た時は、すぐ近くに見えたはずの山頂が、なかなか見えなかった。
あまり舗装されていない、岩肌の道路。
浴衣は汗が染みてびしょびしょだった。
夏の日差しが。ギラギラと照りつける。
山道に、男女二人きり。
賢者タイムの効果が切れたのだ。力が元の俺に戻ってしまった。
運動不足の俺の身体は、歩き始めてすぐに悲鳴を上げた。
「ねぇ、
「……
「……っつ! ……怒る元気もないわ……
「冗談に決まってるだろ? 俺のオカズは
「名言みたいに聞こえるけど、めっちゃキモいよ?」
俺は
この世界に来るまでは、
この世界に来てからも、たった二人きりで話すのは初めてかもしれない。
でも、俺達の会話は自然につながっていた。
俺のコミュ力が上がったのかもしれないと、一瞬血迷ったが、それは違う。
見たところ
しかし、呼吸は乱れていた。
そして心臓の拍動も早い。
急がないとな……
またいつ、容態が悪化するか分からない。
それに、こんなに強い日差しの下に、病人を晒しておく訳にはいかないからな。
……割と本気で、もう一度賢者になるべきだろうか?
そうすれば早く病院につける。
しかし、連続発射は苦手なのだが……
どうしようかと迷っていた時。
タッタッタッタッ……
前方から、見覚えのある女の子が走ってきた。
ケモ耳の少女は、ハァハァと息を切らしながら、山道を駆けおりてきていた。
そして俺と和奈を見るなり、目の色を変えて体を震わせた。
「ど、どうして……人間がここに??」
その女の子は、昨晩俺たちが助け出した少女。
フィリアちゃんだった。
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