終戦
「ハい、ストップ」
「いてっ」
今にもミロクを叩き殺さんとしていたシズクの暴走は、刺張った緑の鎌でこつんと頭を叩かれたことで止まった。
止めに入った何者か。その声に聞き覚えがあったシズクは驚きで目を真ん丸に見開き、バッと勢い良く振り返る。
そこには、羽をはためかせて空に滞空する一人の皇蟲人がいた。
深い緑を基調とし、体全体を蝕むように黒い歪んだ線を走らせた少女。目は眼球に瞳孔が複数あり、手首の先には手の甲に沿う様にして大きな鎌が生えている。スラリと細い体型に二本の鎌を携えるその姿は何処と無く蟷螂を連想させた。
そして、シズクにはその少女に見覚えがあった。リアルでの親友にして、自分がお花畑を見せる為に頑張っていた相手。
「マリ、、、あっ、、、ろ、、、、、、と、とりあえず、なんで此処にいるの?」
「もちロン、シズクに会いに来タんだヨー。そレと、本名で呼バズにプレイヤー名で呼ぼウとしたのは偉イ!進歩ダ!!」
「えへへへへ。す、凄いでしょ?」
ぎゅっと少女に抱きしめられ、褒められたシズクは、先程までの形相からは考えられないほどににやけた表情で少女からのナデナデを享受した。
「改メテ、アタシの名前ハ
「うん!」
ナデナデ褒め褒めと甘やかされ、すっかり蕩けてしまったシズクは、はにかんだまま元気な返事を返した。
「サテ、本題だ。シズク、イーい?アタシは皇蟲人の中でもドチラかといウと肉食系の種族ナノ。だかラ、お花畑でピクニックをするノは楽しいと思ウケど、シズクと一緒なら正直どこデモ楽しイの」
シズクは、Robynの言葉を聞いて、察した。そして気がついてしまった。
「お花畑は、、、絶対に必要って訳じゃ、、、ないの?」
「ウん。シズクが居レバどこデモ良イよ?」
自分が、必須ではないもののために、数多くの人を殺してしまったことに。
「あっ、はっ、わ、あ、あ、あ、、、、」
「だかラネ?ちゃンと謝ッたら、一緒に他ノ場所でピクニックに行こ?」
「ご、ごめ"ん"な"ざい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"」
シズクは、Robynに抱きしめられたまま泣き出した。
「はぁ、こんな事情なら吾を呼び出す前にさっさと片付けておいて欲しかったものだ」
二人の友情劇を見ていたミロクは呆れたように吐き捨てつつも、その顔にはどこか安堵が含まれていた。
「なぁ、残滓の採集は順調か?」
「そんな訳があるか。虫ケラに無意味な時間を取らされ、予定以上に大幅に遅れている。全く、俺は
話しかけられたキリシマは、採集の手を止め、考え込む。
キリシマは自分の中で結論付ける。そして、立ち上がり、男の方を向いて言い放つ。
「来るのが早い」
憎々しげに吐き捨てた後、脱兎の如く駆け出した。スキルも魔法も遠慮なく使い、妨害を施して行く。相手はプレイヤー最強。速度も攻撃力も劣るキリシマに、自分のプライドを優先するような余裕はなかった。
そんなキリシマに対し、ロロは焦ることなく頭上を見上げ、指示を出す。
「祥蔵、凪払ってくれ」
「了解した」
ふぅー。
ブォンッッッッ!!!!!!!
明らかに手加減された
「、、、流石は最強の竜種と言った所か」
キリシマが十数秒かけて稼いだ距離は、祥蔵がたった一度翼をはためかせただけでゼロとなった。
キリシマは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。いくら種族的に遅いとはいえ、今回のこれは明らかに相手が速過ぎた。
「力量差を理解してくれているんなら話は早いな。大人しく
そうはいかないんだろ?とでも言いたげなロロの視線を受け、キリシマは苦虫をダース単位で噛み潰したような表情になる。事実大人しく捕まる訳ではないのだが、それを相手側から言われるというのは、非常に癪なものだった。
「あまり表には出すなと言われていたのだが」
そして支配種としてのプライドもこれに頼るということに非常に不快感を覚えるのだが、背に腹は代えられない。キリシマはストレージからとあるAIを搭載したロボットを取り出した。
「逃げるのが最優先とも言われていてな」
斬ッ!!!!!!!
祥蔵の翼が片方切り落とされる。
剣士さんと呼ばれる個として最強のプレイヤーの思考回路、動作を模したAIを搭載した量産可能な殺戮兵器である。
そんな最終兵器にロロたちの相手をさせ、キリシマは逃げ出した。
「主君、こいつは儂が引き受けよう。斬られた感触からして
「そうか。じゃあ任せる。が、壊し過ぎるなよ?後で械理に調べさせる」
魔力で未だ空中に滞在していた祥蔵から飛び降り、ロロはキリシマを追いかけた。
そして、2体目の剣士さん人形によって、見事に撒かれることとなった。
────
シズクちゃんの思考回路。
緑と黒のシマシマ→スイカみたい→シマシマ?→蜂っぽかった気がする。
皇蟲人の性能は樹皇人のそれを攻撃特化に置き換えた感じです。
例 攻撃を受ける度に耐性強化→攻撃を受ける、もしくは攻撃を行う度に特効強化。
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