配信者メルメル 5

 いつもの配信時間の少し前~


「二人ともおっはよ~」


「んめぇるめるちゃぁぁぁん!!!!」


「ひょわっ!?」


 朝、いつも通り配信をしようと三人の待ち合わせ場所に向かった私。なぜか、ふっ飛んできたマスターちゃんにガシッと抱きしめられて、、、受け止め切れずに数m飛びあがっちゃった。


「あ、あわわわ!だ、大丈夫!?」


「う、うん、大丈夫だよ?」


 慌てて私から飛び退くマスターちゃん。なんだろう?何かが違う。喋り方とか、動きになんだかとても違和感がある。なんというか、、、雰囲気が違う?

 おととい、一緒に配信した時はふわふわというか、守ってあげたくなる雰囲気があったのに、今はなんだろう?なんだか頼りがいのある人が、無理やりキョドキョドしてる感じがする。なんでだろ?


「それよりもさ、マスターちゃん。何かあった?なんだか、いつもと雰囲気が違う気がするの、、、」


 何かあった?という言葉を聞いた瞬間、ピシッと、マスターちゃんが固まった。


「や、ややややややややだなぁ!メルメルは!私はだ、大丈夫だよ?いつも通り!元気元気!!」


 ブンブンと手を振って誤魔化そうとするマスターちゃん。おかしい。昨日一緒に遊んだ時はちゃん付けだったのに。

 、、、でもまあ、マスターちゃんは気にしないで欲しそうだし、それでもいっか。


「そっか。ならよし!じゃあさ、ユーちゃん、マスターちゃん。今日はレベル上げも兼ねてレーリアで配信しようよ!最近はずっと街での配信ばっかりだったし!」


 ピシッっと、マスターちゃんが固まった。今度はユーちゃんも一緒に。


「メルメル。私は街でメルメルと一緒に観光すれば良いと思うの。レベル上げなんかしなくても、メルメルは可愛いよ?」


 目隠しをしているのに、相変わらず強い眼差しを感じるユーちゃん。


「ユーちゃん。可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、レベル上げしないと強くなれないよ?私は早く強くなって、ユーちゃんと同レベル帯の場所で戦闘したり、配信できるようになりたいな」


「め、メルメル!わ、私、も、森以外でもレベル上げできると思うよ!せ、折角だし、他の場所も行かない?」


 マスターちゃんの力説。じっと目を見つめてくる。

 、、、なんだろう?可愛らしさの他に、昨日と比べて、圧倒的に強くなった目かの圧力がまじってる気がする。


「草原や街道だと、マスターちゃんの薬草採集が出来ないよ?森だと一石二鳥だと思うんだけど、、、?」


 私の言葉に固まった二人が、さっと、私に背を向けて顔を近づけた。


「おい、どうする?ユースティア。このままだとメルメルが森に行くことになる。さっきのアレの件、ばれる訳には行かないだろ?」


「わかってるよ。今、ひじ建に依頼してある。今日は測定だから駄目だけど、明日以降ならどうとでもなる。全っ力で誤魔化す。とりあえず温泉」


 そのままボソボソと会話してた二人が、同時に私のほうを向いた。

 仲良くなったのは良いけど、絶対何か隠し事があるよね?


「メルメル!温泉に行こう?私、またあそこで泳ぎたいな」


「ユースティア?お、温泉で泳いじゃ駄目だよ?で、でもメルメル、ん、私も温泉も良いんじゃないかなって思うよ?」


 すっっっごい不審。友達を疑うようなことはしたくないけど、ここまでバレバレな誤魔化し方をされると逆に気になってしまう。


「温泉も良いんだけど、二人とも、何でそんなに私に森に行って欲しくないの?」


「なにもないよ?本当。本当に何もないけど、温泉の方が良いなぁ。マスターもそうやって言ってるよ?」


「ほ、ほら、メルメル!早く行かないと混んじゃうかもしれないよ!」


「ん~じゃあ、今日は温泉にする?」


「「うん!!!」」


 声が揃った。隠し事を聞き出すのは、辞めておこっか。嬉しそうな二人を見たら、自然とそんな気分になった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よーし!じゃあ配信かい、、、、、、し?」


「「あっ」」


 また、二人の声が揃った。でも、そんなこと気にならないくらいに、私は目の前の画面に見入っていた。

 


「ユースティア?どういうことだ?」


「け、消し忘れてたぁ!!!!」


 また何かこそこそ喋っている二人を余所目に、私は動画を再生した、、、













「ねぇ、ユーちゃん、マスターちゃん。今日はやっぱり、レーリアで配信しよっか?」


 私の表情はニッコニコ。とても、そう、とても久しぶりに私は怒っている。


「もちろん、謝罪配信だよ?」


 二人とも、顔が真っ青になっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る