そして世界はループする
青が視せる最後の夢
【また幸司くんの夢だ……】
洋子は少しずつ、夢の中のふわふわとした感覚に慣れてきた。
後ろ姿の幸司は、初めて出会った時の子どもの姿をしている。ひとつに括られた長い髪が、ふわふわと光に照らされて青く輝いて見えた。
【幸司くん】
洋子の声に反応したのか、幸司はふわっと髪をなびかせて振り返る。そして、少しずつ近づいてきた。
今日の夢では、幸司は泣いていないみたいだ。洋子はホッとして、近寄ってくる幸司に目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
【……あれ? 幸司くん?】
子どもの幸司の後ろにもう1人。今度は現在の年齢の幸司が、和服を着て立っていた。綺麗な幸司によく似合っている、幸司の光に輝く青色の髪と同じくらい鮮やかな色をした着物だった。
【眠っているの?】
和服を着た幸司は静かに立ち尽くしたまま、瞳を閉じている。
【幸司くん……?】
綺麗な顔をして眠っている。安らかな寝顔で眠っている。
……それなのに、涙を流していたあの夢の幸司よりもずっと遠くに感じてしまい、洋子は悲しくなった。
【ねえ……】
子どもの方の幸司が、洋子の頬に両手を当てる。小さな手で包まれて、洋子は驚いた。子どもの方の幸司を見つめると、その瞳がまた金色に光っている事に気がつく。
【君の幸せは何……?】
そう言った幸司の声は、何重にも聞こえて洋子の耳にずっと残っていた……。
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