4話 王子と騎士たち

 黒の騎士の一声で気絶したカトリーヌ。

 

 そこに駆け寄った白の騎士――フェリクス王子は、そのまま彼女の体に触れようとした。

 

「あ、フェリクス王子! ちょっとそれストップ!」


 青の騎士が横から王子を止めた。

 

「サージウス、後にしてくれ。僕の花嫁を早く助けなければ!」

 

「いやその、運ぶのはですね、俺がしますんで……」


「なぜだ!? 彼女は僕の花嫁だぞ!」


「そもそもですね、王子が出迎えにあがるのだって俺は反対で……」

 

 サージウスと呼ばれた青の騎士と王子が言い争っていると、二人の頭上をぬっと黒い影が覆った。

 

「カ、カトリーヌ王女殿ぉ!? どうなされたぁ?」

 

 ごう、という突風のような声を上げて、黒の騎士が叫ぶ。


「「しぃー!」」


 王子と青の騎士がそろって口に指をあてて返した。

 

「元凶の自覚もってくださいよ将軍。ったく、だからアマデウス将軍を先頭にするの反対だったんですよ」

 

 青の騎士が不満を漏らす。

 気にしない様子で、黒の騎士が騎馬から降りて大股に近づいてきていた。


 そのとき、青の騎士――サージウスの兜が落ちた。

 

 そして、兜が落ちた後の首の上には『無』が乗っていた。

 サージウスの正体は首なし騎士デュラハンであった。

 

「わ、我は優しく言ったぞ! 六歳になる娘に接するときのように言ったのだぞ!」

 

 アマデウス将軍と呼ばれた黒の騎士が、声を上げる。

 すかさず、王子と首なし騎士デュラハンが「しぃー!」と繰り返す。

 

「分かりましたから黙ってくださいね。とりあえず城にお運びしましょう。俺が乗せます。あ、将軍は王女様のトランクを運んでくださいね」

 

「むう、なぜだ? 我の馬が一番力がある。我が運ぼうぞ」

 

「いや、何を言っているんだ。僕が運ぶべきだろう」

 

 不満げな王子と将軍に向かい、首なし騎士サージウスはチッチッチ、と無い舌で音を出した。

 

「分かってないなあ。また将軍のお姿に失神でもされたら、王女様の心臓が持ちませんよ」

 

「う、うむ。我はそんなに怖いつもりはないが……あ、でも一昨日からパパと一緒にお風呂入らないと言われてなぁ。のう、聞いておるかぁ?」

 

「どうでもいいですよ! ほら、早く戻りましょう。あ、王子は俺の頭拾っといてくださいね!」

 

 そう言うが早く、サージウスはカトリーヌを小脇に抱えて青の馬に飛び乗った。

 

「おい! 彼女に触れるな!」

 

 慌てて乗馬した王子がサージウスに馬を寄せるが、騎士はそれを無視して自分の馬の脇腹を軽く蹴った。


 青い馬が走り出す。

 

「王子は乙女心ってやつを知ったほうが良いですよ。あとで説明しますから、大人しく後から来てくださいね」

 

 その言葉をあとに、青の馬は速度を上げていく。

 

「ま、待て!」

 

「抜け駆けであるぞ! サージウス!」

 

 取り残されたフェリクス王子とほか三名の騎兵たちは、急いで馬を駆って青の馬の後を追ったのだった。



☆ ☆ ☆


あとがきです。4話までお読みいただきありがとうございます!

おかしな騎士たちが出てきました。

書いていてとっても楽しかった場面です(*^^*)

次は魔王城に運び込まれたカトリーヌのお話です。

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