227話 通路の先には……温泉
「あ、大丈夫大丈夫。 今撃ったから安全だよ」
『あるー』
ちょっと高度を下げて安全を伝えるも、手をふりふりしてくるだけの子たち。
どうせ言葉は通じないからと、気が付けばお互いに手を振ったりして意思疎通っぽいのをしてる。
こういうのは全国全世界異世界共通なんだね。
特に子供だからハードルは低そうだし。
で、いくら人への興味が薄い僕でも、何時間か一緒に居ればさすがにちょっとは区別が付いてくる。
学生時代のクラスの同級生たちだって、毎年、年が明けるころにはみんなの顔と名前が一致するくらいには記憶力があるんだから。
まぁそれも毎年4月でリセットされて、また半年以上みんなの顔と名前が分からない状態だ続いてたんだけども。
それで……例えばまずは、多分最年長の赤毛の子。
小学校高学年から中学生って感じで、僕みたいにクセのある髪の毛が目立つ。
明るいし手脚長いし……この子、半袖短パンなんだよねぇ……なによりも元気で必ず誰かと話してる、僕と正反対な子。
多分この子たちのリーダーなんだろうな。
歳も多分いちばん上だし……この状態の僕を除いて。
いや、この状態の僕とおんなじくらいかな?
ちょっと胸が育ってるけどまだまだ小学生らしいって感じは。
いつも声おっきいし、面倒見も良さそうだからか他の子たちもこの子に良く何か聞きに行ってるし……僕には、何言ってるか分かんないけど。
多分次くらいの年齢なのが白髪、色素の薄い姉妹っぽいののお姉さんの方。
よく言えば元気、悪く言えばがさつ……僕は気にならないけどね……な赤毛の子とは別の意味でみんなの支えになってる雰囲気だ。
ロングのワンピース……今の僕の服よりえぐい切れ込みがない感じのやつ……で歩幅は狭いし、いちいちの動きがなんとなくお嬢様って感じ。
髪の毛もぱっつんに揃えられてるし、ぼさぼさに爆発してる赤毛の子のとは正反対にぴしっと整えられてるし。
白髪の妹の方もほとんどおんなじ感じ。
ただミニサイズってだけで姉妹だなーって感じる。
妹さんの方は引っ込み思案みたいで、他の子に自分から話しかけたりはしないで、いつもお姉さんのあとを着いて歩いてお姉さんの背中に隠れてる。
この子はやけにノーネームさんが気になるらしく、気が付くと僕の肩の辺りに視線が来てる。
でも僕が気が付くとさっと目を逸らされる。
地味に傷つく。
女の子と目があったらさっと逸らされるのって、多分男が1番傷つくことなんじゃないかな。
男は女の子たちが思うよりもずっとデリケートな存在なんだぞ。
『――――――?』
『――、――……』
残りは東洋系?の男の子と女の子……なんだけど。
多分この子たち……他の子たちとは言葉、通じてない。
なんでって?
なんとなく。
他の子たちと話してる時間はそんなに変わらないけど、やたらと身振りとかが大きいし、首を横に振って「ちがうちがう」って……この子たちの身振りとかがおんなじ意味ならだけどね……やってるし。
あと、通じなかったっぽいときには諦めて自分たちで物を取りに行ったりしてるし。
なんでこの子たちが一緒なのかは分かんないけども、とりあえずでこの子たちの親とかとは完全にはぐれてるのは間違いない。
けども邪険にされたりしてないから、多分そんなに人種間の仲は悪くない……それか、子供だから、あるいはこの状況だからそんな場合じゃないだけかもね。
「……この子たちと居る間だけでも、面倒見なきゃね」
僕は大人なんだ。
それに、今はなんかやたらと力も使えるし、体も微妙に育ってる。
どうにかしてこの子たちを安全な場所に連れて行ってあげたい。
そう、思うんだ。
◇
『あるー』
『のーむー』
【?】
【問】
「くぁぁ……よく寝たぁ……」
あれからこの子たちが何十往復してドロップ品をここまで回収……元気だねぇ……してるのを尻目に、魔法使ったからかものすごく眠くなってた僕はお昼寝してた。
「寝起きの1杯……は、ないかぁ……」
【草】
【おはようの前にお酒】
【もはや違和感すらないな!】
【あのね、今のハルちゃんは中学生?なの……今の姿で飲酒と化してると、より犯罪臭するの……】
【ああ……】
【幼女が飲酒って、もう「そういうもんだ」って思えてたけど……こうしてちょっと育ってるとかえってリアルでなぁ】
【声もちょっとだけ大人びてるし】
【お胸触ったときの声とか幼女のときよりものすごくえっっっっっっ】
【草】
【ネタなのか本当にないないされてるのか分かりにくくて草】
眠い目をこすって起き上がる僕の手を掴んで、どこかへ連れて行こうとしてる赤毛の子。
【ハルちゃんが寝ちゃってから2時間くらいか】
【ずいぶん長いお昼寝ね】
【まぁ1ヶ月の巣穴生活でもそんなもんだったし】
【巣穴言うなよ草】
【ハルちゃんの生態的には何も間違ってはいないな!】
他の子たちも一緒に着いてきてる様子。
なんかみんなはしゃいでる?
「何があるんだろ……お酒?」
【ハルちゃんお酒から離れよ?】
【だからアル中幼女って呼ばれちゃうんだよ?】
【草】
そんなわけはないけどね。
あったらいいなってだけ。
【稀だけど吞まない日もあったりしてたし、1日中吞んでるわけでもないからまだアル中じゃないはずだが……】
【この歳でアル中とかやばすぎるからな?】
【草】
【ま、まあ、女神だからセーフのはず……】
【年齢が可変の体なんだ、お酒くらいどうってことないはず……】
通路をうねうねと……きゃっきゃ言う声が反響する中、右へ左へ、下へ上へとひたすらに長い通路を歩いて行く。
「……これ、この子たちが……? いや、いくらなんでもこの子たちだけじゃ……いや、ダンジョンでレベルが上がってるならできる……?」
【確かに不思議だな】
【順当に考えたら、この子たちなだけってはずないもんな】
【じゃあ家族って言うか集団が作った通路ってこと?】
【地球でもこういうのあるしな、中央アジアとか】
【古い遺跡のある町だと良くあるぞ? 煉瓦とかじゃなく、こうして掘り進んだだけの通路とか】
【いや、でも、なんか手が入ってる様子なくね……?】
【あー、確かに】
【もしかして:ダンジョン内の自動生成】
【そんなのある?】
【だってここ異世界ですし、そもそもあんな吹き抜けのフロアからしてイレギュラーですし】
【なるほど】
【ハルちゃんが進むごとに謎が深まるダンジョンだな……】
そういえば、羽は収納できるみたい。
この狭い通路を通り始めて「擦れて痛かったらやだなぁ」って思ったら引っ込んでた。
それ見たこの子たちがびっくりしてたのはちょっとおもしろかった。
またやってあげよっかな。
あ、でも、輪っかは消えないみたい。
いくら念じても消えるどころか、なんか光ってくるくる回っててまたまたみんなびびってた。
あれもちょっとおもしろかったな。
「……この匂い」
途中でちょっと外に出て、それからもっかい別の通路に入った僕の鼻を、つんと通り抜ける異臭。
「お酒……じゃない、温泉……!」
【草】
【駄目だこの幼女……早く何とかしないと……】
【今は幼女じゃないから……】
【でも温泉 ……つまり?】
【!!!!】
【ちょっと録画ソフト起動してくる】
【あ、俺も特に理由はないけど適当なアプリ入れよっと】
【お前ら……】
【大丈夫? ノーネームちゃんガードがあるよ?】
【あっ】
【ああ……】
【つらい】
【草】
【ばかばっか】
【ここからは音声でお楽しみください】
【それはそれでなんかやらしい気がする】
【確かに】
◆◆◆
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