第12話 聖なる奇跡 012f

 フランツのメンバーも増え、、時機的に今後の方向性を話し合う

のは正解だったようで、クランを現代で例えれば人材派遣会社、

ギルドを職業紹介所とすればお判り頂けるだろうか。

彼の周りは知識が高い、武力や暴力が向かない、集団行動が苦手

3kの職業を忌避、そんな貴族の息女が混じる

パーテーが組み辛ければ収入に成らず、不和が起こり始めていた


 ワイパーン乗りはドラゴニア圏では花形エリートだ、

そこへ新たに領主や不正の見守り、正に上から目線の監視役、

長期的に収入が安定し、個で行える業務、プライドが高い

自分達の立ち位置におあつらえ向きに思える様で

「季節や天候に苦労も有るがチクれば金に成る、やりがいもでよう」

「マイクお前、我らを見透かしておるな、だが救われた礼を言う」


ーーーセルシャ帝城前広場

 「マイク様セルシャでの公演も無事に終わりました」

「いよいよ明日は君達の目的地ザレン郡州都に送る事になる、

カサロンニードの街、人口は1万五千程、ここから200㎞、いいね」

「はい、聖なる木迄は更に南へ山を登り、水源の有る沼地へ50程」

「エルフ、小妖精建ちが行けばいいのかい?」「いえ…」言い淀む

「失礼します、団長が話せないのは、我々との約束の為です」

「口止めを守ったと」「はい」


 「全員が登る必要が有るなら、奇形や異常の治療だね」

「お見通しでしたか、話の流れで質問よろしいですか?」

「それの答えは、最高に上手くいって、7~8割が結果だろうね」

「では、団長は治療し、彼らはなぜ治療して頂けないのでしょ?」

「人には個々に合った最善の生き方が在る気がしててね、

団長は病だけど、ここの奇形、障害持ちの方は試練に見える

聖なる木の実で全員全治が約束され、それ迄の全てが試練となり

自分が望み、努力する必要がある、手出し無用のオーラが見えます」

「ははは…本当に?」「はい、本当に」


 「私には分かりませんでした、只、導きの儘に行動してきました

神託で皆を集めました、何故か能力を持っていて、それを開花させ、

身を守る術を教えた、生きる為に見世物にもした

 団長さんは協力者で後援者、十数人に及ぶ彼らの世話や団の生活を

守るのに四苦八苦で病から失明、困窮する余り甘言に乗りあの始末

私ら貴重種を攫う為に呼び寄せられてしまいました

 彼らがどんな完治の仕方で、自立するのか想像できず「聖なる木」

を目指す事だけに只管にやって、この先が…」


 「フフ、私も愚痴りましょうか、最近、僕は生き急いでいます

あれもこれもやらないとの逼迫感が強く、済ませて置かねばと

思えるのですよ、目処を付けておきたい…と、多分3年程でしょう

僕に係る者は、僕に飲み込まれます貴方方も然り

 団長建ちサーカスは見世物の無い興行にを行い、裏の仕事をする

貴方方は神を纏った、僕の暗部と機動部隊でしょう

一度死んだ身でしょ、まず3年付き合いなさいフフフ」

「道はもう出来ている…のか」


ーーー聖なる木へ

 カサロンニードの街、州庁舎前広場

大きなテントと小さなカラフルなテント群、陽気なメロデーが奏られ

太鼓のリズムに身体が躍る、子供が走り回り賑わう

「トーマス大サーカス、ご当地初お目見えから…」口上と呼び込み

今日で一週間、この町の公演も最終日、流石に客足は落ちている

「この公演を最後に皆さまとお別れで、今度お会いできるのは…」

「ドド~ン」開演の合図だ


 公演を終了後、人の波が消えて

大テントや公演関連は解体し荷造りをする

小テントで一晩過ごせば、撤収時間も掛からず早朝の出立ちなる

日の出と共に食事、町がまだ明けやらぬ時間に荷駄が動き出す


 やがて町並みも消え、麦畑もまばらになり道が狭くなる

人通りも絶え、木々で視界が遮られる開けた空き地に集結

二頭立ての馬車は限界、幌馬車や背の高い馬車は安定が悪くなる

公演資材に不要な物は、マタンロンのクランに魔法転送で送る


 更に山の麓について馬や馬車、余分の荷物は魔法転送し

人力に成る、マイクもチャドを背負う、荷物はマジックボックスに

収納するが、一人を二人で背負い登山は次に休憩時が限界だろう

念話で温泉同行メンバーを呼んで有る


 深い森が無くなり、灌木に変わり道が険しく成り、勾配が30度程

歩みが亀、回り込んだ先は開け、川が山へ消えて行く「見えた!」

誰か叫ぶ、僕には見えない、「マイク様、緑に見えるのがそうだよ」

運ぶ方は疲労と汗、景色等見る余裕が無く「見えた」で緊張が切れた

キャンプの準備中に到着した


 「マイク、あれが聖なる木かのう」

「この距離であれだし、おっきいよ」

「坊ちゃま見えます?、私には見えません」

「僕もだよ」「仲間」コニーは嬉しそう

疲労で話も弾まず、皆眠りに着いた

 夜中、声を殺しすすり泣く声、訴える言葉が微かに聞こえる

言葉掛けもならず、気付けば朝方、知らぬ間に眠っていた


 「ズリズリ」「ガサーガサー」地面を這いずり、転がり、呻き…

僕のテントに近づく音がする、彼らだ…

支度をして彼らの進む正面に座る、仲間は撤収し僕の後ろに控える

誰も声を発しない、彼らは動けぬ者をずらし、引き、僅かずつ進む


 サーカスの者は最初に見た光景に驚き、相対して待ち受ける

僕らにも驚くが、団の全員にも伝え邪魔にならぬ横に座る

 疲れて動けなくなって、初めてエルフが手助けをする

地面にへばり付く様なもも多い中、チャドが口火を切った

「夢を見たんだ、僕ら皆が手も足も揃ってるんだ、くっ付いた身体

曲がった手、動かない脚が動くんだよ

自分でトイレに行けたんだ、皆、嬉しくて泣いたんだ」


 「そしたら聞えたんだ、マイク様に自力で頼め「聖なる木迄」

運んで欲しいと、対価は自分で考えよと

木の実は人数分実らせた、使うが良いと

僕ね対価って意味わからないけど、爺ちゃんが「一度死んだ身

マイク様の傍でお役に立ちたい」と何時も言うんだ、だから

僕もそうしたい、手が生えたら、僕、僕う~」泣き出した


 聴き取りにくい声、喋れず念話、全員が頼み終わったのは昼頃

先に転移し安全確保して転送で引き寄せた、大きな木だ

「傍に来たらおっきいね、あそこに葡萄の実があるよ」

皆に持たせる二つ多い、双生児が二組で口の数

「一緒に「パクッ」」光が溢れ観えなくなり、収まり17人が現れた

「あるよ」「動けるよ」団員も加わり、抱き合い、笑い歓喜する

落ち着くと「聖なる木」へ感謝を伝え、クランへ飛んだ

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