第8話 クランの目指すもの 012b

 イムリー城の玄関ホールは、城に努める者達で溢れていた。

例え半日程と言え王族の一員が失踪し、警戒が厳重な奥から忽然と消えた

無事にマイクが帰還したのを喜ぶ為である、帰って来たから病気と判断され

喜ばれているのだが、ここは魔法の有る世界で、陰謀や呪詛に悪魔の可能性も

存在していて、顔を見る迄は安心できない世界で有るという現実

王を始め一族郎党の皆が集まるのは大袈裟な事では無い


 中央に立つ父、感動の対面、走って行って抱き着いて泣きじゃくりたい

12歳である今、臣下、衆目の中、立場が有り残念なららそれは許されない

臣下の礼を取り「父上只今戻りました、ご心配をおかけしました」

「よくぞ戻った、父として素直に嬉しい、不謹慎な物言いであるが

何故か再び会えぬと思え覚悟をしておった、消えた後の話を聞かせよ

この場の者達も心配し、共に探してくれたから知りたいであろう」


 目が開いてラウミエの山並みを見ていた事から始めた

ラウミエ…ドラミ…ドラゴラン…アイリ…転移門…と話を進めて行くと

周囲の啜り泣きや嗚咽が収まり、息を吞み興味津々の表情に変わって

小型化したドラミと擬人化したアイリを紹介した時、その姿に今更気づき

マジマジト見つめた後「パチパチパチ…」と拍手が始まり

「マイク様をありがとう」と感謝の言葉が送られた


 拍手が収まりかけたタイミングで僕が発言する

「皆にも心配かけたし、探してくれた事に感謝しかない」

「殆ど城に居ない僕の為に気苦労をさせてすまない、お詫び代わりに

希望や頼み事、僕に出来る事はさせてもらうから、僕の関係者に伝えて」

「カニ食べたい」「ウワ~、アッハハハ」誰かの言葉に皆の心が弾ける

「ご苦労だった、これにて解散!」父の宣言で三々五々に持ち場に散った


 コニーが飛びついて来て撫で回す「坊ちゃま、坊ちゃま」

「のうマイク、お主の番か?」ドラミが不思議そうに見ている

「ふーん、人の番ってこうするのかー」アイリも抱き着く

「マイク様、羨ましいです」ニコニコ顔のパラ

「幾ら強くとも番は寄ってこぬ…理不尽」マイルが呟き、笑いを誘う「アハハ」

 この日は親兄弟、仲間と絆を深める事と成った、

マイクの存在が消失する事を実感し、その存在と意義を改めて思い知り

共に歩む事への期待と安心感の大きさに満足して、安らかな眠りに着いた


 後日、改めて目撃者のコニーの見た証言と、話を聞いた魔法師長により

「魔力暴走」との推測が成され、失踪前の症状と、医師の目立て、その後

魔力で飛ばされて正常に戻っており「魔力暴走」と診断され公表された。

 通常は部屋でつむじ風が起これば、魔力が消費されて症状は治まる

魔法特性の強い子に起るもので、将来は有能な魔法術師になる証で喜ばれる

その事から「もしや」と試したマイクは転移を得ていた。


 パラ兄弟の仲間、フランツの取り巻き、マイルの知り合い、誕生会での人材

結構な所帯に成って来たが、クランの信用も上がり稼ぎもそこそこあり、

セルシャ王からもザラタン討伐の褒美で屋敷を貰い

 セルシャ帝国 帝都エリアン

イムリー大公国 公都レフランスター

イムリー大公国 副都マタンロン(飛地)

の三か所に拠点を構えるに至った


 【主よ30程の群れを見つけたが如何する?】ボスからの念話が届く

【まだ、100位は受け入れられる、セルシャに新設したし、マタンロンは

大規模造成中、説得頼むよ】【判った、感謝する】念話での遠距離会話だ

 ボスや仲間のワイパーンはマイク達と接して以来、人への嫌悪感は低いい

何かしらの仕事をして報酬に餌や人の食べ物を貰う、人が駄賃を貰って働く

それと同様で、見回りや運送をこなす、獣舎では最近は殆ど拘束はしない

 ここに居れば人に殺される事は無く、飛ぶ時は首にドラゴニア家の紋章入り

タスキを首に架ける、それでドラゴニアの地では襲われない

更にはドラゴンもグルフォンも明確に敵ではなくなった

長年のしこりで不和は有るが、この地では襲われない】

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