第69話 魔力抽出と秘薬の作り方
「あの、タフタさん、多分俺の聞き間違えだと思うんだけど、このでっかい釜の中に入れって言うのは……」
「あら、聞き間違えなんかじゃなくってよ。ちょっとシュータくんに調合釜の中に入ってもらいたいの」
「なんで!? 煮るの!?」
や、ヤバイ所に来てしまった……昔ばなしの山姥みたいに俺を食うつもりか? なんて魔女だ。でもクッキーは美味しかった。
「ごめんなさい、ちょっと説明が足りてなかったわねぇ。別にシュータくんをお鍋にして食べちゃおうかしら~なんて思ってないわ」
「そ、それじゃあなんのために……?」
「シュータくんの魔力を少し頂きたいの」
「……俺の魔力?」
タフタさんの説明によると、この調合釜は魔力や魔素を抽出できる機能があるらしい。
そんでもって、俺から抽出した魔力を材料に、とある薬を作りたい、とのことだった。
「抽出で減った魔力は、シュータくんくらいの子なら1日休めば全回復すると思うわ。そもそもそんな限界まで抽出しないから、その……お願いできないかしら」
「……熱かったり痛かったりしない?」
「全然しないわ。お風呂に入ってるようなものよ」
「うーん……じゃあ、良いよ」
「助かるわあ! それじゃあさっそく調合釜に……あ、服脱ぐの手伝おうかしら?」
「だ、大丈夫だから! あっち向いてて!」
「あらあら」
__ __
「シュータくん、お湯加減いかがかしら~?」
「いや、湯加減っていうか……なんかドロドロしてるんだけど」
調合釜の中には緑色のスライムみたいな液体が入っていて、そこに浸かってるんだけど……生温かくてドロドロしてる。少なくともお風呂と一緒では全然ない。
「わたしが作った魔力抽出液よ。うふふ、いい感じに魔力が滲み出してきているわあ」
「ねえ、タフタさんは俺の魔力を使ってどんな薬を作るつもりなの?」
「それはまだ秘密、出来てからのお楽しみよ。でもそうねえ、シュータくんにはまだ必要ないものかしらねぇ」
「ふーん」
魔力を集めて作る薬かあ……なんだろう。爆弾とか? 俺の魔力なら雷属性が強そうだから、電池みたいなやつが作れたりして。
「……あれ、なんだか眠くなってきたかも」
……。
…………。
「……くん、……ータくん」
「んっ……」
「シュータくん」
「あ、タフタさん……」
どうやら少し眠ってしまったようだ。
「お疲れ様。抽出終わったわよ」
「ああ、うん……」
なんだか体がダルくて、眠気が取れない感じだ。
「はいタオル。ごめんなさいね、ちょっと魔力の抽出量が多かったみたい。体が重いでしょう」
「うーん……」
なんとか調合釜から出て、体を拭く。うわ、なんかベトベトだ。
「でもおかげで良質な魔力が手に入ったわ。お風呂を沸かしてあるから、体を洗ってきなさいな」
「……本当にただのお風呂?」
「うふふ、今度は正真正銘のちゃんとしたお風呂よ。それとも一緒に入る?」
「ひ、1人で大丈夫……」
大変だったけど、これでタフタさんの薬づくりの役に立てたなら良かったかな。お風呂入って、今日はもうゆっくり休んで、明日から薬草採取をがんばろう。
「あ、タフタさーん、俺の着替えの服って」
ピシャーン!! バリバリバリ!!!!
「うわっなんだ!? 落雷!?」
いきなり窓の外が光ったと思ったら、ものすごい音がした。これは雷鳴渓谷にいた頃を思い出すような雷が落ちる音。
「あらあら、かなり近いんじゃないかしら」
「この辺りって結構落雷があったりするの?」
「滅多にないわよ。珍しいわねぇ……山火事が起こってないか心配だわ」
雷で森が火事になることもあるから心配だ。昔、ニュースでコアラが住んでる森が落雷で火事になってた。コアラ、逃げるのめっちゃ遅かった……。
「わたし、様子を見てくるわねぇ。シュータくんはお風呂でゆっくりしてて大丈夫よ」
「はーい」
「それじゃあちょっと……あら?」
「どうしたの?」
「……わたしの魔法結界が無理やり突破されたみたい」
「えっ」
「……この魔力オーラはまさか」
ドガンッ!!
「シュータ無事か!? お主、いきなり魔力が枯渇して……って、やっぱ貴様かクソ魔女ババア!!」
「バッ!? あ、あなたにだけは言われたくないわよこのクソ吸血鬼ババア!!」
「えっ!? キャンディ!?」
次回、幼女ヴァンパイア(BBA) VS 森の美魔女(BBA)の熾烈な争いが幕を開ける……ッ!!
「デュエルスタンバイ!!」
「「ババアって言うな!!」」
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