第45話 インチキくじ引きと花火大会
「うう、昨日はひどい目にあった……」
昨日の大食い大会の後、普通にお腹を壊して半日寝たきりだった。恐るべしクレイジーパンプキン……
今日は収穫祭の最終日。体調も回復したし、目一杯楽しもう。
「とは言っても、屋台は初日に結構見て回ったし、なにかあるかな」
「おーいそこの少年! くじ引かねえかーくじ!」
「んー?」
声をかけられた方に振り返ると、くじ引きの屋台があった。
「くじ引き1回100エルぽっきりだぜ! 大当たりはなんと”瞬足ラビットの革靴”だ!」
「えっ瞬足!?」
小学生に大人気の、あの瞬足!?
「装備すればスピードが1ランク上昇する、激レアアイテムだぜ!」
「ほしい! 俺もコーナーで差をつけたい! くじ引きます!」
「は? コーナー? まあなんでもいいや、まいどあり!」
よーし、絶対当ててやるぞ~!
「このヒモから好きなのを選んで引っ張ってくれ。先に繋がれてる商品が吊り上がってくるぞ」
「おー楽しそう! じゃあ……これに決めた!」
俺はヒモを1本選んで引き上げた。
「ぐっ! 結構重い! これは当たりなんじゃないか!?」
商品を吊り上げた!
「シュータ……オレヲクエ……」
「残念! クレイジーパンプキンだな」
「…………」
マジかよ。しばらく顔を合わせたくなかったぞ。てかこんなの商品にすんなよ……
「お、おっちゃん、もう1回だ!」
「まいどあり~!」
「よし、じゃあ今度は……これ!」
俺はヒモを1本選んで引き上げた。
「おっ今度はめっちゃ軽い! もしかして瞬足って羽のような軽さのシューズなんじゃ!?」
商品を吊り上げた!
「残念~。手持ち花火1本だ」
紐の先にストローみたいな花火が1本ぶら下がっていた。花火あるんだ、この世界。
__ __
「も、もう1回……」
「まいど~」
あれからすでに数十回、くじを引いている。当たったのはクレイジーパンプキン5個、手持ち花火数十本、花火セット2個、火をつけると煙が出る玉3個……
このお金で屋台の食いもん制覇できるんじゃないか?
「ねえおっちゃん、これ本当に当たり入ってるの?」
「当たり前だろ~。当たりだけに。なんつって! ガハハ!」
……は?
「ほら、これが証拠だ」
そう言うとおっちゃんは台の下からヒモがつながった靴を持ち上げて見せた。走るウサギのマークが入っている、水色のカッコいい靴だ。
「うおー瞬足カッケー! よーし、次こそ当てるぞー!」
「へっへっへ。ガキは騙されやすくていいな……楽な商売だぜ」
「ん、なんか言った?」
「な、なんでもないぜ! さあ好きなヒモを選びな!」
「ん~」
その時、首に付けている幸運のチョーカーが少し暖かくなった気がした。
「……ん?」
くじ用のヒモの中に1つだけ色が違うヒモがある。あれ、さっきまでこんな色のヒモあったっけ?
「じゃあこれ!」
「はいよ……って、それは! おい、ちょっと待っ」
「えいっ」
商品を吊り上げた!
「……あ!」
吊り上げたヒモの先には、さっき見せてもらった水色のカッコいい靴がぶら下がっていた!
「やったー瞬足ゲットだー!!」
「な、そんな……隠しておいたはずなのに」
「おっちゃん?」
「え!? い、いやなんでもねえぜ? 大当たりだな少年!!」
俺はおっちゃんから靴を受け取る。
「やったぜ瞬足!!」
「ちっくしょ~商売あがったりだぜ……」
__ __
(シュータはスピードがC+になった)
「おーちゃんと効果があった!」
手に入れた瞬足ラビットの革靴を履いてみると、スピードがD+からC+に上がった。
見た目、ちょっと俺の足よりサイズがデカいかな~って思ったけど、履いたらぴったりになった。
「足が軽い! 早い! 疲れない!」
すーくんの鑑定によると、スピードが上がる以外にも、ダッシュ時の疲労軽減やジャンプ力アップなどの効果もあるらしい。
「良いもん手に入れた! ……それにしても、このかぼちゃと花火はどうしようかな」
靴を当てるまでにもらったクレイジーパンプキンや花火セットの使い道が全く思いつかない……
シルクと花火でもやろうかと思ったけど、教会で豊穣の神様とやらにお祈りするらしい。
「あ、そうだ!」
……。
…………。
「というわけでキャンディ、花火持ってきたから一緒にやろうぜ!」
「ほう、手持ち花火か。久々じゃのう。拙者も幼い時は……」
「いや今も幼いけど……見た目は」
キャンディ達と花火しようと思って、ひとっ走りして死霊の館までやってきた。片道30分くらい。
前来たときは歩いて3時間くらいだった気がする。さすが瞬足だ。
「また来たのか庶民! ってオイオイ、花火じゃねえか!」
「良いもん持ってんじゃねえか庶民!」
「せっかくだから俺はこのロケット花火でいくぜェ!」
キャンディの眷属キッズたちも興味津々で集まってくる。口は悪いけどワクワクが隠しきれないようだ。
「線香花火、どっちが長くできるか勝負しよ。負けたら血液ね」
「やだよ」
「お、火の玉花火か、めずらしいの」
「え? そんなん入ってなかったと思うけど……って、キャンディ、そいつ魔物じゃない!?」
「む、本当じゃ。花火の光に集まってきおったわい」
「逃げろ~!」
「あははは!」
死霊の館前の墓地で、魔物から逃げながらみんなで花火を楽しんだ。
「あっそうだ、これ食べる? クレイジーパンプキンっていうとっても美味しいカボチャなんだけど」
「いるかそんなゲテモン。あ、そうじゃ」
キャンディが、コウモリになった元グール・ヴァンパイア達を強制的に呼び出して食わせてた。
最初、がっついて食べ始めたと思ったらしばらくして気絶した。ドンマイ。
__ __
うう、まさかワタシのスキルが負けそうになるなんて……クレイジーパンプキン、なんてヤツなの……
それにデビルズフード? なにそれ、ワタシ知らないの。非公式なの。
ま、まあでも、修汰くんはなんとか乗り切ったの。さすがなの。
でもあのロリババア吸血鬼はよくないの! キャラ被ってるの! ワタシというものがありながら、なの!
と、とりあえず、第2章、完! 修汰くんの転生ライフはまだまだこれからだ! って感じなの。
次章……街道にドラゴンが現れて、みんな困ってるみたいなの。
修汰くん、問題を解決してあげると良いことがあるかも! なの!
……。
…………。
「おーいシュータ、なにボーっとしとるんじゃ」
「……はっ! いや、大丈夫。ちょっとロリババアの幽霊が話しかけてきてさ」
「なに! それは早く成仏させたほうが良いぞ。拙者とキャラが被っとるからの」
イーツのことはキャンディには言わない方がよさそうだ、うん。
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