第44話 悶絶! 地獄の大食い大会




「さあ始まりました! 収穫祭恒例、クレイジーパンプキン大食い大会の時間です! 実況はわたくし、シスター・リネンでお送りしま~す!」



 うおおおおおおおお!



 収穫祭2日目。ついに待ちに待った大食い大会が始まった。てかまたリネンさん実況やってるし。



「エントリーナンバー1! 大ヒット朗読劇、「蟲毒食堂」の作者こと、ラージ・ホワイティ!」



「……こういうので良いんだよ」



「ゲテモノ食レポのホワイティ先生だ!」



「先生~! サインください!」



「エントリナンバー2! 前回の優勝者! 2連覇なるか!? ミスター・イエローホール!」



「ミーの胃袋は底なし沼デース」



「うおおおお!! ミスター!!」



「優勝候補ナンバーワン! さあ張った張った!」



「前回は神の一手で幸運をつかみ取ったが、今年もいけるか……?」



「そしてラストの挑戦者は~? エントリナンバー3! 漆黒の悪食! シュータ・ブラックボーン!」



「対戦よろしくお願いします」



「うおおおおお!! 悪食だ!!」



「あの貴族のガキを食っちまったっていう、スラムの怪物か!?」



「俺はシュータの優勝に1万エルだ!」



「ガキは食ってないよ!」



 てか参加者3人だけなの!? 少なっ! また賭けてる人いるし!



「いや~今年は精鋭ぞろいですね~。毎年毎年よくあんなものを食べようと思いますね」



「えっ? ただカボチャ料理食べるだけでしょ?」



「……少年、まさかクレパンは初めてか?」



「うん」



 クレパンて。



「オイオイオイ、死ぬぜあのガキ」



「こりゃあ先生とミスターの一騎打ちだな」



 何を食わされるんだこれから……?



「それでは今回食べていただくクレイジーパンプキンの登場です!」



 ガラガラ、と台車に載せられた大量のカボチャが運ばれてくる。



「みなさんご存知の通り、クレイジーパンプキンには”当たりはずれ”がございます。」



 いやご存知ないんだけど。あー、もしかしてあれか、収穫の時に言ってた、美味しくなる確率がどうとかっていう……。



「当たりを引ければとっても甘くて美味しいカボチャ。ですがハズレだった場合は……どんな味になるかは食べてからのお楽しみ!」



 ハズレのパンプキンは、1口食べた段階で味が確定するらしい。



「なんだそれ」



「で、例年通りこちらにあるのはすでに当たりを選別し終わった後の残りでーす」



「ノーチャンスじゃん!」



 店員が良いパック抜いちゃったバラ売りのポケ〇ンカードみたいなことするなよ!



「てか当たりかハズレかはどこで見分けるんだろ」



「……顔を見りゃ分かる」



「……顔?」



「当たりは満面のスマイルデース」



 よく見ると会場に運ばれてきたクレイジーパンプキンは怒ってたり、泣き顔だったりで、街中の飾りで見たような笑顔のものが1つもない。



「それでは各自、お好きなものを1つ選んでくださ~い!」



「1個だけなの?」



「どうせ1口食べられたか、2口いけるかって勝負になるから」



 マジかよ。それもう大食いとかの話じゃないじゃん。



「じゃあこれでいいや……」



 真顔のカボチャがあったのでなんとなく手に取った。なんか味薄そう。



「パンプキンは茹でてありますので、そのままお召し上がりください!」



「シュータ・ブラックボーン……ユルサナイ……」



「お、お前……」



 初日に俺が収穫したやつじゃん。茹でたのに喋るんだ。食べにくすぎる。



「それでは準備は良いですか~? 大食い大会……スタート!!」



「えっああもう、いただきますっ!」



 がぶっ



「もぐも……ぐっ!?」



 (生命活動に危険が生じたため、味覚補整を強制発動します。)



「……ッ!! もぐ……ふぅ~……」



 切っていた味覚補整スキルが強制発動してしまった。なんか、お前これ食うなって感じのものすごい苦みがきた。

危なかった……今までなんでも食べられる気でいたけど、身体が拒否するものもあるんだな……。あ、いま一瞬、あの幼女神様(5000才超え)の幻覚が……。



「これ、何味……?」



「焼キ過ギタ土……」



「ああーっとシュータ選手のパンプキンは焼き過ぎた土味です! 比較的マシな味!」



 これでマシなのかよ。一応シルクに貰ったチョーカーの効果が出てるのか……?

それにしても、なんか食感がジャリジャリしてて、味覚補整が発動してるはずなのになかなか2口目にいけない。やばい。



「……う”」



 バタリ。



「濡レタケルベロス……」



「おっとホワイティ選手、濡れたケルベロス味で大ダメージ! 1口でノックダウンです!」



「先生ー!!」



「やっぱ今回も1口で気絶か~」



「物好きだよな先生も」



 濡れたケルベロスってなんだよ。



「フフーフ。雑魚どもを一気に蹴散らしてやりマース! ばくばく……ンォ!?」



 ……。



「サイクロプスノ靴下……」



「こ、これは強烈デース……しかしミーはこんなことでは屈しまセーン! ばくば……OH!?」



 バタリ。



「ああーっと、イエローホール選手は2口で意識を失いました! 前回は神の一手で比較的マシな味を引き当てましたが、サイクロプスの靴下は流石に強烈だったようです!」



「もぐ……もぐ……」



 カボチャなのに、なんでこんな砂みたいな舌触りなんだ。食感も味によって変わるのか?

味覚補整のおかげで味は良くなっているはずだけど、食感がひどすぎて食べるのに一苦労だ。

イーツめ……それなりに美味しく食べられるようにしてくれたんじゃないのかよ……。



「シュータ選手すごい! すでに3口以上食べて優勝が確定しています! しかしまだまだ食べる!」



「もぐ……た、食べ物は粗末にしちゃいけない……」



「うおおおお!! シュータいけええええ!!」



「完食! 完食!」



「あと一口……!」



 残り1かけらとなったクレイジーパンプキンを口に運ぼうとしたとき、なんだか声が聞こえた気がした。



 (食ベテクレテ、アリガトウ……)



「……ぱくっ、もぐもぐ……ゴクン。ごちそうさまでした」



 ……。



 …………。



「これはすごい! 前代未聞の完食です! 優勝はシュータ・ブラックボーン選手~!」



「うおおおおおお!!」



「すげえええええ!!」



「対戦ありがとうございました」



 (シュータはHPがCランクになりました)



 (シュータはガードがC+ランクになりました)



 (シュータはスキル・毒耐性+が毒無効になりました)



「なんだこれ」



 なんだこれ。

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