第43話 収穫祭1日目



「うわぁすごい! ほんとにお祭りだ!」



 クレイジーパンプキンの収穫を手伝ってから数日後、遂に秋の収穫祭当日となった。

祭りは3日間開催される。これから本格的に始まる収穫期を無事に迎える為、ほーじょー? の神様とかいうのに感謝するお祭りらしい。



 街中にはクレイジーパンプキンが至る所に飾られていて、まるでハロウィンみたいだ。



「美味そうな屋台がいっぱいある! でも明日は大食い大会だからな……ほどほどにしておこう」



 明日、収穫祭2日目には例のパンプキン大食い大会があるので、体調を万全にしておかないと。



「焼きもろこしうめー!」



 トーモコロシとかいう、どうみてもとうもろこしな野菜を丸々1本焼いてたれを塗ったやつ、めちゃくちゃ美味そうな匂いが漂ってきて反射で買ってしまった。

ほどほどに食べるとか無理だな。子供だもん。



「もぐもぐ……ゴクン。美味しかったー! 次は何を食べようかなー」



「にゃあ」



「あっねこのすけじゃん! なに咥えてんの?」



「なご」



 ねこのすけがなんかの肉を食っていた。



「おうシュータ、お前も食うか?」



「おっちゃん! 今日は何売ってんの?」



「スモールラットの串焼きだ。小骨がちょっと多いが美味いぞ」



 祭りの屋台で串焼き屋のおっちゃんが売っていたのはネズミの丸焼きだった。マジか。



「あ、後で食おうかな……明日大食い大会なんだ」



 毒耐性スキルもあるから平気だと思うけど、万が一でおなか壊したくないし。

それに、ネズミはなあ……前世で路地裏の廃棄食材を漁ってたときはよくご一緒してたので、ちょっとだけ仲間意識が……



「なんだシュータ、お前あれに出るのか。チャレンジャーだな」



「チャレンジャー?」



「俺も昔出たことがあるが、あれは……まあ、神に祈るんだな」



「にゃあ」



 そ、そんな過酷なの……?



 __ __



「これなんかどうじゃ? 幸運が上がるチョーカーじゃ」



「な、なんか首輪みたい……ねえ、それ本当に効果あるの」



「ただのアクセサリーではない、このワシが開発した魔道具じゃ。効果は保証するぞ」



「どのワシよ。まあいいわ、それ頂戴」



「まいどあり。サービスで鈴も付けといてやろうかの」



「ペット用じゃないわよ! これはシュータに……」



「俺がなんだって?」



 リッツさんが出しているアクセサリーの屋台にシルクがいたので声をかける。



「シュータ!? い、いやこれは……!」



「リッツさんこんにちは! へー、シルクもこういうのに興味あるんだ」



「シュータか、よう来たの。ワシが作った自慢の逸品じゃ。ささ、見てってくれ見てってくれ」



 リッツさんがやっている屋台には、魔道具としての効果が込められたアクセサリーが所狭しと並んでいた。



「ま、まあ、シルクも外に出られるようになったし? オシャレにも気を使わなきゃって感じで」



「わー! なにこれかっけー!」



「話聞きなさいよ!」



「ごめんごめん。ちょっと気になるものが売ってて。リッツさん、これってもしかしてグラサン?」



 黒いレンズのカッコいいメガネが売っていた。ターミネー〇ーになれそうだ。



「お目が高いのうシュータ! それはワシが新開発した、遮光効果の付いた眼鏡じゃな。名称は特に決めてないんじゃが……せっかくじゃ。シュータの言う通りグラサンにしようかの」



「しゃこう……どういう意味なの?」



「リッツさんそれちょーだい!」



「衝動買いやめなさい! シルクの質問聞いてからにしなさいよ!」



「遮光というのは、その名の通り光を遮ることじゃ。この眼鏡の場合は、付けると眩しさが和らいで、光の反射が多い水面なんかが良く見えるようになるぞ」



「リッツさんそれいくら!?」



「通常なら3万エルのところ、シュータには特別価格で1万エルでよいぞ」



「買った!」



「思い切りが良すぎるわよ!」



 うおおお! かっけー! これで俺も無敵のサイボーグ……



「……なんか、暗い」



「ふむ、ちと遮光効果が強すぎたかの」



「リッツさん、これやっぱ返……」



「それはもうシュータの物じゃ。そしてこの1万エルはワシのものじゃ」



「えー、じゃあいいや。シルクにあげる」



「いらないわよ! って、ちょっ、勝手にかけるな! ……え?」



「うわーシルクめっちゃ似合ってんじゃん!」



 白銀の髪と白い肌に、漆黒のサングラスが映える。海外のセレブみたいだ。



「これ、すごい……いつもより景色がはっきり綺麗に見える……」



「本当に? 俺は暗すぎる気がするんだけど」



「ふむ。嬢ちゃんは普通の人よりも光が眩しく感じていたのかもしれんの」



 そうか、シルクは影暮らしだから、肌だけじゃなくて目にも影響があったのか。日除けの香水の効果では、眩しさはそこまで減らせていなかったのかもしれない。



「うん、やっぱそれ、シルクが使ってよ」



「えっ? でも、シュータが買ったのに……」



「俺には効果が強すぎるし、シルク、グラサン似合っててめっちゃカッコいいからな! プレゼントだプレゼント!」



「カッコいい……えへへ」



「シュータ、嬢ちゃんにカッコいいは褒め言葉かどうか微妙じゃぞ……いや、普通に喜んどるな」



「嬉しいに決まってんじゃん! サイボーグだぜ!」



 明日からシルク・シュワルツェネッガーって呼ぼうかな。



「シュータ、シルクもこれ気に入ったわ。プレゼントありがとう。だから、その……これ、お返しね」



 そう言うと、シルクは俺の首に何かを取り付けた。



「……なにこれ。首輪?」



「チ、チョーカーよチョーカー! 幸運が上がる魔道具よ!」



「マジか! すげー! あっ! よく見ると封印されたモンスターみたいでカッコいいかも!」



「……ふふっ。モンスターって」



 (シュータにスキル、幸運上昇が付きました)



「おーマジで効果あった! シルクありがとう!」



「……うん!」



「ほっほっほ。青春じゃのう」

 

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