第42話 クレイジーパンプキンの収穫



「みなさんおはようございます!」



「おはようございます!」



「朝早くからお集まりいただきありがとう! それではこれから、クレイジーパンプキンの収穫を始めます!」



「よろしくおねがいしまーす!」



 日が昇ったばかりの、街はずれにある作物農場。

今日は収穫祭に必要なクレイジーパンプキンの収穫を手伝いに来た。

野菜の収穫とかやってみたかったから楽しみだ。



「シュータはクレイジーパンプキン食ったことあるか?」



「ううん、見たこともないよ」



 手伝いを頼んできた商業ギルドのおっちゃんと一緒に、クレイジーパンプキンの栽培エリアへ向かう。



 カボチャは前世で食べたことあるけど、こっちの世界では市場でも見かけなかった。

1年中いつでも同じ野菜やフルーツを育てられるわけじゃないから、収穫時期によって市場に並ぶ食材は変わってくるのだという。

そりゃそうか。ここビニールハウスとか無いもんね。



「なんだ見たこともねえのか。じゃあビックリするかもな」



「ビックリ?」



 めっちゃデカいとか?



「まあそれは実際に……おっいたぜ。あれがクレイジーパンプキンだ」



 フワ……フワ……



「えっ」



 畑の中、というか空中に、ハロウィンのカボチャみたいな顔が付いている謎の物体が浮いていた。



「ヒーッヒッヒッヒ……」



「うわっ!? しゃ、しゃべった!」



「食べごろになると勝手に浮いてくるんだ。それじゃあさっそく収穫していくか」



「あれ、食べられるの……?」



「美味いやつもあるぞ」



「美味いやつもある?」



「日が昇って早いうちに収穫すると、美味いやつの確率が上がるんだ」



「確率?」



 どういうこと?



 __ __



 収穫用のハサミを貰って、クレイジーパンプキンを切り落としていく。



「ヒーッヒッヒッヒ……」



「なんか怖いんだけど」



 空中に浮いているパンプキンは、よく見るとちゃんと地面の葉っぱやツルと繋がっている。



「ヘタの部分を切り落とすだけだ。なんか喋ってるけど、別に攻撃とかはしてこないから大丈夫だ。1個やってみろ」



「うん……」



「カカッテコイヨ……」



「えいっ」



 ちょきんっ ボトッ。



「あっ落としちゃった」



「外の皮が硬いから大丈夫だ」



「そうなんだ」



 料理するのが大変そうだなー。



「ァ……」



「ん?」



「ア、アア……アアアアアア!!」



「うわっ!」



「アアアアアア……!! イタイイタイイタイィィ!!」



「えっこわっ!!」



「ヨクモヨクモヨクモォ……! アアアアア!!」



「切り落とすとしばらくうるさいが、そのうち静かになるから気にしないことだ」



「ええ……」



「シュータ……ユルサナ……ィ」



「ひぃっ! ご、ごめんなさい……」



 ……。



 …………。



「おっ静かになったみたいだな。それじゃ荷台に運んでくれ」



「うん……」



 精神的ダメージがえぐい。



「ねえ、これ本当に普通の野菜? 魔物の一種じゃなくて?」



「そりゃそうだろ。攻撃してこないし」



 判断基準が雑すぎる。



「さあ、どんどん獲っていくぞ」



 ブチッ ボトッ。



「ギャアアアアアアア!!」



「…………」



「コ、コロシテヤルウウウウウ!!」



「ん、どうしたシュータ?」



「いや、うん。やるけどさ」



「ヒーッヒッヒッヒ……」



 ちょきんっ ボトッ。



「アアアアア!! キサマアアアアアア!!」



 なんか思ってた収穫と違い過ぎる。大根引っこ抜いたり、ジャガイモ引っこ抜いたりしたかったんだけど。



「これあんまし子供にやらせない方がいいよ」



「まあそれはそうだな」



 ザシュッ ボトッ。



「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……」



「確かに、こんなんみたらガキどもは食えなくなるだろうな。シュータ、秘密にしとけよ」



「俺もガキなんだけど」



「食欲なくなったか?」



「ううん」



 大会が楽しみだ。



 それから俺たちは、午前中いっぱいひたすらクレイジーパンプキンを狩り続けた。



「シテ……コロシテ……」



 バシュッ ボトッ。



「ナンデダヨオオオオオ!!」



「君が言ったんじゃん」



「ソウ……ソウカモ……」



 なんだこいつ。



 ……。



 …………。



「あー腹減った」



「おーいシュータ、今日は上がりだ」



「終わり! 弁当!」



「ちゃんと用意してあるから持ってけ」



「やったー!」



 働いた後の弁当は最高に美味かった。

あと何故か食欲がない人たちがたくさんいて、俺に食べきれなかったおかずをくれた。ラッキー。



 ちなみに3人ほど、作業の途中で叫びながらどこかへ走り去ってしまった。

結局、3日間の収穫を終えたとき、最後まで作業を続けていたのは参加していた内の2割くらいだった。



「毎年作業者を集めるのに苦労するんだよな。報酬は結構弾んでるつもりなんだが」



「まあ、だろうね」



 来年からは耳栓配った方がいいよ。

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