品質管理が提供する「商品」のチェックは誰がするのか
不具合報告やチェックリストの提出、作業計画の組み立てとオンスケジュールでの進行、業務上のあらゆる外部コミュニケーションなど、それらすべては、品質管理がクライアントへ提供する「商品」である。商品に価値を感じられるからクライアントは対価を支払う。品質管理は対価を受け取って自社を存続させていく。ごく当たり前のビジネスサイクルである。
クライアントが、無形のものに価値を見いだすのは容易ではない。対価に見合うかどうかを見極める基準もまた、形を持たないからだ。数字は説得力を持つものだが、不具合の報告件数だけで価値をはかるのは危うい。下手をすれば『報告件数だけ増やせばよい』の動きが生じかねない。
製品発売前における不具合の有無は、価値基準としてふさわしいといえるだろう。不具合がない、もしくは軽微な不具合しか残っていない状態だ。クライアントが、品質管理の仕事に価値を感じるには十分である。しかし、製品発売後に見つかる不具合もある。発売前の「良」評価は、発売後、手のひらを返したように変わってしまう。
品質管理の立場から、自らが提供する商品を価値あるものとして仕上げるのも、実に難しい。言葉、ファイル、態度、働きぶりといったあらゆるアウトプット、作業のプロセス、そしてなにより優先される結果。それらのすべてに金銭的価値を感じてもらわなければならないのだ。
品質管理の対象である製品と同様に、自社が提供する商品に不具合があったら大変だ。敬語表現を重んじるあまり他人行儀にすぎるコミュニケーション。何を伝えたいのかよくわからない不具合報告。チェック完了と言いつつチェックリストに空欄がある。「がんばればなんとかなる」と期限ぎりぎりまで作業進捗を知らせない。製品の重大な問題を相談せずそのままとおしてしまう。検査に使用した製品バージョンが古い。検査で不合格判定とした部分をそのままにしている。これらはすべて、品質管理が提供する商品の不具合である。
品質管理を仕事にするのなら、自分たちの仕事の質をきちんと検査してから、クライアントに商品を提供してほしい。クライアントに対価の支払いだけでなく、検査の手伝いまでお願いするようではいけない。苦情という名の不具合報告が入る危うさがある。クライアントの立場から物事を見たら、たまったものではないだろう。対価を支払ったうえに、品質管理チームへの不具合報告までさせられるのだ。無言で商品への評価を下げ、『次はよそに頼もう』と決意するのになんら不思議はない。
くれぐれも気をつけてほしい。品質管理として提供するあらゆる商品の品質チェックは、クライアントへ商品を手渡す前に自分たちで行うのだ。
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