チェックリストの意義
品質管理の作業では、チェックリストを用いることが多い。チェックリストとは、製品検査の記録である。検査方法の説明にはじまり、いつ、誰が、どの検査を受け持ち、どの製品バージョンで検査し、どういった動作をして、不具合の有無はどうであり、どのような合否判定であったのか、と検査のあらゆる記録を残す。1日にチェックリストのどこまで進められたかがわかれば、おおよそのチェック終了スケジュールが割り出せる。今日はこのくらい進んだ、このペースを維持すればあと何日でチェックリストがすべて埋まる、と見通しが立てられる。チェックリストは、作業進捗を知るための役割も持っているのだ。
チェックリストの有用性はほかにもある。「自衛手段」としてである。人は物事を忘れるようにできている。自分が検査したことを、いつまでも鮮明に記憶しておくのはまず無理だ。脳のリソースは仕事以外にも割きたいだろう。そんなとき、思い出すための手がかりになるのが記録だ。1週間前、1か月前、1年前のことであっても、記録は確かな説得力を持つ。もし、自分の受け持ち範囲で不具合が見つかったとしても、記録をもとに『このときは存在しない不具合です』と潔白を証明できる。仮に検査不備があったとき、『各位合意のうえでこう検査した』の記録があれば、非は各位に分散される。かかわった全員で改善に取り組むのが自然な流れだ。検査を終えたあとの開発工程で、新たな不具合が組み込まれることはよくある。備えあればうれいなし、である。
完璧な検査ができるのであれば、チェックリストはなくたっていい。チェックリストづくりにこだわるあまり、肝心の検査が進まないのであれば本末転倒だ。しかし、他者に「検査をした」と明言するには確かな証拠がいる。ひと晩眠れば、昨日どのような検査をしたのか、記憶があいまいになるかもしれない。うろ覚えだからといって、昨日と同じ検査を繰り返すのでは、検査の進みは鈍ってしまう。そんな場面で、チェックリストは記録として効果を発揮するのだ。
作業の記憶が新しいうちに、正確に検査記録をアウトプットしよう。あとからまとめてやるのでは、すでに忘却が始まったあとである。手遅れだ。ぼんやりとした記憶ではなにも守れはしない。確かな記録を残して、あなた自身を、仲間を、そして製品の品質を守ってほしい。
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