【観光通信】起源星に真打登場か！？ソル地球

起源星に真打登場か！？ソル地球

観光通信[Vol.67]　アルタイル － 0826

天の川銀河にあまねく進出した人類。その発祥の地は太古に忘れ去られ、定かではありません。先月、「我こそは起源星！」と主張する、新しい惑星が現れました。ソル恒星系の惑星地球です。今号は、一風変わった地球発見の経緯と、その魅力について紹介します。

■起源星を主張する惑星は多い

　起源星として有名なのはガーライル。帝国に滅ぼされたアーリア、コリント、ファルサングの星域に囲まれ、植民地密度の高い宙域に位置します。

　一般的にはアーリアこそが播種船を送り出した「創建者（ファウンダー）」、あるいはその直系の後継者と目されていますが、「文化や言語の類似性から、ガーライルが植民地展開の起点であることは明らか」というのがガーライルの主張です。

　こうした文化的背景を根拠とする惑星の他に、「歴史の古さ」で起源星を主張する世界もあります。一つの惑星が多数の地方国家に分割されていたり、言語(方言)が細分化している惑星ほど、「それだけバラバラなのは、大昔からあるから！」という理屈で、起源星だと主張しているのです。エルナトやトゥーベなどが有名ですね。

　特にトゥーベは言語が5種類もあり、商品ラベルに同じ内容がずらずら並べられることから、ロゼッタストーンと揶揄されることがあります。

　現在、「起源星観光組合」には、先のガーライルやエルナト、トゥーベなどを含めて100超の惑星が加盟しています。どの星も、起源星としての魅力を発信し続けているのです。

■分裂した惑星

　ソル恒星系は銀河の辺境、オリオン腕に位置しています(注1)。銀河ハイウェイの駅建設に進出した帝国軍に発見されました。2千光年間隔の駅と重複するとは、なかなか運の良い惑星です。

　帝国の調査により、地球は「統一政府を持たず内戦状態、技術レベルは低く脅威となり得ない」と判定されました。今年の4月末に駅が稼働開始しています。

　現在、オラティスの使節団が地球を訪問し、貿易交渉を開始したところです。帝国が不干渉を宣言したため、慣例に従い、商取引の対象はエンタメコンテンツ中心となる見込みです。

　特筆すべきは、地球の分裂ぶりがすごいこと！地方国家は200個以上、言語は5千種以上(！)。「バラバラで古い」路線では、最右翼の有力候補といえるでしょう。

■多彩な食文化が魅力

　地球の地方国家の一つ、フランスのトロワグロ氏のコメントです。

「我らの誇りの一つが、実り豊かなテロワールに支えられた食文化です。多様な文化との交流が、常に新しいキュイジーヌを生み出しています。

　特にフランス料理は、帝国の調査官にも絶賛されました。

　今では帝国の広い範囲にレシピが配信され、将兵の皆様から、ご好評をいただいております。

　惜しむらくは、レシピの伝達に混乱が生じていることです。フランスやイタリア、中華などが一緒くたに日本食またはワショクとして紹介されています。テリーヌの赤味噌和えや天ぷらパスタなど、地球では考えられない組み合わせも生じているとのこと。決して調査官の悪意ではなく、コミュニケーション不足によるものと理解しています。

　皆様が地球駅を利用される際は、ぜひ地球に立ち寄って、我々の誇る本物の美食をご賞味ください」

　現地の食材を活かした、多様多彩な食事を楽しむことが出来るようです。

　地球食については、著名な料理レシピ配信ブログ(注2)で紹介されておりますので、ぜひご覧下さい。

■渡航勧告はF6

　またオラティスの観光局曰く、「起源星巡り」の重要な観光地として、地球を組み入れたツアーも企画したいとのこと。

　位置的に地球起源星説は無理があるように思われますが(こんな辺境から、人類が全銀河に広がったというのは、ちょっと嘘っぽい)、多彩な文化資源を活かして頑張って欲しいところです。

　なお帝国広報(情報軍外交部広報課)によると、惑星地球の渡航勧告レベルはF6。これは「肉体・精神・胃腸の修行者向け」。3つに自信のある方、これから鍛えたい方は、ぜひ地球訪問をご検討ください。渡航のご感想や3Dスキャンデータなどの投稿もお待ちしております！

注1：ソル恒星系の所在については、帝国広報刊「銀河ハイウェイ路線図」の[ペルセウス腕]-[オリオン支線]を参照のこと。

注2：著名なブログ ＝ @margari_gaburi 。配信者は、実は情報軍の現役士官のようです。過去に機密情報をうっかりレシピと一緒に発信し、記事がごっそり削除されたことがありました。興味のある方はお早めにチェックされることをお勧めします。