第19話 日常に潜む悪意
日常に潜む悪意。この手の小説の私の三大バイブルがある。
ジュディス・ゲストの『アメリカのありふれた朝』
レッドフォードが監督した映画『オーディナリーピープル』の原作だ。
日本公開名『普通の人々』
映画といえばこれというくらい味わい深い作品だった。
ナイーブな父と子が激うまでした。
父親役をレッドフォードが、という話もあったようだが、やめて大正解。
この作品を映画にしたところにレッドフォードの誠実な人柄を見た気がした。
顔の良い男に拒否反応のある私だが、これ以降レッドフォードが大好きになった。
自分の尺度がすべてという母親は多分、作者の近くに見本がいたんだろうな〜
決まった道しか受け付けない、こんな女を私も知っている。
実は小説の方を後で読んでいて、書評によれば場面の切替えが映画っぽいとか。
アガサ・クリスティの『春にして君を離れ』
言わずと知れたミステリー作家の心理サスペンスだ。
いつもの日常を視点を変えてみた時、余人では無く自分こそが悪の根源だと気づく。
再生の道Aか、妄想だと振り払い元の道Bか。
石田あゆみ風に、あなたならどうする〜
アンドリュー・ガーヴの『ヒルダよ眠れ』
妻殺しの疑いをかけられ犯人を探す夫の前に現れる真実。
皮を剥がすように妻の悪意ある姿が見えてくる。
ガーヴの筆致は不思議なほど気品に満ちている。
うろ覚えだが別名義で児童文学を書いていたような気がする。
さもありなん。
実は小説よりもホラーよりも怖い実話はごろごろしている。
小説も真っ青な悪意を抱えた人間はいるものだ。
大したことのない私の人生ですらそういうことはあった。
私は単純な人間だから、私の知っている人たちは善きサマリア人だと思ってしまう。
知っていたつもりの人の恐ろしい実態、悪意が何十年も経ってから牙を剥く。
そういう人は往々にして他人にひどい劣等感を抱いていたりするものだ。
その場にいない人の陰口を言ってはこちらの様子を窺う悪癖もあった。
親にまで一時出禁にされるほどの人だったのだからもっと注意すべきだったのだ。
そんな歳になってから知っても、絡み合っていて、自分の人生の修復は効かない。
すごすごと撤退して関わりを断つしかない。
潜んだりしない常態化した悪意というのもある。
親戚に誰から見ても間違いのない毒親を持った子がいる。
子と言っても私の10歳ほど下だからもう良いおばさんである。
家を出られる歳になったら速やかに独り立ちした。
飲食店を何店舗も経営し、倒産し、介護タクシー事業をし、といった豪傑である。
親のような子育ては絶対するまいと息子を立派に育て上げた。
そして今では年老いた毒親の面倒を自分の最後の仕事だと言っている。
他のきょうだいはそれぞれ性格破綻と言っても良い状況で頼りにはならない。
自分も含め毒親がとんでもない作品を作ったと嘆く。
ここまで来た自分を誇る気持ちもあるようだから、それを大切に思って欲しい。
彼女が子供の頃、私に漱石の例の猫の本を買ってもらったと言う。(知らなんだ)
中学生になってからやっと読めたらしいが、本を読む習慣ができたようだ。
彼女の人生の一助になれたようで私も嬉しかった。
彼女の例は極端だが、小説から得た教訓はいつも私の戒めとなっている。
陳腐なエゴに捉われないこと。周りの人の伸びる方向を縛らないこと。
思わずこういうことってやっちゃうんだよね。
SNSの拡散じゃないけど、人間って自分の視点に縛られるものだから。
だからなかなか難しくて、カッコよく言うなら永遠のテーゼ、なんてねw
オババの世迷言 @youjiali
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