第4話 なかま

パパがいなくなってからママが一人で頑張ってくれたのは知っている。ママもどうやってお金を稼いでいるのかを私は知らない。家賃も高いし、だから体を売らされても仕方がないと思う。最初も今も男と寝るのは嫌だ。でも優しくされるのは嬉しい。エッチの時以外にやさしくされたことがないから。


 学校で普通に彼氏がいたこともある。けれど、みんなここあとやりたいだけ、そう気が付いてしまった。だから別れた、それなら金を払ってくれる大人の方がましだ。そういったらサトシは、男はみんなそうだとメールをよこしてきた。そうなのか、どこまで本気なのだろう。ならどうしてあなたは私を抱かないの、そう返信したかったがやめた


「突然すいません、サトシさんってどういう人なのですか。教えてもらえませんか」

 悩みに悩んだ末に、とうとうここあはサトシがフォローしている女性にDMを送ってしまった。高二と書いてあったからそれが本当ならここあより一学年下ということになる。


「あなたはどなた、サトシさんとはどういった関係ですか。娘さんとかではないでしょうし、まさか奥様、という訳もないですよね」

 DMの返事はすぐに来た。悩んだことが無駄だったと思うほど丁寧な文章だ。

「AKOさんですよね。あなたのアカウント視たような気がします。間違っていたらごめんなさい。裏ですよね」


 もか、という女性はここあのアカウントの存在を知っていた、彼女のアカウントのお勧めに乗っていたらしい。ということは、もかもここあと同様に裏をやっていたということになる。でも今の彼女のアカウントは、ごく普通の日常だけを書いていて、裏のかけらもなさそうだ。


 ばれているなら話は簡単だ、何も隠すことはない、ここあはありのままを話した。そして改めて尋ねた。サトシがわからない、彼はどんな人なのかと。

「ごめんなさい、私もよくわかりません。ただ困ったときに相談に乗って頂いています。私はお金の援助は受けてないんですが、精神的にはものすごく、頼っています」


 精神的というところが少々気になった、というよりありていに言えば嫉妬した。ただそれは仕方がないことだ。どのみちサトシは自分のものではない


「逢ったことはあるんですか」

 相手は年下だけれど、こっちから頼んだ形だ、しかも何となく気おされている。つい言葉も丁寧になってしまった。

「いいえ、メールアプリだけです。お会いしてみたいのですけど、いつも適当にはぐらかされています」


「私と同じですね、抱いてほしいとまで言ったのにあっさり躱されています」

 ここあは自嘲気味、と言ってもメールなのでどこまで通じるか、スタンプに思いを乗せて添付した。


 もかは、わかってくれたようだ、ここあの話だけを聞いたのじゃ不公平かなと言って、自分の話をしてもいいかと書いてきた。別にどうしてもという訳ではないけれど、人の話が何かの役にたつかと思いなおした。


 もかは関西に住む高校一年生、プロフィールは本当のことを書いているという。ここあと違い母親がなくなり、弟と父親と三人暮らしだという。


母親が亡くなった小学五年生から家のこと一切をこなしてきたという。学校の友達とは時間がうまく合わず、寂しさとストレスから裏に走ったらしい。


とにかく裸を見せれば、みんながちやほやしてくれる。お金に困っていたわけではないが、ただで見せるのもつまらないという理由から、写真を売っていた。

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