第112話 来客(1)

「あっ! お姉様~!」


 ……ん? あれ? 何処かで聞き覚えのある声がしますね、と。


 わたくしは思えば。


 わたくしを呼び、叫ぶ、声の主を確認するべく、声がする方へと視線を変える。


「あっ! ロベリア……」


 そう、わたくしを少し離れた距離から呼ぶのは、供を控え優雅に歩く。


 わたくしの妹、ロベリアだから。


 わたくしは、妹と一緒で、驚嘆を漏らしつつ、ロベリアの名を呼ぶと。


 あの子は、そのまま怪訝な表情をしつつ、見てはいけない者! 見たくはない者!


 そう、以前の舞踏会の騒動……。


 わたくしのことを心の底から愛おしいと思っている陛下の猜疑心と嫉妬心……。


 それとわたくしの元許嫁、婚約者でもあったレオンの想いも煽る策──。


 離反の策を使用したロベリア……。


 そう、あの子が、物心がついた頃から、姉のわたくしへのライバル心……。


 そして年頃になれば、自身が愛おしいレオンお兄さまの元許嫁、婚約者だから気にいらない。


 偶に供を控えつつ、お城の周りを皇女殿下らしく、優雅に散歩していれば。


 テラス越しから上と下を見つつの会話だが。


 わたくしとレオンが仲慎ましい、舞台! 物語のような様子で、会話するのを目撃! 見れば!


 姉であるわたくしのことを八つ裂きにしたくて仕方がない。


 まあ、あの子のはずなのですが。


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