第111話 庭園の思い出(5)

(う~ん、それにしても、あれだけ陛下に隠れて浮気をしていたあのひと……。よく陛下の子ではなく、他人の子を自身のお腹に宿すようなことにならなかったな?)と。


 わたくしはふと思えば。


(もしかして? あの、だらしないひとは他人の子をお腹に宿したから、毒殺にて殺されたのでは?)とも思い始める。


 と、なれば?


あのひとを殺したのは、浮気相手の男ではないのだろうか? 

 陛下に自分の子でないと悟られた時に。あのひとが陛下から強く、荒々しく問われ、自分の名を出せば。その男の首……だけではすまないはず……。一族もろとも処刑されるに違いない。だからあのひとを殺すことで、口止め……。あのひとのお腹にいた、自分の子を闇に葬ったのかも知れない?)、


「う~ん」と、呻りつつ歩き始めるものですから。


「女王閣下、どうされたのですか?」


 アンが自身の顔色を変え尋ねるから。


「いいえ、いいえ、何でもないですよ。アン、大丈夫」と。


 わたくしはアンに首をまた振りつつ、言葉を返した。



 ◇◇◇


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