第89話 容疑者の一人(14)

 ドン!


「おぇ」


 ドン! ドン!


「うぇ、おぇ」と。


 ヒットマンの男の身体は、わたくしの魔法により、宙に浮いたままの状態で。


 そのままお城の廊下の天井へと何度も激突するから、声を出すことが不可能な彼は、こんな言葉しか吐くことができないでいるから。


「ふっ、ふふふっ。本当に可笑しい。面白いですね」と。


 わたくしは大変に冷たい微笑みを浮かべつつ、男の様子を窺い、歓喜すれば。


 ウルソー含んだ、この場にいる者達は、真っ青な顔をしつつ唖然、呆然としながら佇み。


 ことの成り行きを見詰めつつ、様子を窺ってくれるから。


 わたくしは更に、この場にいる者達へと面白い物を見せてあげようと。


「ほら、貴方~。今度は床に落ちて~。そら早く~」と。


 わたくしはヒットマンの男へと嘆願をすれば。


 ドカン!


 グシャ!


「おごぉ、おおおっ! ごぉおおおっ!」


 そう、地面! 床に! 勢い良く! 顔から叩きつけられた男の顔は!


 顔の骨が砕けたように潰れ、左の目や鼻口から血が流れ、大変に悲痛な顔! 悲惨な顔! 涙も流しているのですが。


 わたくしが弄り殺すために、自害をさせぬようにしていますから。


 彼はお可哀想に、泣き叫ぶこともできずに、悲惨な顔で、わたくしに今直ぐ息の根を止めてくれと言わんばかりな顔をしていますが。


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