第36話 小鳥のように飼われる人生……(5)

 まあ、それぐらい、わたくしのことが愛おしくて仕方がない陛下だから。


「ソフィア! 嘘をつくな! 貴様は! 儂の目を盗んではレオンと逢い。交わっているのだろ? 儂には分っているのだぞ!」と。


 おもちゃを与えてもらえない子供が駄々をこねるように。


 夫は、わたくしの説明を否定するから。


「あなた~。わたくしが言っていることは嘘偽りなく、本当のことです」と。


 わたくしは夫に告げ。


 自身の視線を陛下から窓──テラスへと向け。


「陛下~。わたくしがレオンと世間話をしているのは、あのテラス越しに話しをしているだけで。彼と抱き合い、戯れながらわたくしは話しなどしていません!」と説明する。


「それに、わたくしは、あなたではございませんから。夫を裏切り、他の異性へと現を抜かすようなことはしません!」


 そう、みなさんも覚えている通りで、わたくしは幼少期に一度夫に捨てられた女……。


 そう、義母に夫を寝取られた者ですから。


 今度は陛下ではなく、わたくしが夫に対して憎悪と嫉妬心を剥き出しにしつつ睨み、罵声を吐けば。


「あっ!」


 わたくしの夫の口から、驚嘆が漏れる。

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