第51話 魔道具

 リリムには鋭刃をふたつ、メッサには貫通、シャランラには浄化のスキルを貸与した。

 プリシラとアルチはスキルをねだらなかった。

 ミスリルゴーレム戦をみてあれは無茶だと思ったらしい。

 まあ、同じことを求めたりはしないが。

 リリム達は強くならないといけない。

 とりあえず火の粉を自分の手で払えるぐらいには。


 ゴーレムのエリアを抜けると、そこは遺跡というより廃墟で、所々小さいクレーターがあった。

 出てきたモンスターはオーガだった。

 オーガの群れか。

 アンデッド軍団とリリムがそれに立ち向かう。


 弱いなりにアンデッドはオーガに傷を与えていく。

 カーカス、リギッド、リベンジャーはオーガの隙をみて一撃を加えて葬っていく。

 リリムは、鋭刃6重で、オーガの硬い革をバターのように斬り裂いた。


 ここは、ボーナスステージだな。

 物理真っ向勝負は、アンデッドと相性が良い。

 それに禁忌魔道具から出る邪気もオーガの動きを鈍らせる。


 オーガの群れはあっけなく死んだ。

 それをゾンビにしたのは言うまでもない。


「装備も充実させるか。アンデッドは回復とか色々持たせているけど、リリム達は光魔法だけだと心許ないだろう」

「禁忌魔道具いっちゃいますか」


 アルチが目を輝かせて言った。

 禁忌魔道具は代償が酷いのが多い。


「いや、堅牢、鉄皮、防御の硬いの三つでいく」

「ちぇ、つまんないの」


「とにかく作れ」

「はいはい」


 オーガの魔石を使って、小盾の形をした防御の魔道具ができた。

 『堅牢の盾』というらしい。

 バックラーみたいに使うのが良いだろうな。


 3つのスキルを無理やり入れたので、消費魔力が半端じゃない。

 切り札にしか使えないな。



「指弾の魔道具も作れ。ゴブリンの魔石で良い」

「そんなの役に立ちませんよ」

「いいんだよ。子蜘蛛に装備させる。目潰し用だ」

「つまんなさ過ぎるよ」

「いいから作れ」

「はいはい」


 指弾の魔道具は指輪の形をした物だった。

 『虫刺されの礫』という魔道具。

 子蜘蛛の胴体に装着するとちょうど良い。

 子蜘蛛の機動力は少し失われるけど、もともと素早さには期待してない。

 指弾の魔道具の試験をする。


「子蜘蛛ちゃん達、あそこを狙って【光魔法】」


 シャランラが光で目標を指示する。


「撃って」


 子蜘蛛達は、指弾の魔道具で小石を飛ばした。

 目潰しにはなっているな。

 うんうん、こういう小技も役に立つ日がくるかも知れない。


「アルチ、ご褒美に死霊魔法と生命力吸収の魔道具を作ってもいいぞ」

「喜んで」


 出来上がったのは筒状の暗器だった。

 突き刺すと生命力を奪って、最後にはアンデッドにするらしい。

 欠点はできたアンデッドが魔道具の使用者のいうことを聞かない野良のアンデッドになってしまう事だ。

 その野良のアンデッドは使用者に復讐すべく止まらない。

 名前は『怨嗟の復讐者』。


 禁忌魔道具らしい魔道具だ。

 だが、俺なら使える。

 アンデッドにした後に、死霊魔法で従えれば良い。

 何本も突き刺せば、それだけ死も早まるだろう。


「よし、とりあえず10本作れ」

「はい」


 使い所は難しいが、人間なら、アンデッドになったら弱体化する。

 人間の強敵に使うとしよう。


「蛇手と、毒刃と、生命力吸収とかどうだ。禁忌魔道具らしいだろう」

「いいですね。ナイスチョイスです」


 出来上がったのは蛇腹剣。

 『毒蛇の吸血』という名前らしい。


 デメリットは使用者の生命力も吸い取られる。

 アンデッドに装備させるのに良い魔道具だ。

 ただ、3つスキルをぶち込むには少なくともAランク。

 できればSランクの魔石が要る。


 オーガゾンビは潰したくない。

 あとで要らないAランクモンスターを乱獲した時に量産しよう。


「カーカス使え」

「うー、ありがとうございます。うー、この剣に恥じぬ戦いをご覧に入れます」


「アルチ、満足したか」

「それはもう」

「後で『虫刺されの礫』を1000個な」

「ええっ、そんなぁ」

「禁忌魔道具作って満足したよな。なら仕事しないと」


 帰りに子蜘蛛を、限界までシャランラに従えさせようと思う。

 子蜘蛛って役に立つと思うんだ。

 斥候とか密偵とか。


 密偵には身体強化の魔道具を持たせるか。

 そうすれば逃げ足が速くなるに違いない。

 ゴブリンの魔石じゃ一瞬しか持たないと思うけど、たぶん一瞬が生死を分ける場面も出てくると思う。

 こういう小技が役に立つ時もくるかも知れない。

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