第50話 ゴーレム

 ダンジョンが遺跡になった。

 この雰囲気には見覚えがある。

 ドスンドスンという足音を立ててゴーレムがやってきた。

 ストーンゴーレムにアイアンゴーレムもいる。

 アンデッド達には難しいかな。

 とくにアイアンゴーレムには歯が立たないだろう。

 聖騎士達もこのエリアは避けたらしい。

 死骸がないのでそれが分かる。


「【次元斬】。俺は余裕だけど、リリムはどうかな」


 とりあえず休めるように広場を一掃した。

 しばらくして、リギッドがアイアンゴーレムの残骸を引きずってきた。


 カーカスはそれを自分の手柄のように誇らしげだ。

 まあ、けん制ぐらいの役には立っているのだろうけど、残骸をみる限りリギッドがやったのに違いない。


「お疲れ」

「うー、それほど疲れてはおりません」

「うがっ」


 まあそうだろうな。

 アンデッドが肉体的に疲れたなんて話は小説でも読んだことがない。


 リベンジャーもアイアンゴーレムを引きずって現れた。


「お疲れ」

「我にとっては容易いこと」


 リリム達も現れた。

 バラバラにしたアイアンゴーレムをアンデッド達に運ばせてた。


「鋭刃4重なら、アイアンゴーレムぐらい容易いか」

「私の腕があってよ。他の人じゃこうはいかないわ」


 ペシャンコになったアンデッド達が続々と運び込まれる。


「何があった?」

「うー、ミスリルゴーレムです」


「リリム、やれるか?」

「楽勝よ」


 リリムは胸を叩いたが、どうも信用ならない。

 俺は一緒に行くことにした。


 そのゴーレムは神々しかった。

 反射された光が虹色に見える。

 3メートルはあるな。

 オーガといい勝負だ。


「よし、リリム、ゴー」

「犬じゃないんだから。シャランラは緑魔法の拘束。メッサは遊撃お願い」


「【緑魔法、拘束せよ】」


 遺跡に絡みついている蔦が生き物のように動いて、ミスリルゴーレムに絡みつく。

 シャランラに操られている子蜘蛛も糸を吐いた。

 ミスリルゴーレムは蔦と糸をいとも簡単に引き千切った。


「【鋭刃×4】、とりゃあ」


 リリムの攻撃はミスリルゴーレムに僅かな傷をつけただけだった。

 メッサがけん制するようにミスリルゴーレムの膝関節を狙う。

 ミスリルゴーレムが輝くと、石弾がシャワーのように3人を襲った。


「てりゃ、てりゃ」

「ふんふん」

「【緑魔法、盾】」


 どうにかやれているな。

 だが、決定打を浴びせることが出来なければジリ貧だ。


「リベンジャーならどうやる?」

「我なら、血魔法で倒して胸のコアを砕く」


 まあ、それが無難だな。


「とにかく転ばして、胸のコアを狙うわよ」


 リベンジャーの声が聞こえたのかリリムもコアを狙うらしい。


「【緑魔法、草結び】」


 蔦が結ばれてトラップとなった。

 ミスリルゴーレム少しつまずいた。


「【身体強化×2】。うりゃあ、地べたに這え」


 メッサがミスリルゴーレムの足にタックルして、さらに体勢を崩す。

 子蜘蛛が糸を掛けて引っ張る。

 ミスリルゴーレムは尻もちついた。


「【鋭刃×4】【幻影】【身体強化】、うりゃゃゃ」


 リリムの渾身の一撃はミスリルゴーレムの腕に阻まれた。

 そして、リリムは虫でも払うようにビンタされた。


「きゃああ」


 シャランラがリリムを回復しようと駆け寄る。

 胸のコアが弱点だというのはミスリルゴーレムにも分かっている。

 当然カバーするように動く。

 次元斬なら両腕を切り飛ばしてからとどめだな。


「リリム、まだできるか」

「ええ、もちろん。メッサ、起き上がる一瞬を狙うわよ」

「はい」


 ミスリルゴーレムは立ち上がるために片手を地面についた。


「【身体強化×2】、たりゃゃゃ」


 メッサの突きをミスリルゴーレムは片手で防いだ。


「いまっ! 【鋭刃×4】【幻影】【身体強化】、うりゃゃゃ」


 リリムの斬撃はミスリルゴーレムのコアを砕いた。


「おめでと。Sランクモンスターを倒せたのは驚嘆に値するわ」

「はぁはぁ、プリシラに褒められても嬉しくない」

「まあ、及第点だ。リリムも大金持ちになれたな」

「ははは。命をかけた甲斐があったわ。これでお家再興に一歩近づいた気がする」


 リリムが乾いた笑いを上げる。

 金だけではなんともならないと思うが、金がないと何もできないのは確かだからな。


 リリムは死線くぐって一つ強くなれたかな。

 まあ、さらにスキルを貸し出せば、簡単にもっと強くなれるだろうけど。

 今持っているスキルもだいぶ使いこなしているようだから、そろそろ追加を考えよう。

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