第36話 生徒会2

 目の前の朝日奈茜が澄ました顔でとんでもない事を口にする。


「え〜、私の聞き間違いでなければ‥

 修学旅行に家族の同伴を認めてほしいと‥。で、それがダメなら『姉』の同伴だけでもと‥。」


 開いた口が塞がらないとは、この状況だろう。

 いや、ダメに決まってるじゃん。

 

 私の頭脳では処理が追いつかない。

 こんな時の為にアンタがいるんでしょ!

 私は頼みの綱である生徒会長を見る。


 私と視線が交差した瞬間、生徒会長は手をクロスして無理だと主張する。

 だったら、他のメンバーなら!

 私は花井優と新見いろはを見る。

 二人とも私と視線が合わせる事はなく横を向いてしまう。


 アンタらは役に立たないと‥。

 オッケーオッケー。

 だったら私一人で対応してやる。


 私は一人、朝日奈茜と対峙する。


*    *    *    *


「ちなみに何故、修学旅行に同伴したいのか理由を聞いてもいいですか?」


 私は冷静に朝日奈茜に質問する。


 質問されな朝日奈茜は考える事なく、即答する。


「理由ですか?

 そんなものは決まってます。

 愛する弟と一緒に居たいからです。」


 朝日奈茜が少しだけ頬を紅くさせながら理解に苦しむ事を口にする。


 コ、コイツ‥

 真顔でしれっとぶっ込んできやがった。


「愛するですか‥。」


「はい♡」


 はいじゃねぇよ。

 あ〜、帰りたい‥。


 こんな私のピンチを救う声が聞こえてくる。


「あの‥

 無理に校則を変えなくても、個人的に修学旅行に付いて行けば良くないですか?」


 おっ、書記の花井優が正論をぶっ込む。

 いつも生徒会室でイチャイチャして気に食わない奴だが、今だけは天使に見えるよ。

 さぁ、朝日奈茜よ。

 どう応える?


「個人的に付いて行くですか?

 そんなストーカーみたいな行為はしませんよ。」


 朝日奈茜が笑う。


 イヤイヤイヤ、学校に許可取って付いて行くのもストーカーに近いですから!!

 コイツ、自覚ないのかよ。


 ほら!花井優。何か反論しろよ!


「ですよね‥。」


 負けやがった。

 クソッ、役に立たない奴め!!

 だったらいつもの手だ。


「わかりました。

 生徒会内で一度検討させていただきます。」


 必殺の時間稼ぎだ。


「申し訳ないのですが、時間があまりないので今検討して下さい。」


 朝日奈茜は逃してくれない。


 あ〜、誰か助けて‥。

 

 このギリギリの状況で生徒会長が動く。


「髪の毛や制服などは他の生徒達に関係するので賛成してもらえましたが、さすがに修学旅行に家族を同伴させるのは厳しいですよ。

 なので、私からの提案ですが‥

 何かの役職的なもので参加するのはどうですか?」


 無駄に高機能な生徒会長が、余計な知恵を朝日奈茜に与えようとしていた。

 

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