ドルメン 第 50 話 行き違い


 その頃、一人の男がセビーリャの南を目指していた。ビリャマルティンにあるアルベリテ ドルメンに行く途中だった。ヨーロッパで発掘された中でも最大級の古い遺跡だった。男は、地下の神々に捧げる新しい生贄のために呼び出されたのだ。生贄の血と肉を食らう時、力がみなぎるのを感じる。今度の生贄で六人目だ。宇宙の七つの輪が完成するまであと一つ。


 六人目の生贄が誰かは知らない。ドルイド僧たちは適切な者を選んだだろう。今は転換期だ。一連の儀式が終わって代変わりをすれば再び静かな時代が戻るだろう。


 男はドルメンから数キロ離れたところに車を停め、夜が満ちるのを待った。男は黒い上下を来ていた。車から誰にも見咎められずにドルメンまで行くのに黒は都合がいい。儀式の前に服を脱ぎ、身を清めるのだ。(ローラの彼氏が生贄となった)ゴラフェでの儀式では、生贄の苦しみは短すぎた。今回はもう少し長いといいが。


 男は思った。

(我々が悪なのではない。誰かが栄えれば、他者が衰える。我々には他を凌駕する義務がある。人類の利益のために。我々が相手を凌ぐたびに、我々の意識の晴明さや透視力が高まるのだ。我々は既に呪術師なのだ。七つの輪が完成すれば、その力は最高になるだろう)


 男はアルベリテ ドルメンに向かって歩き始めた。羨道の入口には二つの巨石がそびえ立ち、その長さは二十メートルを越える。墳墓の直径は五十メートル以上だ。今夜の生贄を捧げる場所にふさわしい。


 一時間以上も歩いて男はアルベリテ ドルメンに辿り着いた。指示によれば、普段とは異なり、今夜の生贄は真夜中に連れてこられるとのことだった。男は遺跡の周りの柵を北側に向かって歩き始めた。金網を切ってくぐれるようになっているはずだ。その先には、横たわった巨石があり、その石が今夜の生贄の祭壇となる。今夜の生贄を捧げれば、後は一人。その一人を捧げることで誰がドルイド大僧正になるかが決まる。男の尊敬するシャルル パンポンが数ヶ月前一年前では?に亡くなってからの空席がやっと埋まるのだ。


 男は金網の穴から柵の中に入った。しかし、ほかのドルイドたちは来ていなかった。ドルイド高僧は、時間までに生贄の準備ができていなければ立腹するだろう。時計を見ながら、ほかの者たちが来るのを待った。


 しばらく待った後、男はドルメンを去ることにした。何らかの理由によって今夜はここでの儀式が行われないようだ。これ以上、ここで待つのは危険だ。男がドルメンを出て車に戻る途中、治安警備隊の車がこちらに向かってくるのが見えた。柵の中にいる間に見つからなくてよかった。教団のほかの者たちはこの危険を感じて来なかったのか? なぜ連絡が来ない? 教団の者は携帯電話を持ち歩かない。連絡のしようがなかったのだろう。男は走って車に戻りたい気持ちに駆られたが、目立ってはいけない。非常事態の場合は、ともかくその場を去り、自宅にできるだけ早く戻る。それが規則だった。帰ってから何が起きたのかわかるだろう。


 ジェーンに何もなければいいが。彼女が苦しんだりするのは耐えられない。



(初掲: 2024 年 11 月 14 日)

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