美島さん(←…………はぁ、どいつもこいつも

「いぃやぁぁあ!!」


 僕は今落下中。カケルと初めて会った時のようにキレイに落とし穴にかかり落ちている。デジャブ……


 ダンジョンの落とし穴っていうのはイタズラやドッキリに使われるような落とし穴とは穴の規模が違う。ショートカットに使える、のはゲーム内だけだ。


 大体、落とし穴に落ちた者の末路は落下死。僕もあのときカケルが作った死体の山が無ければ死んでいた。ダンジョンは上層、中層、下層と3つの層に分かれているんだけど、落とし穴は上層から中層へ、中層から下層へ、時には上層から下層へと続いている。

 小型ダンジョンは全体が十層くらいだから落とし穴も三層分くらいの深さしかないんだけど、中型になると大体、全体が三十層になって落とし穴の深さも十層ほどになる。


 一層辺りの深さ、というか高さは学校の一階と同じくらい。だから、僕は今学校の十階から飛び降りたのと同じってわけ♪ え、呑気に言ってる場合じゃないだろ、って? 安心して〜、僕も強くなったからね。


 受け身を取るのは得意中の得意。なんかこう、四点着地からゴロゴロってすれば痛くない。柊樹さんも驚いてくれるくらいには上手いらしい。だから十階くらいからでも……


 えーと。魔学が五階建てだから、あの見上げるほど高い校舎の倍の高さってわけだ。なるほどなるほど、たったの十階か……って、あれ。意外と高くない?


「いや待って待って待って! 思ったよりも高い気がする」


 頭の中で出来上がった十階建ての校舎は思ってたより高く感じる。五階はそこまで高いと思わないけど、なにこれ十階になった瞬間レベル跳ね上がり過ぎでしょ。って終わりはやってきゃうんんだよ! 呑気に言ってる場合じゃない……


「だぁれかぁぁ!!」


 とりあえず叫んで見るが効果があるわけがない。というか反響して自分の耳が痛いだけ。ぐぅ、万事休す。こうなったら一か八か、受け身を取ってやる。


「ウィンド」


 下にぼんやりとした灯りが見えた時、そんな声が聞こえた気がした。さっき叫んだせいで耳壊れたかな、って思った直後。僕の体は下からの強風により浮き上がった。突然の浮遊感に襲われ……吐きそう。


「ちょ、ちょっと! 吐かないでよ?!」


 下から声が聞こえる。ってこの声聞き覚えが……


「もしかして三島さん?」

「え、あ、うん。美島です」


 やっぱり美島さんの声だ。良かったぁ、ちゃんと生きててくれて……


「えっと、誰?」


 あー、美島さんは僕と話したの一瞬だし覚えてないのか。まぁ、あのときはカケルの圧がね、良くなかったから、悪いのはカケル。とりあえず僕は美島さんに僕が誰なのかとカケルたちと助けに来たことを説明する。


「あ、あの時の……とりあえず降ろすね」


 三島さんがそう言うと僕の支える風がゆっくりと弱まっていく。時間にして十数秒、僕は地を足をつけていた。うわぁ、地面の感触久しぶり。っと、ずっと落ち続けてたからフラフラで立てないや……


「大丈夫……?」


 壁にもたれて座り込む僕に心配してくれたのか三島さんが聞いてきてくれる。でも、その顔が可愛すぎて思わずそっぽを向いてしまった。いやだって、お人形みたいにキレイな肌にちょっと垂れ目で儚げな感じが、それはもうね。


「えっと、ありがと」


 そう言って微笑む姿は天使のようだ……って僕は何を言ってるんだろう。とりあえず何とか立てそうなので立つ。よいしょっと。


「…………」

「えっとぉ……」


 三島さんが困ったような顔をしている。僕はそれをいた。チッ、背高のっぽがよぉ……


「えぇ、私が悪いの?」


 三島さんは困ったように呟くが、僕は僕はそれを無視してもう一回座る。僕は目の前の女より背が高い。そう高いんだ。今は座ってるから見上げる形になるけど立ったら見下ろせる。だって僕は男子なんだもん。女子より高いはず……柊樹さんは例外として、目の前のか弱そうな三島さんよりかは────


【次回に続く】

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