ウラバナシ(←はぁ、めんどくせぇ

「おいこのクズ」


 第一声はそれだった。スマホの向こうから聞こえる声は何時になく苛立ちを含んでいた。


「こんな夜中に何の用かと思ったら……用が無いなら切るぞ」


 現在は日付が丁度変わったくらい。伊織から電話がかかってきたと思ったらいきなり「おいクズ」だぜ?意味わかんねぇっての……


「ナル君の頭撫でてたでしょ!」

「あー……」

「あー、って何、あーって!!」


 うーん、音量下げようかな……俺の鼓膜が持ちそうにないや。


「何か言ってよ! ねぇ」

「いやまず何で知って──」

「ちょっと待って! ナル君からメッセージ!!」


 俺は思った。何なんだよコイツ、面倒くさいな、と。でもナルから伊織にメッセージ届くなんて珍しいな。そもそも俺にさえあんまり送られてこないんだが……


「……あ、ごめん。ナル君と電話するから」

「は? いやちょっと待──」

「じゃあね」


 ブツッ、と電話は切れる……あの野郎、ふざけやがって。明日絶対にぶっ飛ばしてやる。たとえ抵抗しても全て斬り落としてやる。マジで何なんアイツ。


 そんな事を暫く考えてから俺がスマホをしまおうとした時、丁度スマホが振動する。またあの女伊織か……


「もしもし、カケル?」


 電話に出るなり一応男のくせに男とは思えないほど高い声が聞こえてくる。そう、今回の電話のお相手はナルだ。


「よぉ、どした? 伊織と電話してたんじゃ……」

「あー、うん。さっきまでしてたよ〜。でも柊樹さん忙しいみたいで……」


 なるほど、アイツのことだ。どうせナルと話すのに緊張して切り上げたんだろう。学校でもナルと話し終わった後は一人で興奮してるもんなぁ。


「それでカケルにも用があってさ」

「用?」


 ナルから俺に何の用だろう。考えてみても全く検討がつかない。


「明日、学校行っても暇じゃん?」

「ああ、そうだな」


 俺たちは予選突破したので後半の別ブロックの試合に用はないのだ。対戦相手の観察は大事だが俺らに限っては例外だろう。今週は予選ばっかだから暇だ。


「学校休んでさ、僕に付き合って欲しいなぁって」

「ん? 別にいいぜ」


 あ、いいんだ──ってナルが驚く気配がする。まぁ確かに学校休むのを二つ返事で了承したら驚くか……でもまぁどーせ暇だし。


「そっか。分かった。じゃあ柊樹さんの家に集合で」

「おう、了解」

「じゃあね、また明日」


 おう──と電話を切る。さて、明日の予定も出来たしそろそろ寝るか。俺は最後に歯磨きと磨きを終わらせてから布団に入った。

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