前世の死因

・リカルド


 気持ちが悪い。寒い。熱い。毒か?五感がくるっている。それしか分からない。


 こんなところで死ねない。ダイナマイトを作ってしまった。ノーベルと一緒だ。

 ブレーキを踏まないと。

 そう思っていたのに、とうとう戦場で使ってしまった。

 こんなところでは死ねない。


 俺は前世持ちというやつだろう。断片的に記憶がよみがえる。

 小さいころから神童と呼ばれたが、知識が残っていたからだ。

 だが、前世の記憶などないほうがよかった。

 とうとう前世で死んだときの記憶を取り戻してしまった。


 とてつもない閃光。やけどの激痛。そして衝撃波。

 一瞬で死ねたからよかった?

 バカなことを言うな。死んだこともないくせに。


 国のリーダーなど信用できない。コントロールできるなど、たわごとだった。

 俺は最初の被害者となっただろう。国のリーダーどもは死んでくれたか?そう願うが、その後の世界がどうなったかなど知る由もない。

 閃光を感じたとき、”しまった”と思った強烈な後悔を思い出した。


 なぜ彼らを信じてしまったのだろう。

 恐ろしい。

 神がいるから前世の記憶は消されるのだと思った。神の慈悲だ。

 だけど俺はその慈悲から零れ落ちた。

 耐えられぬ。


 俺にも大事な家族が居たに違いない。だが、思い出すのが恐ろしい。あの地獄となった世界では。残された家族が不憫だ。不憫で仕方がない。


 気持ち悪い・・・

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