パーフェクトファミリー
スイセイ
第1話 出会い
自分が家庭を持つことなどまるで想像していなかった。幼いころの家庭環境が特殊だったせいで、家族に幸福感が持てず、大人になってからも結婚には全く興味がなかったからだ。私の両親は、私が高校入学と同時に離婚した。そこから母と妹と私の3人での暮らしが始まったのだが、当時は母のパート収入と、父からのわずかな養育費、それと私のバイト代で何とか食べていける生活だった。高校を卒業した私は就職し、社会人になる道を選んだ。妹に高校だけは卒業してほしいという思いがあり、そのためにはお金が必要だったからだ。社会人として仕事にも慣れてきたころ、それまで大変だった生活が少しだけ楽になった。
また、この頃には周りで第一次結婚ラッシュが起こり、結婚式に出席するたびに、出費が重なって辛かったことを思い出す。
この第一次結婚ラッシュの最中に、私が職場で出会った男性と、私の友達、香帆が結婚した。私が二人を紹介して結ばれたのだ。やがてこの夫婦には第一子が産まれ、今までのように私と香帆は外に飲みに行くことが難しくなり、2か月に1度くらいのペースで、香帆の自宅で家飲みするようになった。
そしてある日、この家飲みで、のちに私の夫となる男性に出会う。
私の人生を大きく変える運命の日が訪れたのだった。
いつものように香帆の家での飲み会に参加するため、準備をしている時だった。
香帆から「夫の知人男性を私に紹介したい」との連絡を受けた。
というか、その時点ではもうその男性は香帆の家に到着していたようだ。
私は飲み会へ行くかどうか迷った。どうしても面倒に感じてしまったからだ。
しかし、私は香帆も香帆の夫もよく知っている手前、二人の好意を断ることができず・・・。更に、これは私の想像だが、既にその男性二人には、私が来ることを話している様子だったので、二人の顔を立てるべく、全く気が向かなかったが、香帆の家へと足を運んでいた。
少しだけ興味が持てる情報があった。
「紹介したい男性は二人いて、一人はお金持ちで次期社長、もう一人は福山雅治に似ている」ということだった。あいにく私はお金持ちという理由では惹かれない。それに、お金持ちなら他にもいくらでもいると思うが、あの福山雅治に似ている男性なんて、この世にいるのだろうか?と疑問を持ち、試しにその福山雅治に似ている男性、とやらを見に行ってやろうではないかと思った。
約束の時間より早めに着いた。どうやらお金持ちと福山雅治も到着しており、飲み会はすでに始まっていた。私たちの飲み会ではいつものことで、到着したら各々、自分が買ってきた好みの酒を飲み始める。そして、香帆は毎回おいしい料理で私たちゲストをもてなしてくれるのだ。参加メンバーが全員揃ったところで、本日のメインディッシュが登場し、ついに飲み会が開催された。
私の目の前に座っている、七分袖の黄色いTシャツにジーパンといういで立ちのこの男性。まず、黄色の服がやたらと目立つのだが、福山雅治はこの黄色い方で間違いないと判断するのは簡単だった。お金持ちもそれなりに良いビジュアルをされていたが、顔の作りが福山雅治とは全く違う。
明らかに黄色い方が香帆の言う福山雅治に似ている人だ。
そう、この黄色い方こそが私の結婚相手だった。
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