密室の中のゾンビ

方丈 海

密室の中のゾンビ 前半

「Hey,スティーブ。弾は足りてるか?」

 俺の問いに、相棒のスティーブはタクティカルベストから弾倉を取り出し、見せびらかしながら答えた。

「故郷に帰ったら店を開けるくらいには余ってるぜ、マイケル。俺はお前と違ってハズさないんでな」

 俺はスティーブの軽口に口笛を返し、辺りを見渡す。死屍累々の光景にも、すっかり慣れちまって何も感じていない。この地区のゾンビは大体制圧できた。閑静な住宅街は、より一層閑静になったようだ。

 すると、民家の二階からうめき声が聞こえた。

 全く嬉しくねぇことだが、それが常人のものかゾンビのものか、俺たちはすっかりと耳でわかるようになっちまった。

 このうめき声は、後者だ。

 俺はスティーブと目配せをして、チャイムを鳴らす代わりに民家のドアを蹴破る。もしドアの向こうにゾンビがいた場合、一緒に吹っ飛ばすためだ。ご丁寧にドアをあけて、潜んでいたゾンビに目の前で噛まれた隊員を俺は知っている。その隊員はどうなったかって? 震える手で俺に敬礼した後、自分の銃で自分の頭を撃ったよ。彼は俺に勇気をくれた。いつか俺も同じ目にあった時、自分の頭を撃ち抜く勇気を。

 階段を登り、声のした部屋に向かう。中からは、相変わらず腐れゾンビのうめき声が聞こえる。おっと、〝腐れゾンビ〟はくどい表現か? つまり、そう言いたくもなるくらい、俺たちはこいつらに嫌気がさしてるってことだ。

 部屋のドアにキックをかます。だが、破れない。中から板でも打ち付けられていたようで、なかなか頑強だった。

 俺はスティーブと息を合わせ、何度か同時に蹴りを繰り出すと、3度目でようやくドアは開いた。

 すると、中にはゾンビが一匹、マネキンみたいにジッと佇んでいた。

 そいつはゆっくりと俺たちの方を振り返り、ランチを見る目で俺たちを見ている。その口周りは赤黒く染まっていた。〝食事〟を終えてから、そこそこ時間が経っていたみたいだ。

「腹ペコか? いま楽にしてやるよ」

 相棒のスティーブはそう言ってゾンビにヘッドショットをキメた。そしてゾンビはようやく眠りにつく事が出来た。俺とスティーブは警戒しつつ、部屋の中を探る。大きめのダブルベッドが目立つ、よくある寝室だった。他にはゾンビも生存者も無し。

「どうやら、ゾンビはこいつだけだったようだな」とスティーブ。

「……妙だな」

「なにがだ? マイケル」

「この部屋、窓に全て内側から板が打ち付けられている。俺らが蹴破ったドアも同じだ。つまり、密室だったわけだ」

「そりゃ、ゾンビ共が入ってこないようにってバリケードだろ。立て篭もりなんて、よくある光景だ」

「じゃあ、このゾンビはどこからこの部屋に入ってきたんだ?」

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