第43話 地獄突入

 イベントを終えた次の日。

 

 いよいよ地獄エリアへ赴く。今の最前線は地獄エリア第三エリアだそうだ。もう少しでクリアされてしまう。


 それを阻止するべく俺達は現天獄内の店「極」へ集まった。


「じゃあ、地獄へと行こうと思うが、一気に行くぞ! いいな! 追随を許さないほどあっという間にクリアして一番乗りだ!」


「そないなこと言うても、クリアできる目途はあるんか?」


 一気に行くというバカラさんへいつになく的確な質問をするキンドさん。目的がもうすぐ目の前なのだ。もう目が眩んでいる。


「それは、わからん!」


「なんやねん!」


「ギャハハハハ! だが、俺は悪魔に詳しい」


「恐いわ! 悪魔に詳しいってこわっ! バカラ近付かんといて!」


 隣に座っていたのに立ち上がってこちらに移動してくる。


「ギャハハハハ! マセラの方がいいってのか!? そいつはNPCを嫁にしようとするやつだぞ?」


「なんなんお前ら!?」


「俺に言われましても……」


 バカラさんとキンドさんの変な茶番に付き合わされた。それより、悪魔に詳しいとはどういうことなんだろうか。


「バカラさん、なんで悪魔に詳しいんですか?」


「それはな、調べたからだ」


「……えっ!? 普通。なんでそんなに自信満々なんですか!? 誰だってネット使えば調べられますよ」


「フッフッフッ。違うのだよマセラくん」


「なんかキャラ変わった」


 チッチッチッと俺の前で人差し指を振る。

 そして手を開くとこちらを見下ろした。


「このゲームは忠実に悪魔や天使の特長を掴んでいるんだ。出てくる悪魔は恐らく俺っちが考えている五体だ!」


「「「おおぉぉ!」」」

 

 バカラさんの考えていた悪魔は攻略サイトにも途中まで記載されていた。

 第一エリア バルベリト ナイフが手と足、肘、膝から生えている悪魔らしい。

 第ニエリア アスモデウス 精神攻撃を仕掛けて誘惑する悪魔らしい。

 第三エリア以降は攻略サイトで不明だが、レヴィアタンでデカい蛇じゃないかと。

 第四エリアはベルゼバブ 蠅の悪魔。

 第五エリアがルシファー 堕天使として有名。


 というのがバカラさんの予想である。

 弱点とかがわかるわけではない。

 第一エリアでさえ攻略クランは苦戦したのだ。


 それをスピーディにクリアするなんてできるのだろうか。


「第二エリアはゾンビアタックで銭投げして攻略したそうだ。攻略組がな。精神攻撃は味方を見境なく攻撃してしまうらしい。精神的に誘惑されなければ大丈夫とのこと、ということは、マセラの出番だ。ネムさんにまっしぐらのマセラを誘惑することはできないからだ!」


「おす!」


「本気で言ってるん?」

「ボク心配なんだけど。」

「ワレもルルちゃんにまっしぐらだが!?」

「マセラ様なら大丈夫かもですわね」


 アルトとキンドさんはその作戦に乗り気ではないらしい。

 実際やってみないことにはわからないからな。


「ギャハハハハ! まぁ、行ってみるか!」


 そんな軽い調子で地獄へと向かう。地獄は薄暗いのだが遠くまで見渡せる不思議なエリアだった。街のエリアもしっかりとあり、休憩や食事ができるようになっている。


 さっそく第一エリアに入る。

 出てきたのは墓から出てくるゾンビ達。

 悪魔に殺されたもの達というらしい。


 なんであの悪魔の為に動くんだよ。という疑問を持ちつつ迫り来るゾンビを始末する。チュウメイから得た情報をここで使う。


 天使の輪っかだ。実は密かに集めていたのだ。どう使うかはわからない。だが、投げてみる。


 輪投げの要領で投げる。すると、近くにいたゾンビを捕まえて締め上げていったのだ。ダメージを与えていく。


「ギャハハハハ! またマセラがわけわかんないことやってやがる!」


「わけわからなくないですよ? ちゃんと親友から得た情報です!」


「いつの間に情報を手に入れてやがったんだ? まぁ、いいや。やっておしまい!」


 なぜに某印籠を出す人のようなノリなんだ。

 まぁ、いいか。


「へい! それそれそれっ!」


 輪っかを次々に投げていくとゾンビは締めあげられていき、ある程度ダージが入った所で一撃をくらわせて倒す戦法である。


 第一エリアはこれで順調に奥までやって来ることができた。情報とは凄いことである。これを知っていただけでいとも簡単にボス戦だ。


 ボスはナイフを手に持つ殺人的な悪魔だ。これへの対応策はない。ただ、斬る。それのみらしい。スピードがありAGIが高め。


 となると必然的に……。


「マセラ! やっておしまい!」


 となるわけだ。


「ヘイ!」


 まぁ、ノリにのってやって行くんだけどもね。

 少し離れたところからダッシュで肉薄する。あっちもこちらのスピードが見えているようで普通に俺目掛けてナイフを振り下ろしてきた。


 だが、そこで負けるほどAGIは低くない。更に一段階上げたスピードで避けて首筋に一撃を放つ。


「ギィヤァァァ!」


 叫び声を上げるが、それだけでナイフを振るってくる。刀で受け流すが、今度は肘の刃で突き刺しに来た。


「うおっ!」


 仰け反って避ける。そのままバク転をして距離をとる。

 ゲームの体だから動けたが、すごい変な感覚だ。


「フッ!」


 重心を落として一気に距離を縮める。そして、スキルののった攻撃を放つ。


 ────ギギャンッッ


 金属を斬ったような音が響きわたり、悪魔の首は落ちた。


「ギャハハハハハハ! よくやったマセラよ! 次に行くぞぉぉ!」


 どっちが悪魔だかわからんな。

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