親愛なる————へ 16
……私の姿に変身したセレスさんが、モデル《Almighty》相手に無双してる……。
というか、セレスさんもアナザーアビリティ持ってたのね!? 私だけかと思ってた……天狗になってごめんね……。
セレスさんのアナザーアビリティは、どうやら他のプレイヤーに変身して、ステータスやアビリティやなんかもコピーする……というか、変身した相手の強さを自分にプラスする感じかな。
私が使えない魔法とかバンバン使ってるし、元々のセレスさんの強さはそのままだと思っていい気がする。
……私の高速戦闘って、端から見るとあんな感じなのね……。
それにしても、セレスさんって近接の精度もめちゃくちゃ高いわね。
ってことは、実力はプロレベルってこと。
これが人気の理由かぁ……。
「さて、セレス君が引き付けてくれている間に、こちらも仕事をしようか」
そう言いながら、ジョセフさんはホーエンハイムを小さな機械の上にのせ、パソコンを開く。このパソコンは、ホーエンハイムの部屋から持ってきたものだ。
同じくヘルメスさんも、パソコンを一台持ってきている。
私とセレスさんがモデル《Almighty》を相手している間に、ホーエンハイムはじめパソコンが得意なジョセフさんやヘルメスさんで、【ディア・キャロル】のコントロールを奪取する作戦だ。
「私はプログラムとか無理だから、そっちはお願いするわね」
「任せるといい」
うーん、暇になっちゃった。
本当は私とセレスさんの2人でモデル《Almighty》を相手するつもりだったんだけど……リミッター解除でここまで強くなるなんてね。
まぁ、ステータスも大きく上がってるから当然か。
「ぁっ、首飛んだ……」
「おーっほっほっほっ! 隙だらけでしたわよ!」
2本のレイピアがモデル《Almighty》の首を通り抜け、物理的にその首が飛ぶ。当然モデル《Almighty》のHPは0となり、ポリゴンとなって消えていった。
しかし、追撃の手は止めない。
ミューロンに向けられたレイピアの切っ先が宙をなぞると、徐々に魔法陣を形作っていく。そしてそれは強い光を放ち───
『くっ……!』
復活したモデル《Almighty》がミューロンの前に躍り出て、その魔法を受ける。魔法も対策してきたのだろう。モデル《Almighty》の振るった腕が魔法を弾き、霧散してしまったのだ。
ズンッ───と音を立てて着地するモデル《Almighty》は、先程よりもさらに大きく、硬く、強靭になっていた。スピードでは勝てないと踏んだのかな?
『えぇ、確かに速い。しかし、軽い。この装甲を突破できますか?』
「舐めてもらっては困りますわ! 【
へっ、マジで?
そう宣言したセレスさんの姿が、再び変化していく。
最初に見えたのは、頑強な四本足。ナイフかと思えるほど大きく鋭い爪が並び、それだけで明らかな
見上げるほどに大きな体躯と九本の尻尾、青く鋭い瞳にミューロンの姿を映し、白銀の体毛に包まれたその姿は———
「クォ————————————ンッ!」
『なっ……』
「ハクヤガミ!?」
嘘ぉ……ハクまで模倣できるのね、【
戦闘力もハク並みだとなると……モデル《Almighty》はご愁傷さまだ。
♢♢♢♢
「アビリティの効果が切れます! カローナ様、一度交代してくださいまし!」
「オッケー! やっと私の出番ね!」
モデル《Almighty》を合計3回ほどリスポーンさせた後、セレスさんの姿が元に戻り始めたのを見て、私は慌てて前に出る。
アナザーアビリティの効果時間は3分、その上リキャストは24時間。一日3分しか使えない、ウ○トラマンみたいなアビリティである。
セレスさんと交代で前に出た私はバフをかけ直し、ついでに『禍ツ風纒』も起動。今なら1ダメージも受ける気がしないからね!
「ふっ……!」
「───ッ!?」
一瞬だけ【ファイアーボール】を発動して即キャンセル、1秒間だけ残る魔法陣で目隠しをしながら、【グラン・ペネトレイション】を発動した薙刀をぶん投げる!
まさか私が初手から武器を手放すと思ってなかったのだろう。反応が遅れたモデル《Almighty》の右肩に、薙刀が突き刺さった。
……本当は心臓を狙ったんだけど、遅れながらも致命傷を避けるのはさすがね。
まぁいいや、次!
薙刀を手放したことで毒の供給源を失った『
「【ドゥルガースマッシュ】!」
まるで幾つかコマが飛んだようにも見えるほどの加速で間合いを詰め、【ドゥルガースマッシュ】を叩き込む!
いかに身体を硬くしようと、私の人力パイルバンカーを耐えられるほどではなかったようだ。肩口に刺さっていた薙刀は【ドゥルガースマッシュ】によって押し込まれ、モデル《Almighty》の右腕を切り落として突き抜けた。
喜びはさておき……薙刀をキャッチして【
ついでに———
「“黒く、
漆黒を纏う私は一気に駆け出す。
宙に描く残光は稲光のようで……音すら置き去りにモデル《Almighty》の右腕側へと回り込んだ私は、雑に振り回された裏拳の下を潜って拳を握る。
「【妖仙流剛術——
極大の雷を内包する【
炸裂音が幾重にも重なり、外殻を砕きながら吹き飛ばすも、奴がまだ致命傷に至っていないことを察する。
どうやら自分から後ろに飛んだようだ。威力を殺し切れてはいないけど、まだ生きている。
「けど、これはチェックメイトね? 【妖仙流柔術———」
0から最速へ———背中から壁に激突したモデル《Almighty》に避ける術などない。
「———
落雷のごとく床に叩きつけられたモデル《Almighty》は、内部から弾けるように木っ端微塵になり、ポリゴンとなって消えていった。
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