第98話 ルシファーの過去
森の奥からやってくる集団にリリアンは振り返る。やってきたのはランウェルとその集団。ランウェルの姿を見たランベルは大きく息を吐き正気に戻る。
「まさかこんなことになるとは思わなかった!!まだ頭がぼーっとするよ」
「お疲れランベル」
「朱炎様!」
「公女様~~~お久しぶり…。えっと、ごほんっ!何のことかな?」
「もうバレバレよ」
「変な芝居は終わりです」
いつもの癖が出たランウェルは一度誤魔化そうとしたがもろバレのため、芝居は終わりにすることになる。
「あの、公女様…いつから気付いて」
「即位のパーティーの時です。カルウェンさんとお話ししているの、聞いていましたので」
「バレていたのですね、幻滅しましたか?」
「いいえ、ですが一つ聞いてもいいですか?私は、誰によってこの世界に転生したのですか?本物のリリアンはどこに行ったのですか?」
「君を蘇らせたのはタツキという男だ。彼も今こちらに向かっている。本物のリリアンの魂はルシファーに喰われた」
その言葉にリリアンは動揺を隠せずにいる。そうなればリリアンは元々空っぽの器に宿ったことになる。それと同時に『タツキ』という男に心当たりがある。小学生の時に、この物語を一緒に作った友人。彼の名前も『タツキ』という。
「黒魔女様は、ルシファーにとって母親と変わらない存在だった」
「えっ?」
ランウェルは空を見上げながらそう呟く。ランウェルは自分が知っている限りのルシファーと黒魔女との思い出を話してくれる。
ルシファーは赤子の時から孤児院におり、ルシファーの母親は子供を捨てて男と一緒にどこかに行ったと聞いているらしい。それが本当かどうなのかわからないが、そんなルシファーを孤児院から引き取り自分の子供として黒魔女が育てたという。
『黒魔女様!その子をどうするのですか?!?!?!?!』
『どうするって、私が育てるに決まっているじゃない~!!ランウェルは心配しなくていいんだよ??』
『それは生きているのですよ??おもちゃと違うんですよ?!』
『今度は捨てないで上げてくださいよ~後始末おいらたち大変だから』
『あんたはいい加減上級悪魔だということを自覚しなよ?』
『自覚はあるけど、おいらたまに忘れるからね~』
『黒魔女様じゃなくて、お主のことが心配になってくるの~』
『カルウェン~!!』
『あははっ!みんな心配しなくても、この子はみんなと同じ上級悪魔で、大罪の器になるよ』
黒魔女は軽々言うが大罪の器はそう簡単に現れるものではない。今集まったこのメンバーでさえも、やっと集まったもの。あの小さな子供が器とは限らない。
そう思っていたが、成長したルシファーは確かに器だと確信を持てる人材になった。そんな平和が流れていく中、人間と呼ばれる我々魔族とは少し異なる者たちは何度も争いを起こすようになっていった。
『黒魔女様…』
『人間は、どうしてこうも争いを繰り返すのだろう。龍王を怒らせなければいいのだけれど…』
『白龍のことですか?』
『そうよ、白龍を殺さなければ、黒龍は動かないから大丈夫だけど。不安なのよね』
二人はそんな不安な気持ちを胸にしまいながら過ごしてきたが、人間はそんな不安を現実にしてくる。人間界に向かった黒魔女は焼き尽くす黒龍に涙を零していた。
『なんて愚かなことを…!!』
黒魔女は黒龍を止めるために人間の町へ向かう。そのあとをランウェルたちは追いかけるが、間に合わず黒魔女は黒魔法を発動してしまう。黒魔法は人間界で使えば処刑されてしまう。
黒魔女は力を使ったためにその場で膝をついて疲れた表情を見せている。彼女が黒魔法を使ったことに人間どもは黒魔女を火炙りにすることを決める。火に焼かれた彼女は人間を恨み、自らの体を厄災に変えて人間を殺してしまう。
黒魔女の変貌した姿を見たランウェルたちは黒魔女を封印することを決める。
『黒魔女様には申し訳ないが、封印しよう…』
『ここまで来てしまっては、それしか方法はないじゃろう』
『黒魔女様を封印なんて…!!そんなのしなくていいだろ!!!人間どもが悪いんじゃないか!!!!せっかく助けてやったのに、殺すなんて!!!!』
『ルシファー、これは秩序を守るためだ。このまま黒魔女様を放っておけば人間界は崩壊する』
『崩壊させればいいだろ!!!!俺達には関係ない!!!!』
『おいらたちはよくても、ほかの生き物たちがかわいそうだよ。黒魔女様は時が経てば新たな黒魔女が生まれるから』
『俺は、そんなことできない。お前らも、人間と同じだ!!!!!』
吐き捨てるようにルシファーはランウェルたちの前から姿を消す。ルシファーが不在のままランウェルたちは黒魔女を箱の中へ封じることに成功。体力を消耗したランウェルたちは黒魔女を鎮めようとやってきた聖女の神聖魔法によって体は消滅。封印されることとなってしまった。
「俺が知っているのは、この辺だ。ルシファーは黒魔女様を蘇らせてこの人間界と魔界を消滅させようとしている」
「私、覚えていないのに…ヒリリトンさんが持っていた黒魔女の話の本で知ったけど、なんで記憶があるのだろう」
黒魔女の話を聞いたリリアンは黒魔女の思いまでもわかるような気がしてくる。
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