第97話 再会

 怠惰の悪魔として目覚めたステロンはリリアンを守る体勢を取る。ルシファーは片腕を再生させると刀を取り出す。二人は刀身を交じり合わせると強い衝撃波を生み出す。その衝撃は上空を飛んでいるカルウェンたちに被害がある。


「何だこの衝撃は!!!!」


「これは、ルシファーと…ステロン?!あやつやっと思い出したか…。我らも急ぐぞ!!!」


「リリアンはそこいるのか?!」


「きっといるはずじゃ!!!!ステロンがいるなら大丈夫だと思うがのう…」


 カルウェンは不安そうな顔をするが、どうなっているのかは行ってみなければわからない。ルシファーとステロンはお互いに引けを取らない状態にリリアンはどうすればいいのかわからない。イフが少しだけ目を覚ますとリリアンのことを見つめる。


主人あるじ…様…!逃げてください。ここにいては、危険です」


「イフ!!!」


「早く、逃げて。アルディンも、殺されています」


 そのことを聞いたリリアンは小さく悲鳴を上げる。アルディンがいないことに違和感を持っていたリリアンは腕を見るとアルディンとの契約紋が失くなっている事に気づき、ネイレーンとの思い出も消えたような気がしまったような気がする。


「アルディン…!」


「早く、逃げ…て!」


 リリアンは立ち上がると森の奥へ走り出す。その姿を見たルシファーはリリアンを逃さないようにステロンを吹き飛ばす。リリアンに迫ってくるルシファーは、剣を大きく振りリリアンの首を狙うが地面がぬかるんでいるせいで滑ってルシファーの攻撃を避けることができる。


「運のいいやつだな」


「くっ!!!」


「彼女に触れるな!!!!」


 ステロンはルシファーに向かって大鎌を降るがルシファーはそれを避けてステロンの腹部に刃を向ける。ステロンの腹部が裂けるイメージが湧くリリアンはステロンの死が脳裏に湧く。


「ステロンっ!!!!」


 リリアンはステロンの名前を呼ぶと背後から人の気配を感じる。こんな森の奥で人がいるはずが無いと思うが、リリアンは背後を見る。


「カリウルっ!!!」


 強い風とともに一人の男が飛んでくる。彼はルシファーを蹴り飛ばすと二人の前に姿を見せる。ルシファーは立ち上がるとリリアンたちを助けた彼はリリアンのことを見つめる。


「間に合ったや!!多くなって申し訳あらへんな!公女はん!!!」


「あなたは、カリウル?!それじゃあ…!!」


 森の奥からやってくる人の姿にリリアンは驚きの目線を送る。彼はどこを見てもダンゲルそのものである。死んだと思っていた相手が生きて目の前に現れたことにリリアンは動揺してしまう。


「ダンゲル…さん!!!」


「公女様よかった、よくぞご無事で」


「ダンゲルさん…!!どうして、あなたは死んだはずでは…?」


「自分、死んでいませんよ。オレは…!あ、説明は後でしましょう。今はこいつを倒しましょう!!」


「そうしたいですけど、もう私の精霊は…」


 ダンゲルは遠くの方でボロボロになっているイフとウインの姿が目に入る。もうほとんど動けずにいる二人の姿にダンゲルはルシファーの強さを理解する。


「カリウル、そいつは強いぞ!」


「わかっとるわ」


 二人はルシファーを見つめていると、ルシファーは怒っている表情を見せる。


「俺の邪魔を、するな!!」


 ルシファーは刀を振り下ろすと地面から大量の棘が突き上がってくる。全員は上空を飛び、なんとかそれを避ける。リリアンを抱えながら飛ぶダンゲルは、ルシファーの技に驚きを隠せずにいる。


「なんだよあの力!!」


「魔族の力は規則外が多いからな、あんなの序の口だよ。おいらの居た魔界では当たり前だけど…」


「お前と一緒にしないでくれや…」


 上空に飛んだおかげでステロンはカルウェンと目が合う。その瞬間ルシファーも姿を見せる。


「空の上は魔族の得意分野だ!!!!」


「ルシファー、お前姿見せて良かったか???」


 ステロンはそう呟くとルシファーはカルウェンの弾丸で肩を射抜かれる。カルウェンはルシファーに仕留めにかかるがルシファーは一人の男と入れ替わってしまう。


「おぬし!!!ランベルか!!!」


 ランベルは一言も言葉を発することもなくカルウェンを蹴り飛ばす。地面に降りるダンゲルとリリアンはランベルから離れるように隠れる。


「公女様、今は隠れてください!!」


「でも!みんなが!!」


「ご安心ください!助けは来ています」


 上空ではランベルの放電で上空を光を灯す。放電を食らったカリウルはお尻の方が焦げてしまっている。


「あちちっ!!!」


「お前何してんだよ…」


「お尻焦げちまった!!!」


「大丈夫???」


「公女はんはほんまに優しいな〜どっかの誰かさんとは違って」


「オレのこと言ってるのか???」


「誰かさんやとゆうたやけやで?もしや自覚ありですか?」


「お前、焼鳥にして食べるぞ…!」


「冗談やで」


 地面にいるリリアンたちの元にハンスとガクドはやってくるとリリアンは胸の内に溜まっているものが吹き出してしまいそうになる。


「お父様、お兄様!!!」


「リリィ無事だったか、良かった!!!」


「リリアンちゃん、もっと奥へ!あいつはやばい」


「でも、ステロンが!!!」


 リリアンは上空にいる三人の様子が気になってしまう。三人は降りてくるとステロンとカルウェンはリリアンたちを守るように立ち、ランベルは威圧を感じるほどの目つきでリリアンのことを見つめている。


「そのへんでいいだろ、ランベル」

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