第39話 闇のオークション
オークションが始まると観客は拍手喝采で司会者を称える。司会者は仮面で顔を隠しているが誰なのかはリリアンは知っている。彼は最近になって有名になって来たイルディン男爵。最近お金持ちになって男爵の爵位を買った男。鉱山を見つけた、宝箱が大量にある古代神殿を見つけたと噂になっていたが、彼の資金源がこのオークションだとは思っていなかった。
この建物も、大昔に建てられたもので奴隷制度がまだ存在していた時に、この地下に奴隷を閉じ込めて教育していたと言われている。それを今でも悪用するなんて、許すことはできない。しかもまだ幼い子供ばかりを。
『まずお出しするのは、人間の少女の
司会者はハンマーを鳴らすと多くの貴族が札を上げて金額を言いまくっている。金額が上がっていくと少女は震えて泣き出しそうにしている。その姿にリリアンは今すぐにこの場から立ち去りたく感じる。しかしそんなことしたら今回の作戦が失敗してしまう。
リリアンはぐっとこらえて、売られた彼女を見つめる。必ず助けるという気持ちを込めて。次に出てくるのは犬の口枷が付けられたウェアウルフの魔物。魔物さえも商品として売る男爵に頭を抱えたくなる。
唸り声をあげているウェアウルフは金貨2枚からスタートする。どうやら躾ができていないためらしい。最終的に魔物は金貨5枚で売れる。
ギルの姿がなかなか出てこないことにリリアンは貧乏揺すりをしてしまう。その姿を見た使用人はリリアンに耳打ちをしてくる。
「お嬢様、お目当ての物がありませんか??」
「私、今日初めて来たの。それでね、今日が獣人が出るって噂を聞いてきたのだけれど、いないのかしら???」
「それは本日の目玉商品です。お求めでしたら、早めに出しましょうか?」
「できるの???」
「もちろんです、しばらくお待ちください」
使用人はすぐにリリアンから離れると別の使用人がリリアンにレモンティーを運んで来る。しかしレモンティーのカップの下に紙が挟まれている。リリアンはそれを見るとダンゲルからの指示が書かれている。
『ーギルを見つけた。しかし連れ出すののが難しい。だが、突然順番が変わった。もしできるのなら、買い取ってほしいー』
ダンゲルからの指示にリリアンは紙を潰して了承する。リリアンは今ある貯金がいくらあるのかを考える。リリアン専用の金庫自体あることを知らなかったが、その時見た金額は今でも忘れることができない。
ボーマンが言うには金貨500億枚はあるという。そのぐらいの金額があれば、ギルの救出できるはず。リリアンはギルの安否を気にしながらギルの登場を待ち続ける。
『それでは!!皆様お待たせいたしました!!!今回の目玉商品!!!獣人の
運ばれてくるのは美しい人形と見間違えてしまうほどの姿。その姿にリリアンは心が惹かれる。ゆっくり目を開けるギルの瞳は森を見ているような美しい黄緑色になっている。その姿は見た通りの白狼そのもの。
『こちらの獣人は幻獣種白狼の獣人の子供です!!!白狼は雪山を駆け抜ける雪の国の覇者とも呼ばれております!!!まだ教育がしていませんので、お客様好みの人形にすることができます!!!!では、こんなに珍しい生き物なので…金貨1億枚からスタートいたします!!!』
そのことに多くの貴族は文句を言うが、リリアンはそっと札を上げる。リリアンは金額を言うと、全ての貴族はどよめきの声を上げる。
「その商品、金貨100億枚で買うわ!!!!!」
司会者はそのことに驚いた声を上げる。想定していなかったのか喜びを忘れてしまっている。
『100…100億出ました!!!!!!他にはいませんか?????なければあの太っ腹なお嬢様がお買い上げとなります!!!!!!!」
さすがにこれ以上の者がいないため、リリアンはなんとかなったと安堵するが、後ろの方の客席から札が上がる。
「110億」
そのことにリリアンはもう一度札を上げて120億を告げる。すると奥に居る人はその上の金額を出す。二人はセリの落とし合いをして、450億枚でリリアンはギルを買うことができる。しかしあの男は一体何者なのだろうか。声はどことなくハンスに似ていたような気もする。
その瞬間、リリアンは思わず顔をその男に向けると仮面で顔を隠しているがハンスに間違いない。ハンスがなぜこの場所にいることは、考えればわかる。ハンスはグレンと一緒にいるはず。
『それでは!!!この獣人はお嬢さんが落札です!!!!!!』
その瞬間入口が勢いよく開かれる。すぐに皇宮騎士団が入ってくる。リリアンは急いで階段を降りてギルの前に立つ。アルディンの魔法でギルの首輪を外すとギルを連れて逃げる。
「皇宮騎士団だ!!!!!全員捕縛せよ!!!!!」
突撃するようにグレンが入ってくるとハンスは仮面を外して逃走しようとしている貴族を氷漬けにしていく。
「ネルベレーテ公爵!!!ここは良いので、獣人の少年を連れ去った娘を追いかけてください!!!!」
「了解しました!!!」
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