第38話 人形奴隷
ダンゲルは対面するように反対側のソファーに座ると平気そうにお茶を飲んでいる。リリアンはダンゲルが精霊師だという設定は作っていない。確かにゲームだとギルドマスターは精霊師という設定だったが、そのまま適応されているとは思っていない。
「精霊師…だったのですか⁈」
「はい、ギルドメンバーで知っているのはアルメーレンのみです」
「彼女も、ここにいるのですか?」
「今はいません、一応は貴族なので」
するとアルディンとイフは姿を見せる。リリアンの指示でも無いのに、二人は鳥の捕まり棒にいる黒い鳥を見つめている。その鳥はアルディンたちを見ると急に飛び立ち人の姿に変わる。
「紹介し忘れました。こいつはオレの精霊、カリウルです」
「珍しい客人だ!よろしくな」
「なんの精霊?」
「黒風の精霊です。風の精霊の派生です」
「よく見りゃ〜イフリートはんとアルディンはんや!」
関西弁のような喋りに前世のことを思い出す。久しぶりに聞くためリリアンは懐かしくも思う。
「その話し方をやめなさい」
「なんでや!!おいらはこの話し方だ良いんじゃ!!!!」
アルディンとカリウルは喧嘩をしそうな雰囲気にリリアンはダンゲルに頼み事を聞く。
「ところで、ギルドマスターでもあろう人が、私を読んだ理由を聞いても良いですか?」
堂々とした振る舞いに彼は思わずくすりと笑っている。その姿に馬鹿にされているのかと感じるが、彼からはそんな感じはしない。
「すみません、妹とは反応が違うなって感じがして…」
「妹?」
「妹とは言いましても、腹違いの妹です。君のお母さん、ネイレーンと言いますでしょ?」
母親のことを知っている彼にリリアンは目を見開く。ネイレーンを知っているのは外部だとヒリリトンだけだと思っていたが、他にも知っている人がいることに驚きを隠せない。
「そうですが、その口ぶり的に、私以外にも精霊師がいるのですね」
「はい、それがお願いしたいことなんです。どうか、
「甥???」
「貴様!!!リリィにそんな危険なことをしようとしていたのか!!!!!」
ガクドは立ち上がりダンゲルに向けて剣を抜こうとしている。リリアンは慌てて止めるとダンゲルの話を聞くことにする。
ダンゲルは
その甥は精霊師として力が芽生えていたため、彼の持つ精霊、木の精霊ードリュアスーが知らせてくれた。そして居場所は突き止めたがあと一歩のところで警備隊に見つかり、その場所が出禁となってしまったと言う。
「それで、私に中に入って甥の子を救えって言うのね。でも私はその子の顔さえ知らないわ」
「顔の肖像画はある」
彼が見せてくれたのは木の板で描かれた少年の姿。その子は狼のような耳をしており、銀色の髪をしているのがわかる。姿はゲームの姿とそのままだと感じると少しだけホッとする。
「この子が…甥くんですね」
「はい、名前をギルと言います」
「髪が銀色の狼…もしかして幻獣種ですか?」
ガクドが聞くとダンゲルは頷いて答える。しかも幻獣種でも幻と言える白狼だと言う。白狼の力と精霊の力がうまく使えるようになれば、それは強大な力になると感じる。
「ギルの救出…その精霊の力を貸してください!!!お願いします!!!」
「わかりました」
「リリィ!!!」
「お兄様、大丈夫です。今はお兄様が近くにいます。何かあれば、お兄様が助けてくれますでしょ?」
リリアンはガクドの手を握ると彼も観念したのかダンゲルの依頼を受け入れることにする。ダンゲルからその闇オークションに入るための通行書をもらう。
リリアンは公爵家とバレないようにするためにそれなりの貴族の格好をする。髪色でバレるかもしれないため、ダンゲルから髪色と声を変える魔法薬をもらうとそれを飲み込み、オークションに潜入をする。
「リリィ、危険だと思ったら精霊を使って逃げろよ??」
「大丈夫ですよ、お兄様もバレないように」
ガクドはダンゲルと一緒に闇オークションを暴く書類を探しに向かう。通行書を使って中に入ると多くの貴族でいっぱいになっている。これほどまで奴隷を求める彼らにリリアンは胸が苦しくなる。
奴隷は法律で禁止になっていると言うのに、それでも続けているのは頭に来る。ここにいる人たちをイフの炎で焼き尽くしたいとも思う。しかしそんなことしたらギルを救うことができなくなってしまう。貴族の中には見覚えのある貴族がいることに苛立ちを覚える。
騒がしくなってくる建物の中は貴族でいっぱいになっていく。すると木のハンマーで机を叩く音が聞こえ、オークションのスタートを合図する。
『紳士淑女の皆様!!!!お待たせいたしました!!!!!!これより、
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