第34話 姉弟子
ヒリリトンはヘラヘラ笑いながら説明すると、リリアンと目線を合わせる。今度は自分が質問する番だと言わんばかりの目線に何が来ても答えるつもりにリリアンはなる。
「さて、今度はこちらからの質問に答えてもらうよ。君は、どうして精霊を使える?」
「私の母が精霊師だからです」
「精霊師???」
「はい、名前を…ネイレーンと言います」
そのことにヒリリトンは持っていたカップを落として割ってしまう。リリアンはそのことに驚いてしまう。
「大丈夫ですか???」
リリアンは火傷をしていないかと思いヒリリトンを見つめると彼の目には涙が浮かんでいた。その目には思い人を映しているような感じがある。
「君は…姉様の…!!!」
ヒリリトンはリリアンの左手を握ると、ずっと探していた人の手に触れるように触り、頬に持って行く。彼は泣きながらだが、リリアンに説明してくれる。ネイレーンは同じ師匠から魔法を教わった弟子同士らしい。ネイレーンの方が年上だったために、彼女のことを姉様と呼んでいたらしい。
「待ってください!!!ヒリリトン様今いくつなんですか⁈」
「どうして???」
「いや、戦争の時代に…アーティファクトを造っていたとおっしゃっていたので…」
「だって、僕は何度も転生しているから、魂はかなりの年齢だけど、体はまだ29歳ぐらいだよ???」
「転生っ???????!!!!!!!」
平然と言いのけるヒリリトンは微笑みながらお茶を飲んで、飲み干したカップにお茶を注いでいく。リリアンは驚いている姿を無視するように、ヒリリトンは無くなっているカーラのカップにお茶を注いでいく。カーラとヒリリトンはお茶を飲み続けている姿にリリアンは違和感がある。
「ところで、このお茶は一体…」
「私はすいすい飲んでしまっていますが、公女様はそこまで減っていませんね…」
「このお茶は魔力を回復させるお茶でね。公女様が減らないのはそのせいですね」
「待ってください!!!公女様は…!」
「先ほど申し上げましたが、私は精霊使いです。魔力を持っていないんです」
「そんな…!!!」
「ずっと黙っていて申し訳ありません」
あのアカデミーのパーティーの時にも話していたが、カーラはそれどころでは無かったようで、リリアンの話を聞いていなかった様子。
「いいえ…。しかし公女様が精霊使いだとは…精霊使いはずっと昔に滅んだと思っていました」
「精霊使いは古くから皇帝の奴隷でしたので、身を隠すために精霊師は滅んだことにしていたのです」
「そうだったのですか…納得です!」
「話は済んだかな????」
ヒリリトンはカップにお茶を注ぎながらリリアンに聞いてくる。先ほどカップを落としていたはずだと言うのに、なんだか落ち着いている。
「はい、すみません」
「いいよ、まさか…姉様に娘が居るとは思っていなかったよ」
「ヒリリトン様、どうか私が精霊師だと言うことは内密に」
「もちろんだよ、誰にも言ったりしないよ。ところで、姉様は今どこに????」
リリアンはそのことに戸惑いを見せてしまう。カーラはすぐに答えないリリアンの姿に違和感を感じる。リリアンはこのまま黙っていたら余計関係が関係が悪くなる感じがするため、リリアンは隠すことなくネイレーンのことを話す。ネイレーンが借金の肩代わりとして公爵家に売られたこと、ネイレーンが何者かに殺されたことを話す。
ヒリリトンはそのことを聞いて、現実を受け止めれない様子を見せると、すぐに怒りを見せる。負の気配を感じると息が詰まるような感覚が押し寄せてくる。ヒリリトンによって首を絞められるような気配に過呼吸になりかける。
ヒリリトンはその気配を一瞬で隠し、リリアンたちに謝罪をする。リリアンは首を振って訂正をする。
「すまない、公女さん…カーラ嬢」
「いいえ、謝罪をするのはこちらです」
「ネイレーン…姉様は、誰かに殺されたんだな」
「はい、何も、情報を漏らすこともなく…」
するとリリアンの断りもなくアルディンが姿を見せる。リリアンに謝罪をするとアルディンはネイレーンのことを話す。
「
「いいよ、お母様の最後のことでしょ」
「はい、実は、ネイレーン…前
その言葉に、ヒリリトンはネイレーンの姿と合致する。彼女はとても心優しい人、昔のヒリリトンはたくさんの人を殺してきた。魔塔に住んでいるだけでヒリリトンは差別され続けてきた。その人間たちをヒリリトンは殺して来た。しかしネイレーンはそれを悪だといい、ヒリリトンに人を恨まないようにと言われ続けていた。
ネイレーンがヒリリトンに残した言葉、もしかしたらネイレーンを殺した人物を恨み、闇の魔導師にならないようにと願ったのかもしれない。ヒリリトンはネイレーンの言葉通り、人を恨まないようにしようと心に決める。
「アルディン、リリアン様。ありがとう、姉様を殺した奴は恨まないようにするよ」
「そうしていただけると助かります。ところで、魔塔にやってきた騎士たちは殺して来たのですか????」
「そんなことしてないよ、どうせ帰りに山賊にでも襲われたんだろ。この辺、山賊多いからさ。だから君たちも帰る時は気をつけるんだよ〜」
軽く言われるリリアンたちは帰りが怖く感じる。馬車がある場所までヒリリトンに送ってもらうと、リリアンたちは帰ることにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます