第32話 ヒリリトン

 門の前で誰かが出てくるのを待つカーラとリリアンは物音しない塔を見つめ続ける。


「誰も出てこないね…」


「では、押し通りますか???公女様」


 カーラはライトを呼び出して雷技を出そうとしているが、何かがおかしい。我々が来るのを邪魔をしておきながら、魔塔前に仕掛けをしていないのはおかしい。しかし、おかしなことはもう一つある。こんな森の奥にあり、存在感抜群の塔なのに、誰も気が付かない。リリアンは塔を見つめるとアルディンが耳打ちをしてくる。


主人あるじ様、この魔塔にはまやかしのまじないが掛けられております。そのため、外部からは見えません』


『そう、ありがとう。それももう一つ、この魔塔の門には何かかけられてる???』


『そうですね、これは反射の魔法。攻撃をすれば2倍の力で己に返って来ます』


『攻撃は無理ね、声をかけてみましょう』


 リリアンはカーラに門を攻撃するのをやめさせる。門に反射魔法が掛けられているのを説明するとカーラは納得してくれる。


「えっと、魔塔の主人あるじさん!私たちはあなたに聞きたいことがあって来ました。どうかこの門を開けてください!!!!」


 しかし魔塔から返事は無い。リリアンは門に触れると電磁波のようなものが手を刺激する。ヒリリトンのみが解除できるものなのだと感じ、リリアンはもう一度聞く。


「ちょっと!!!聞いてます⁈」


「公女様、彼らは部外者をほとんど入れません!!!ここは一度帰りましょう」


「そんなの、彼らの思う壺よ。彼らはそうやって今までやって来たのだから」


 監視ゴーレムで二人を見つめるヒリリトンは図星を突かれて苦笑いになる。だからと言ってあの二人を入れるつもりは無い。前にも、このように許したために貴重な魔法具を盗まれたことがある。今回だけは許すつもりはない。

 ヒリリトンはリリアンたちを追い返すために緊急時にしか使わなかった魔法を発動させる。それは魔塔が危険だと感じた時に護衛目的で作った戦闘ゴーレム。彼らを見ればあの二人も引き返すと思う。

 リリアンたちは門前で待っていると戦闘ゴーレムが姿を見せる。森の中も出てくるゴーレムたちにリリアンは戦闘になることを予想する。このようなものになるとは思っていなかったリリアンはため息が漏れる。


「公女様、いいですよね????」


 カーラは戦いたいお年頃なのか興奮状態になっている。最終的にこうなるのかと思いながら心の中でグレンに謝罪する。

 リリアンはイフとアルディンを呼び出すと戦闘を始める。イフは炎魔法を使ってゴーレムを破壊していく。森からやってくるゴーレムをアルディンは光の剣を生み出して切断していく。ライトは雷魔法で通電式の魔法で中の部品を破壊して倒していく。

 戦闘は長時間を要した。体力の限界が近いカーラは膝をつくとライトは魔力切れを起こして消滅をしてしまう。


「カーラ嬢!!!!!」


 カーラの前にゴーレムが彼女目掛けて拳を振り下ろす。カーラは思わず目を閉じると体に痛みが来ないことに違和感を感じて目を開けるとリリアンが影になるようにしてゴーレムの腕を受け止める。マナ呼吸で体の身体能力を強化して精霊の魔法陣を生成して防護壁を作り出す。


「カーラ嬢、大丈夫ですか???」


「は、はい…!!!」


「あとは私が相手をします。カーラ嬢は休んでいてください」


「しかし!!!公女様が!!!」


「私はまだ魔力が残っています。しばらくは持つので大丈夫です」


 リリアンはゴーレムを吹き飛ばす。ゴーレムは宙を舞い、地面に落ちると崩壊して動かなくなる。リリアンは念話を通じてイフとアルディンに話しかける。


『二人とも、あとどの具合できる???』


『そうだね、あと1時間ぐらい???』


『私はあと1時間と少し』


『私のマナの力がかなり少なくなってきた。二人ともこの状況を一変できる方法とかない????』


『あるって言ったらあるけど…』


『何????』


 イフは少し渋るが上級精霊が使える技、上級精霊魔法セリフ・リーンと言うものがあるらしい。しかしその技を使えばリリアンのマナを一瞬で奪ってしまうらしい。


『ある程度片付けることができるのならいい!!!好きに使って!!!!』


『後で文句言うなよ????!!!!』


『行きますよ!!!!』


 イフとアルディンはリリアンの前に戻ると上級精霊魔法セリフ・リーンを発動させる。イフの炎は漆黒の炎に変わり極大の炎の球が生まれる。


「いくぜ!!!!!太陽神の破壊ラー・デキドロン!!!!!!」


龍神の星降らしシャイン・ボルテクス!!!!!!!!」


 二人の上級精霊魔法セリフ・リーンは監視ゴーレムまでも破壊してその場に地ならしを起こす。そのことに魔塔にいる全ての魔道士は慌てふためく。ヒリリトンはその力を見てネイレーンを想像する。よく思い出すとその光の精霊はネイレーンが連れてた精霊にそっくり。ヒリリトンはまさかと思いながら魔塔の出入り口の扉の前まで急ぐ。

 強力な力にリリアンは足に力が入らなくなる。マナをかなり使ってしまったため、限界に近い。なんとか森を燃やさなかったことに安堵するが、リリアンは二人に感謝をする。二人はリリアンの元に近づくとリリアンのことを心配する。


主人あるじ様!!!!大丈夫ですか????」


「ありがとうイフ、心配してくれて…。なんとか大丈夫よ」


「無理しないでくださいね…」


「アルディンもありがとう」


 リリアンははにかみ笑いを見せるとまだゴーレムがやってくる。全て倒せたわけではないため、リリアンは奥歯を噛み締めると突然ゴーレムが止まる。振り返ると扉が開かれて緑色の髪をした青年が立っている。


「中に、入ってくれ」

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