第29話 アカデミーのパーティー
馬車に乗り込んだリリアンとグレンは軽く談笑するが、すぐに今回起きた事件についてのおさらいをしていく。
「公女様、まずお伝えしなければならないことは、アイリス嬢についてです」
「はい…」
リリアンはグレンにアイリスが自分を恨んでいたことを話す。アーサーの誕生パーティーの時に、彼女に恥をかかせたことを話すとグレンは顔を濁らせる。今回の事件はリリアン本人が招いてしまったことを話すが、グレンはそれを否定する。
「公女様、はっきり言って、それは違います」
「しかし、私がアイリス嬢を…」
「そんなことありません!公女のあの態度は、間違ったものではありません!!間違っていたのはアイリス嬢です!!公女に喧嘩を売った…つまりネルベレーテ公爵家に喧嘩を売ったに過ぎません」
「そう…でしょうか???」
「そうなんです!!!階級が下の者が、先に挨拶をしないといけないのは基礎中の基礎です!!!できるのでしたら…俺が彼女の両腕を切り落としてやりたかったと言うのによ…」
「グレン様⁈」
「冗談ですよ」
微笑んでくれるグレンだが、先ほどの顔はマジの顔だった。リリアンは彼も怒らせないようにしようと考えると、冷や汗が止まらない。
「話を戻しますが、そのアイリス嬢は逆ギレをしていたみたいで、公女をどうやって貶めるかを考えまくっていたらしいのです。ですが、アカデミーに向かった時の記憶がないらしく、学園にいたことに酷く驚いておりました」
「と言うことは、アイリス嬢が持っていたアーティファクトは、アカデミー外で手に入れたことですか…」
「そう言うことになります。それと、記憶が無い状態でしたが、貰った人物の特徴を一つだけ覚えていました」
「特徴ですか⁈」
リリアンは前のめりでグレンを見つめると、グレンはそのことに驚き、後ろに後退しながら少しだけ頬が赤くなる。赤裸々になっているグレンに、リリアンは令嬢としてはしたないことをしたと思い、ちゃんと腰掛ける。
「えっと、ゴホンっ!特徴とはなんでしょうか…?」
「あ、はい…//////その特徴が…手の甲に蜘蛛の模様があったということです…/////」
「蜘蛛???」
「はい…それが、スパイダールス団だと言うことです」
「それって!!!!」
「はい、公女様が捕えることに協力をしてくださったあの一団です。やっと彼らが見せた尻尾を、掴んできたのです!!!このままトカゲのように尻尾を切られたくありません。せっかく掴んだものを…手放したくありません!!なので公女様、どうかご協力をお願いいたします!!!!」
「そ、そう言われましても…」
グレンはスパイダールス団に恨みがあるのかすごい剣幕でリリアンのことを見つめる。すると業者が外からノックをして到着したことを伝える。グレンはこの話を一度お預けにして、パーティー会場に向かう。
「後で聞いて欲しいこともあるので、またお時間をください」
グレンは先に馬車から降りるとリリアンをエスコートしてくれる。リリアンはその手を取ると二人でアカデミーのパーティー会場に向かう。パーティー会場は異空間に存在して転送魔法によって向かうことになっている。
リリアンとグレンは一緒に転送魔法で会場に向かう。到着した会場には学生が揃い、パーティーを楽しんでいる。
「数は…やはり少ないですね」
「あのようなことがあったのに、これだけ集まっただけでもいいと言えるだろう」
二人は会場に入ると、リリアンの元にカーラがやってくる。カーラの後を追いかけてヘルミーナやって来ていた。カーラと話をしていたように見える。ヘルミーナはリリアンにあいさつをして、カーラの隣に立つ。
「公女様も来ていたなんて、嬉しい限りです」
「カーラ嬢も…それと、ヘルミーナ嬢も来ているとは思いませんでした」
「私は、メルディーナ様への感謝の言葉を伝える者として選ばれておりましたので…」
「そうだったの…それと少し二人で話したいことがあります。ヘルミーナ嬢をお借りしても」
「はい、どうぞ」
リリアンはヘルミーナを連れてとある場所に向かう。そこは静寂の間と呼ばれる場所。そこは生徒同士で話し合いや秘密の話をするのに持って来いの場所。まれにその場所でいちゃついている人もいるらしい。
この場所をリリアンが知っているのはアーサーにこの場所に呼ばれることが多くあったため。アーサーはリリアンをここに呼んでは、見知らぬ女といちゃついているのを見せられた。アーサーはリリアンに色っぽく誘ってほしかったのかはわからないが、今となればもうどうでもいい話。
リリアンとヘルミーナは一室に入るとリリアンは椅子に腰かける。反対側の椅子へ、ヘルミーナに座るように言うと、ヘルミーナはそれに従い、腰かける。
「ヘルミーナ嬢、突然呼び出してすみません」
「いいえ!公女様に謝られることなんて…!!」
「それと、アイリス嬢から私を助けてくださり、ありがとうございます。まずはそれが言いたかったです」
「そんなの…親衛隊になったので当然です!しかし…非公式ですが」
「では、今日から公式になります。それを私が許可します」
「いいのですか⁈」
「もちろん、ヘルミーナ嬢に私は助けられたのですから」
リリアンはヘルミーナを信じることはできない。だが、彼女はアイリスからリリアンを護った。それだけは信用できること。いずれ裏切るとしたら、自分がわかるように手の上におきたい、ただそれだけ。
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