第十一章 ③コン太の動向(アクション・行動)
レンジは目を泳がせる。
武蔵野うどん『
同席しているのは
昨晩輝章から
【明日、午後三時からの撮影前にランチミーティングをお願いします。指定場所の地図を
打ち合わせの指定場所こそが『古久や』だったのだ。
古久やを訪れたのは今日で二度目だ。二十三年前のあの日(女子中学生レイプ)、以来だった。
それにしてもどうにも落ち着かない。
若気の至りでは済まされないであろう二十三年前の記憶が否応なしに呼び覚まされてしまうのだ。
後ろめたい過去があるからこそ飯能や所沢のエリアは警戒していた。つい最近まで極力近づかぬよう
午前十一時。
いつもは開店から閉店まで行列の絶えない人気店のはずだ。だが今日は違和感を覚えるほどに
入口から店内をそっと
「お待たせして申し訳ありません。途中道路が少し混んでいまして……」
輝章が笑顔を向ける。
「ああ、レンジさん。遠くまですみません。どうぞ、お座りください」
「はい。……あれ?
「急にお誘いしたのですが。羽衣さんも電車で来てくださいました」
羽衣は
「レンジさん、ビックリした? 監督がレンジさんと『古久や』でランチミーティングするから一緒にどうかって誘ってくださったの」
「そうか」
「うふふ。レンジさんを驚かそうと思って来ちゃった! 羽衣の家は所沢だから飯能まで電車で三十分くらいなの!」
レンジは顔をほころばす。
「まさか羽衣が来ているとは。……驚いた」
「嬉しい?」
「ああ。もちろん嬉しいよ」
仲良さそうなふたりの会話を
「レンジさん、はじめましてえ!」
新人俳優かなにかだろうか。長身の美青年だ。
「おいらは輝章くんの遠い親戚の
「あ、ああ。輝章監督のご親戚でしたか。レンジです。よろしく」
羽衣は
「
「ないないないない! 興味ない! 輝章くんに誘われて映画撮影の見学に来ただけ」
「ええ? そうなの? 絶対人気出そうなのに」
「そうかい? だけどおいらは演技なんてできないからねえ……。『名俳優』を尊敬するよ! だってさあ。別人格を演じ切るんだからさ」
「うん、ホントそうだよね! レンジさんは確かにすごいかも! 役が入り込んでくる『
「へええ? それじゃあ羽衣も
「んん? どういうこと?」
羽衣は首を
「イヒヒ! ま、そんなことより。肉つゆうどん、楽しみだねえ!」
輝章が
「注文は四人分済ませてあります。今のうちに打ち合わせを済ませましょう」
……ランチミーティングはものの十分程度で終了した。内容も単簡だった。
レンジは何だか
この程度の打ち合わせなら撮影現場でも
丁度良く四人分のお膳が運ばれてきた。あの日と同じ『肉つゆうどん』だ。
羽衣は「わあ! 美味しそうっ!」そう言って瞳を輝かせる。
在狼くんはどうやら相当の早食い大食いらしい。あっという間に大盛りを
食事のさなか。輝章から
「レンジさん。肉つゆうどん、とても美味しいですね。以前と変わらぬ優しい味ですか?」
「え…………?」
食事が終わり輝章が会計を済ます。
その途端に。
「レンジさんはお車ですか? 迷惑でなければ撮影現場まで同乗させていただけませんか? 羽衣さんと
監督である輝章にそう言われて断る理由はなかった。
「もちろんいいですよ。どうぞどうぞ!」
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