第4話 欧米は全滅

 海外のネットニュースから、世界各国では、大変なことが起きているというニュースが入ってきた。


 太平洋以外に落ちた隕石の中に、とんでもない昆虫の卵があったらしい。それが孵化し、1日で1匹から数万という卵が産まれ、それが孵化すると言っていた。


 部屋の壁にあった1つの卵から、朝日がさす中で、バーと小さな蜘蛛のような虫が散らばり、いきなり走り始めて、近くの動物の口に入っていくんだって。気持ち悪い。そして、あっという間に内臓を食い潰し、その夜中には卵を数万と産むって、怖いわね。


 この虫は、アッと言う間にアメリカ大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸と広まり、各地では、阿鼻叫喚の状況だったと聞いたわ。次々と町は滅びて、朝、なんか虫がいると気づいた時には、静かに人たちは血を吐いて死んでいくみたい。


 このことがニュースになり始めると、人々は、どこに逃げていいか分からないまま、北に逃げていったらしいけど、虫の方が早い。虫は小さく、飛ぶので、ビルに逃げても、車に乗っていても、いつでも入ってくるらしい。


 車で逃げていて、横に乗っている家族の首に何か小さな虫がいると思ったら、さっと口に入って、あっと思った途端、血を吐いて死んでしまう。それと同時に自分の胃に激痛がして運転ができなくなり、前の建物に激突という感じらしい。


 バーナーで焼こうと思っても、小さくて飛んでいるし、ターゲットが定まらないんだって。そんなこんなで、あっという間に近くに押し寄せ、考える間もなく横に虫が来ているという状況だと聞いたわ。


 最初は蚊のように小さいけど、内臓に入ると、血とか肉をたっぷり食べて、半日ぐらいで、ゴムのような体がテニスボールぐらいの大きさにまで膨れ上がり、体を破って出てくるって怖くない。


 まず、体内にいる時に、その人ごと焼くということも考えられたらしいけど、まずさっきまで一緒だった人を焼くことに躊躇いがあったのと、そんなことを考えているうちに虫が体に入りこみ、そもそも、そんなことはできなかったんだって。


 防護服とかを着ていても、衣服を破ってくるのか、隙間があるのか、どこからか入ってきてしまうらしい。また、体から出てきた時に殺すという手もありそうだけど、その頃には、周りに生き残っている動物は全くいなくなっているので、生き延びるという生態系であったらしい。


 ただ、この虫は塩水があると生きていけなかったらしくて、大陸から出ることができず、津波の被害を被った日本などには入らなかったんだと言ってた。その意味では、津波の被害を受けたけど、日本では人間は生き延びることができたのね。


 1ヶ月ぐらい経った時に、オーストラリアや日本などの島国を除き、動物はいなくなったらしい。ただ、逆にこれが原因で、隕石から広がった虫も食べるものがなくなり、消滅することになったみたい。


 繁殖力が高い一方で、地球の環境では気温が高く、必ず孵化するため、卵のままで存在できなかったことがラッキーだったらしい。


 この昆虫の生体を調べる間もなく、一部の地域を除き人類はいなくなってしまった。だから、人類は知りようもないけど、実は、別の惑星から彗星が拾ってきたものだった。


 そこでは、メタンの海があり、大きな生物もいるけど、0°Cを超えるのは年に1ヶ月程度で、あとはマイナス180°程度の極寒の星。そこで、マイナス180°C以下では卵でしか存続できないこの昆虫は、短期間に急激に繁殖する習性を身につけた。


 また、1ヶ月程度の間に食べられずに過ごせた生物も多く、残りの期間は生活を謳歌したので、バランスは保たれていた。ただ、地球では、この昆虫にとって必ず卵から孵化してしまう気温で、海を超えることができなかったことが限界となり、死滅に向かっていった。


 北極などに彗星の破片が落ちなかったのも幸いだった。いずれにしても、塩水に満ちた地球が幸いしたといえる。


 世界各国から、虫から逃げろという映像も含めて入ってきたが、そのうち、ネットニュースも流れなくなっていった。通信が途絶えたのか、ネットニュースを流す局に人がいなくなったのかはわからない。


「これはひどい。日本だけが大変と思っていたが、これでは日本とか島国だけが孤立して生き残ったということだったんだ。なおさら、まずは、ここで安心して暮らせる環境を作らないと。」

「そうね。逆に、地球全体がダメにならなかっただけでも幸せと思うべきなのかも。」


 悪夢にうなされる夜はなくなったけど、世界は広くても、今生きている人は僅かで、将来への不安に包まれた。

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