第11話・友人達
「お兄さま、ルーナに会わせてくれてありがとう」
「わたし達、いつも心配していたのよ。あなたはどうしているのかと気になっていたの」
二人は王家に嫁いだわたしの身を案じていてくれたらしい。ミランは妹のダリアの言葉に頷くと、側に控えていますからとベランダから出た。この場にはわたし達三人だけとなる。
「元気そうで良かった」
「少しやつれたのではなくて?」
「大丈夫よ。でも、そんなにやつれてみえる? カトレア」
王妃や、殿下が全然使いものにならなくて、その分、わたしが穴埋めしているなんて、本当のことは言えやしない。苦笑するのに留めた。言えばきっと二人とも、自分の事のように怒ってくれるのは分かっているけど、心配はさせたくなかった。
カトレアは、前王妃さまの実家であるシフォン侯爵家の令嬢で、金髪に碧眼をした美人。前エルメリンダ王妃さまの姪にあたり、エルメリンダさまの若い頃に良く似ていると言われている。わたしは前王妃さまを慕っていたので、文句なしに彼女が大好きだ。
そしてもう一人、王太子とは乳兄妹であり女官長の娘であるシノワール伯爵令嬢ダリア。柔和な愛らしい顔立ちの彼女も母親同様、わたしにとっては大切な存在。母親と同じ淡い茶色の髪に、新緑の瞳をした彼女は、ベランダから広間の方を振り返って言った。
「あら。あの御方,今宵は女官としてではなく、ご令嬢として参加されているのね?」
彼女の視線を辿った先に、銀髪の彼女の姿が見えた。そして彼女を取り巻く男性の姿も。学園で良く見かけた光景だ。その顔ぶれを見てカトレアは美眉を潜めた。
「バスク子爵令嬢は、学園の頃の殿下との噂が大きく尾を引いて未だ婚約者がいないから、必死にお相手を探されているという噂だけど、あれでは尚更、縁遠くなるわね」
ジータを取り巻くのは、宰相の甥であることを鼻にかけていた、赤毛に緑色の瞳をしたグランノア伯爵の息子ザイル。焦げ茶の髪に黒い瞳をしているのが、外交官の父親を持つプレスター子爵の息子キリオ。茶髪に青い目をした豪商のサーパス男爵の息子ランス。そこにテレンツィオも加わっていた。わたしを気遣うような素振りでもして壇上を降りた彼は、彼らを見つけて合流したのだろう。あるいはジータと、約束でもしていたか。
「彼らも婚約がなくなったようだから、もしかしたらあの中の誰かが、ジータと結びつく可能性は高いわね」
「そうなったら今は目が曇っている殿下も、ルーナに目を向けてくれるようになるかしら?」
カトレアとダリアが思い思いに言う。ジータの取り巻き化としている、テレンツィオの友人3名は卒業と同時に、婚約者達から見切りを付けられて、婚約解消となっていた。
王太子の場合は、わたしとの婚約は王命で決められたもので、当時は解消できない問題もあった。しかし、あれから状況は変わった。
陛下の再婚により、テレンツィオの王太子の座は危うくなってきたのだ。陛下は現王妃を寵愛している。子育てはほぼ使用人に丸投げでも、老いてから迎えた王妃は可愛いし、その王妃が産んだ子を出来ることなら、王位に就かせたいという野望が生まれてきた。
その為、テレンツィオの失態を望んでいる。その思いを隠すこともない。彼と陛下は不仲だ。
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