第7話 07 - ぼくたちのぼうけんはこれからだ -

07 - ぼくたちのぼうけんはこれからだ -



「わぁ・・・」


あれから10日、ホテルはすっごく快適だったけど、ステーションの中を歩いていると行き交う人々の視線が突き刺さって、・・・時には露骨に避けられたり、注文した食べ物がわざと出されなかったり・・・もう慣れちゃったけど・・・お馴染みの出来事に心をすり減らしていると、おじさんから僕の宇宙船の改修が終わったと連絡がありました。


もう早く一人になりたい、・・・そう思って滞在していたホテルを後にして宇宙船を改修してもらっていたドックに向かうと、そこにはほとんど新品のようになった宇宙船・・・これ、僕の・・・だよね・・・。


「おぅ、来たか、どうだ!、綺麗になっただろう」


「・・・はい、これ、外装を全取り替えしたように見えるんだけど・・・」


「そうだぞ、もう老朽化がすごくてな、この状態で宇宙に出たらそのまま棺桶になりそうだったんで、全改修した、もちろん元の船の良さは可能な限り残してる、気に入ったか?」


「はい、凄いです・・・まるで新品の船みたい・・・」


「はは、喜んでくれておじさんも嬉しいぞ、中を案内しよう」


「え、嘘、あんなに汚かった通路も、倉庫も、管制室も・・・すっごい綺麗!、壁の塗装が明るくなって全体的に上品でおしゃれになってる!」


「この内装はうちの会社の女性デザイナーにやってもらったんだ、豪華客船の内装も手掛けてる優秀な奴だが、こういう洒落た内装も得意としてる、それから、これを見ろ」


「わぁ・・・壊れてたニート2000・・・「N.I.T.T.システム」、直ってる!」


「人工知能を使った操舵サポートシステム、古いプログラムだが当時のままの性格を残してある、俺も昔はこいつと喋ったことがあってな、昔も今もムカつく奴だが・・・これは俺が残すように強く技術者に要求した、嫌なら電源を切っておけば大人しくしてるだろ、使うか使わないかはお前の自由だ」


「いえ、ありがとうございます、この子、僕が小さい頃、この宇宙船に忍び込んでよくお喋りしてたの、その時はもう宇宙を飛んでなかったけど、お父さんと一緒にした冒険のお話、いっぱいしてくれたんだぁ」


「そうか、じゃぁ電源入れるぞ」


ピ・・・フォーン・・・フォーン・・・


「おはよう、シエル、久しぶりじゃねぇか、相変わらずシケた面してやがんな」


「わ・・・本当にニートだ!、こんにちは、久しぶりだね、ニート、これから一緒にいっぱい冒険しようね」


「チッ・・・仕方ねぇから付き合ってやらぁ・・・、さっさとマスター登録しやがれこのノロマ」


「うん!、網膜と血液の二重認証だね、唇を噛んで・・・、これでいいかな」


「あぁ、上出来だ、昔みてぇにぐずぐず泣いてっと宇宙に放り出すから覚悟しやがれ」


「フフ・・・よろしくね」


「それからそこに居るエッシャーのクソ野郎、しばらく見ねぇ間に老けやがったな、俺様を復活させてくれた事だけは褒めてやるぜ」


「・・・相変わらず口悪いし腹立つ奴だな、・・・こいつ・・・」






「じゃぁ、・・・お世話になりました・・・」


「あぁ、・・・本当に宇宙船を傷つけちまった事、悪かったな、何か困ったことがあれば連絡先を登録してあるから遠慮なく俺を頼れ」


「はい、ありがとうございます」





「行っちまったか・・・あんな良い子放っておいて、お前は今どこで何やってんだよ・・・」





「さて、これから急いで・・・って言ってもまだ到着期限には余裕あるね、荷物を届けて、・・・急げば僕の誕生日までにリンちゃんの所・・・ローゼリア星のステーションに戻れるけど・・・少し遠回りして隣の星系まで足を伸ばそうかな、あそこのステーションは卵生のリザードマンが中心の所だからベンダル・ワームの宿主、そんなに嫌われてないんだよね、本当はダメなんだけど首輪や腕輪を服で隠せば宿主だってバレないし・・・」


「・・・おい、シエル、力が欲しいか?・・・」


「え、いや欲しくないけど、・・・どちらかと言うとお金が欲しいかな・・・、急にどうしたのさニート」


「お前にこの船の本当の力、教えてやるからありがたく思え」


「何かな、・・・普通の民間小型宇宙船・・・だよね」


「今まで気付かなかったのかこの間抜け、当時最新鋭だった武装と時空転移機能を搭載したこの俺様の本当の姿・・・」


「は?、何それ・・・武装?、時空?」


「手頃な小惑星砕いて見せねぇと信用ならないってか、上等だ、やってやらぁ、・・・どれをぶっ壊せばいい!」


「わー、そんなのやめて!、ダメ!、ゼッタイ!、僕捕まっちゃうよぉ」


「その時は任せろ、俺様が宇宙の果てまで逃がしてやらぁ!」


「フフ・・・、じゃぁその時はお願いしようかな、それから、お父さんとお母さんが消息を絶った惑星も、・・・近くだからちょっと寄って行こう、何か分かるかもね、さて、僕達の冒険はこれからだ、よろしくね、ニート」


「おう!、任せろ、マイマスター」





スペース・シエルさん 〜それは紛れもなく、シエルさん〜


「完」

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