13話 冒険者

受付の人について行くと、ギルマス部屋と書かれた看板をぶら下げた部屋についた。

「ギルマス、少しいいですか!」

「ん?おお、入ってこい!」


「「失礼します」」

え?なになに?

この時代の冒険者登録ってこんな感じなのか?


ギルマス部屋にはスキンヘッドのマッチョが椅子に座って事務をしていた。

「おぅ、それで用ってのはそこの兄ちゃんか?」

「はい、それなのですがこの方の討伐履歴を見ていただきたいのです」


討伐履歴?

……あ!もしかしてあいつか!


ギルマスはコピーしたらしい俺の討伐履歴を見て椅子がひっくり返る勢いで驚いていた。

「あ、あんた黒色を討伐したってのか!」

あぁ、やっぱり……。

「えぇ、まぁ私一人ではなく従魔達と一緒にですが」

「それでもやべぇって俺たちの街マーファでも黒色を殺れるのはいねぇってのに!」

「ハハハ……ありがとうございます」


やっぱり黒い魔獣はこっちでも特別か。

しかし……これがどう作用するか分からないな。

強さの証明としてなら十分すぎると思うが、めんどうな依頼とか押し付けられても嫌だしなぁ。


その後、俺にソファで待ってろと指示を出したと思ったら猛ダッシュでどこかへ飛んでいってしまった。

「わ、わりぃ、待たせたか」

「あ、いえ大丈夫ですよ」

どうせ、やることがない時は行雲流水を鍛えてるし。


「それでなんだがよあんた、冒険者についてはどんくらい知ってんだ」

「うぅん……田舎に住んでいたので余り……」

「そんじゃ、説明してくから聞いてくれ」


ギルマスから聞いた冒険者についてはまとめるとこういう話になる。

冒険者はいくつか種類がある。

まずは普通冒険者。

こっちはギルドと契約して様々な依頼を受ける。

まぁ、ファンタジー作品なんかでよく見る方の冒険者だ。

こっちはHランクから初めてAランクまで進めることができる。

しかし、Aランクに上がるまでには相当な時間がかかる。

当然と言えば当然なんだが、強さだけで上に上がれるほどガバガバ組織ではないため、魔獣や植物の知識、リーダーやパーティ参加、大規模な作戦への参加経験なんかがなければ昇級はできない。

そして、ここの地域は比較的に多いとはいえ、大規模な作戦なんかそうそうあるものでもない。

このことから、Aランクに上がるにはマーファでも五年以上かかってしまう。


そこで出てくるのはもう一つ方の冒険者だ。

こちらは特別冒険者と呼ばれている。

こっちはギルド以外にも貴族や有力な商会なんかとも契約を結んだ冒険者のことだ。

言ってしまえばスポンサーが付く。

こっちはいろいろ全部すっ飛ばしてAランクすら超えたSランクになることができる。

こっちは経験なんかなくっても強い奴が欲しいと言っている貴族が多いことからできたらしく、普通冒険者とは比べ物にならない程の給料と安定した地位を手に入れられる。


「はえぇ、そんなものがあるだなんて知りませんでした」

「おう、それでなんだがなあんたには特別冒険者になって欲しいんだ」

……これは、どうなんだろう。

有力な人間がバックにいるというとはかなりののアドバンテージになる。

しかし、こちらとしては剣鬼を見つけてとっとと鍛えたいしめんどうな貴族に捕まるのは避けたい。


「そうですね……やはり、私と契約してくださるお方を知らないので直ぐには決められませんね……」

「それなんだがさっき、ギルドの職員にダッシュでお前のことを書いた手紙を届けさせたからよ明日にでも会えると思うぜ」

「……わかりました、では明日会ってから決めさせていただきます」


そういうことで話しが終わったためとりあえず街をぶらつくことにした。

マーファの街は本当にきれいで壊れている場所なんでほとんどなかった。


しっかし、やることなくなっちまたなぁ。

剣鬼の情報を集めようにもまずこの街にいるかも分からないし……。

金もないし。


もういい、やることない!研究所戻る!

俺は人気の無い道に入り研究所の中に戻った。


その日はシルバー共々行雲流水の特訓に付き合わされた。

あいつら飲み込みが早過ぎないか……。


朝になったのでホテルで準備を整えてシルバーと一緒に外に出る。

……そんな嫌そうな顔しないでくれシルバー。

しょうがないだろ昨日あんなに目立ったのに今日いないは無理だって。


「おお、来たか兄ちゃん早速で悪いが一緒に来てもらうぜ」

「うぉっ!わ、わかりました」

ギルドに入っていきなり話しかけないでくれ。

自分のビジュアル考えたことないのか。


そのままギルマスと一緒に馬車に乗り込むと直ぐに出発した。

……ちなみにシルバーは横を走ってる。

ごめん、ごめんって謝るからその責める様な思念を送ってこないで。


そのまま六時間程揺られていると馬車は止まった。

外に出てみると学校くらいあるんじゃないかという程の豪邸がたっていた。


でっかぁ……。

貴族って言うからには豪邸なんだろうなと思っていたけど凄まじいなこりゃ。


「ここに住んでんのはマーファを収めるゾルファン公爵様だ、心配はしてないが失礼のないようにしろよ」

「もちろんです」


早速屋敷の中に入るようでギルマスに連れられ玄関をくぐった。

さすがにシルバーは入れて貰えないようなので広い庭で待っていてもらうことにした。

なんか今日シルバーが不憫だな……。


「おお、待っていたぞ!」

玄関をくぐると直ぐにギルマスと同じくらいのマッチョがたっていた。

こっちの人はふさふさだな。


「お会いできて光栄です、ゾルファン公爵様」

「良い良い、かしこまるな。わしのことはゾルファンとんでくれ」

「……ではゾルファン様と」

「うむ!」


「それで早速なのだがわしと契約して特別冒険者になっては貰えないだろうか」

「私としてもその話を受けてもいいと思っているのですが……やはり冒険者として様々な場所に行ってみたいという思いもありまして」

「それに関しては心配しないでくれ、特別冒険者になるとある魔石が支給されるのだがその魔石があれば離れていても話をすることが出来る」

「なるほど、遠くの街にいたとしてもそれがあれば依頼をすることができると……緊急の場合は?」

「うむ、そこはもう仕方が無いからな、他の者を頼るとしよう」


うぅん……話を聞く限りなかなか良さそうに感じる。

金や地位があれば魔獣の死体が手に入るかもしれないし、離れてても会話出来る魔石というのも気になる。


……よし、受けるか!

「わかりました、その話受けさせていただきます」

「おお!いいのかそれじゃギルドマスター早速冒険者カードを発行してくれ」

「かしこまりました、契約を行うには双方の血液が必要な為少しいただきます」


そういうとギルマスは小さいナイフを取り出し渡してきた。

そのナイフで少し指を切り先日作った身分証明書のようなものが沈んだ桶に血を垂らした。


そうすると桶の中の水が渦を巻き始め紙は一枚のカードになった。


「うっし、これが冒険者カードだ、これからよろしくなブランク!」

「わしともよろしく頼むぞブランク」

「はい、よろしくお願いします」


「時にブランクよ、お主エルフの里から来たと聞いたが」

「?はいそうですが」

なんだエルフの里が半信半疑なのか?

そういえば受付嬢も驚いてたな。


「実はわしは昔その里に住んでいたことがあってのぉ」

「え!あの里にですか!」

確かにあの里には人間もいるけどあそこで産まれたってことか?


「いやぁ昔はよく無茶をしてのぉ、そんな時にあの里に住むハイエルフに助けてもらっての」

「……ハイエルフですか」

「あぁ、とても強い人でのぉ、魔法を教えて欲しいと言ったら毎日毎日ボコボコにされてのぉ辛くて辛くて逃げ出してしまったわい」

「もしかして……そのハイエルフスティって名前じゃありません?」

「おぉ、知人だったか」

「……私の師匠です」

その後めちゃくちゃ師匠の愚痴で仲良くなった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る