第15話  甚兵衛さんとの再会

 今日も西の山のイノシシと鹿の討伐に出掛けていたおとみは、

(今日はこれ位で良いかなイノシシ10頭鹿15頭。暫くはお肉

 困らないね)

 討伐依頼の有った村に寄ってイノシシ2頭鹿3頭を置いて帰路に就く

 残りは収納内で、解体して、毛皮をなめす。最近手に入れた能力だ。

 収納物を確認するとなめし皮やら熊の胆やら結構溜まっていた。

 途中で売ってから帰ろう。


 馴染みになった店に寄ると先客がいた。

(あ、あの後ろ姿は!)

「甚兵衛さん。甚兵衛さんじゃない?!」

「う、その声は……おお、おとみちゃんじゃないか!」

「やっぱり甚兵衛さんだ。どうしたの?尾阪の町にきてたの?」


 店の主人が話し掛ける。

「おとみちゃんと甚兵衛さんは知りあいだったのかい?」

「ええ、私の毛皮鞣なめしの師匠です。ご飯をたべさせて貰ったり

 大変お世話になっております」

「そうかい、だから丁寧な仕事っぷりなのか、そうかいそうかい

 甚兵衛さん仕込みだったんだねえ……で今日も売り物かい?」

「うん、でも、甚兵衛さんの方を先に済ませて」

「ああ、そうだね。甚兵衛さん、今日の毛皮代だよ]

「おおありがとよ」

「甚兵衛さん私の家に寄って行ってね。私もすぐに終わらせるから」

「ああ、急がんでもいいぞ」


 おとみが収納から売り物を取り出すと

「こりゃまた凄い量だな」

 代金は次来た時でいいから数だけ確認して」

「大分腕をあげたのう。どれもこれも良い仕上りだ」

 と、甚兵衛さん。

「えへへ、甚兵衛さんのおかげだよ」


「おとみちゃん来てたのかい」

「あ、おかみさん。調子はどう?」

「ああ、すっかり良くなったよ。有難うね」

 おかみさんも治癒按摩所のお客さんだ。


「熊の毛皮8枚に、熊の胆8つ。鹿の毛皮30枚。

 猪の毛皮20枚だね。次は立派な角の鹿の頭を頼むよ。はい、

 預り証。」

「うん、分ったわ。それじゃあまたね。……甚兵衛さん行こう」

「おお、それじゃあ、弥太郎さん、お香さん。また今度」

「はいよ、気を付けて」「無理すんなよ」



 おとみの家に向かう間色々な事を教え、また教えられた。

「それじゃあおみよちゃんも一緒に来てるんだ……」

「ああ、才蔵たちからの尾阪の町でおとみちゃんと一緒に

按摩所の仕事をするって知って荒れて荒れてな、

 グレてやる、不良になってやるって大騒ぎしてな。親御さんから

 儂に尾阪の町に連れてってやってくれって頼まれたんじゃよ。

 おとみちゃんと、才蔵か、佐助とのどっちかと夫婦になってるかも

 知れないぞと言ったのじゃが、そのときは尾阪の町で良い男を

探すよって言ってな。まあ、あの村にはおみよと釣り合う

年頃の男は居なくなってしまったからなあ、

「でも結構若い男女が居たと思ったけど?」

「ああ、あいつら既に相手が決まっていたし

村には碌な仕事も無いし、

大きな町に、出ていくことになっておったんじゃよ」

「そうだったんだね。でも……才蔵にはおかよさんがいるし……」

 一波乱ありそうな予感がしてブルっと身震いするおとみだった。


 才蔵たちと大事な話が有って来たんだが、おとみちゃんにも

 一緒に訊いてほしいのじゃよ」

 初めて見る甚兵衛さんの真剣な顔だった。

 嫌な予感がした。

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