第14話 おとみ治癒按摩所
三国屋の番頭さんが見つけてきてくれた家は、元剣術道場
だったところだった。道場主が病で突然死したため、跡継ぎ
もいなかった為に奥様は道場を売って実家の里へ帰って行った
らしい。
1階は道場と、5つの部屋と厨房。1度に5人入れる大風呂
と便所。家族用の風呂と便所。因みに家族用と弟子用の便所、
風呂は逆方向にある。2階には住み込み女中の部屋だった
男の内弟子の部屋は1階の2部屋が使われていたようだった。
建物はまだ新しく、よく手入れされた裏庭も付いていた。
厨房と風呂の近くに井戸が有る。つまり2つの井戸が有った。
気に入ったおとみは即金で買い取った。1階の床張りの道場
部分に畳を敷いて待合室にした。そのすぐ隣の部屋を、
施術室に、すぐ隣をおかよの仕事部屋にする。
机を置いて帳簿付けと患者の交代の呼び出し係だ。
その反対に用心棒の控室兼宿泊室。
厨房近くに料理係の女中部屋と
掃除洗濯風呂焚きが主な仕事の女中部屋。
初めは自分達4人で交代で回そうと考えていたのだが。
直ぐにも忙しくなるからと、番頭さんが人選を済ませていた。
すぐ隣に宿屋が有り、そこの客を回してくれたら宿側に利益の
1割を渡すという契約も交わした。これも番頭さんの仲介だ。
畳も敷き終わり、座布団も布団も揃い。
【おとみ治癒按摩所(ちゆあんまどころ】の
看板も掛けられていよいよ営業開始だ。
1人10分の施術で1日約50人の患者を癒す。1人
5000円の施術料。今は高めの施術料だが
10日もしないうちに
患者が増えて手が回らなくなったので、1人1万円の
施術料にしたが患者は増えるばかり。
そこで、武士と商人は1万5千円に値上げするも、それでも患者は
減らなかった。商人かどうかは、町の事情通の元番所勤めの
平次爺さんに頼んで選り分けてもらう。噓をついて一般の町人
を騙った者はその後出入り禁止とした。
勿論、町奉行様2名には話を通して有る。
お奉行様のお嬢様には便秘改善の治療も施して、
奥方様方には頻尿、便秘改善等を施しておいたので大いに
喜ばれた。
お奉行様本人には肩凝り腰痛治療、頻尿、痔病の治癒もしておいた。
その結果与力同心も客になって岡っ引き達も良客になったので、
安全が保証された。
1ヶ月後には女中も増え、施術の見習いを受け入れた。但し、
マッサージのみの授業で、治療には特別の才能が必要だと
釘をさしておく。
人物鑑定で才能がありそうな、男3人女2人を指導する事になった。
なんと、その中の1人は佐助だった。
佐助はめきめきと腕を上げて行った。他の4人も負けず劣らずに
按摩師として個人営業出来るまでになったがまだまだお師匠様の
お傍で研鑽したいと誰一人巣立つ者がいない。
弟子が、マッサージ専門で対処して、治療の必要な患者はおとみが
対処する事になった。
その為に予め患者の問診出来る受付要員も必要になった。
通いの勤め人を採用したので。おとみの所は町の重要な働き口に
なっていた。
治療費を払えない人の為に月月、野菜や果物、
魚の干物などを納入する事で治療費に替える案が
料理長から出た。おとみの食費が半端ないからである。
月に一度休日をとれるようになった。
近くの山に獣の被害が有ると聞くと休日には害獣駆除に出掛けた。
当然ながらおとみの食料の肉の確保のためである。
しかし被害を受けていた近隣の村人からは有難られた。
10頭イノシシを討伐したら2頭は村に置いてきた。
ちゃんと討伐してるぞとの証である。
そうしなくても、おとみが山に入ると1年は被害が無くなったので、
感謝されていた。
そんな順風満帆の日々がこわれそうな動きが出始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます