第68話  ケル星人ギルの願望

チクチクする。なんだここは?土の上?グランドのようだ。

「起きろバル!」大きな声だ。ギル?

僕は目を開けた。

グランド?

「ここは?」どうやら、グランドのようだ。

なんだ?今度は、ギルの夢なのか?

僕は起きた。砂埃が舞う。

ギルが僕に手を伸ばす。「大丈夫か。相手チームのあたりがかなり、激しいデフェンスだ。カードが上がらないのは、おかしい。これ以上点数を取られたくないのは、分かるが。」

「頭がクラっとする。」

アナウンスが流れる。

「チームケルの監督が先ほどのプレーにビデオ判定を要求しました。」

僕は立ち上がり、

得点ボードに目を凝らす。1-0

全宇宙大会ジルカップと書かれている。

“ジルカップ?”マスコミのネズミの着ぐるみがスタンド中央で踊っている。

相手チームギラルでは、

スタンドにエルダのウサギの着ぐるみ。

同じく踊っている。

タクが駆け寄る。アビビもみんなユニフォームを着て駆け寄る。

再びアナウンス。

「ビデオ判定の結果、チームギラル、ラコーニ選手の反則です。」

審判が笛を吹く。審判はポップだ。

アナウンスがひびく。「キックはどうやらエース10のバル選手が蹴るようです。」

次の瞬間「ストーン」急降下。地面真下に四角い真っ暗な空間の扉が開き、僕は底なし落ちてゆく。上を見上げると開いた四角い扉から青い空が小さくなっていく。

”なんだ、この絶望感は。”スピードは加速する。落下。

「痛い!」僕の手首ごと、握られる。片手から両手で握られ、落下した暗い空間から地上のグランドに引き上げられる。

「すまない。」ギルの声が小さく僕の耳元に届いた。

審判ポップが「ピピッー。」笛を吹く。

試合開始だ。気づくと僕がゴール前に立っている。

ギルが叫ぶ「バル。決めてくれ。」

僕は応えるように片手をグーにして高く上げる。

「シューッ」左足、高速のキック。

「ゴール!」「同点です!残り時間2分切りました。」アナウンスが絶叫する。

「わあー!」スタジアムが揺れる。

チアガールのクレア、アン、ルナ、バム、ワカにミリが一斉にジャンプする。キラキラの衣装が可愛い。

ギルの目が光る!「バル、決勝点は僕が決める。ボールパスしてくれ。」

「わかった。ギルお前が主役だ。決めろ!決めてくれー!」

相手チームからボール、カット。ギルにロングパスがいく。

「ギル!決めてくれ!」ギルのキック。ホイッスルが鳴る。

ボールは高速、キーパーの頭上を越え左コーナーに”シュート!”

「ゴール!!」アナウンスが再び絶叫!。

「決まったー!!ギル!」「バル!」

僕らは乾いた土埃の中、グランドで抱き合った。みんなドロドロで汗まみれだ。

タクとアビビは、うれしくて泣いている。

ギルが「バル。お前と一緒に戦えてよかったよ。」

「僕もさ。それにさすがギルだ。決めるところできっちり決める。絵にかいたようなヒーローだ。お前は。」

ギルが少しうつむいて「バル、すまない。試合中、お前に嫉妬した。同じ仲間なのに。四角い暗い空間のドアを開けてしまった。バルを落下させた。お前より俺が、主役になりたかった。本当にすまなかった。」

僕はバルの手を握り、「こうして、急降下する僕を助けてくれたんだろうギル。

それに僕は知っている。この世界はギル、お前が主役だろう。」

「そうだな。」ギルが笑う。

僕らは黙って硬く抱き合った。泣いてたタクやアビビ、他の仲間もグランド中央に集まり僕らに飛びつく。

上空の太陽の日差しが眩しくなる。歓声のざわめく声が遠のく。ふらっ。

僕はグランドに倒れこんだ。

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