第66話 次の時間のはじまり・バル

みんなの声がザワザワ聞こえる。「バル、起きて。バル。」聞き覚えがあるワカの声。

「バル。」ワカが僕をゆする。僕はカラダをおこした。

ワカに聞く。「ここはどこ?」

「バルの家、宇宙嵐モンズ星よ。」

そうだ。「ジル、ジルはどこ?」

ワカが「ジル?ジルおじいちゃんのこと?」

僕の脳内が混乱した。ジルは消滅した?それとも消滅していない。存在しない。僕は思わず叫ぶ。エルダは?

「Woooーーー!ジル!」

ワカが「バル、寝ぼけないで。おじいちゃんは庭よ。それに、お母さんのことワカって呼ぶのはだめよ。お父さんじゃありまいし、呼び捨ては良くないわ。」

無意識に「ごめんなさい。」口から出た。

部屋の窓を開けながらワカが「バル、夏休みだからって、朝寝坊は良くないわよ。ちゃんと起きなさい。」

朝の眩しい太陽の光が僕の枕元に届く。

「ミンミンミ、ミー」

セミの声。「ワカ、今は夏なのか?」

「バル、呼び捨てだめって言ったでしょう。ワカじゃなくて、お母さんでしょう。」

「あー、そうだった。ごめんなさい。お母さん、今、僕は夏休み中?」

「そうよ。さっき言ったでしょうバル。大丈夫?夜中に悪い夢でも見たの?それともベットから落ちたのかしら?バル。」

ワカの顔が僕に近づく「わあー!」

僕はワカの顔を押し返して、あれ?僕の手のひらが小さい。えっ?再び脳内が混乱する。僕は僕に言い聞かせた。落ち着けバル。

とにかく落ち着け。脳内で情報処理。

「大丈夫だよ。すぐ起きる。」僕はワカに言った。

ワカは「そう、じゃあ、ご飯できてるから、早く起きてきなさいよ。」そう言って部屋を出ていった。

僕は両手をあげてみた。両手が小さい。顔を触る。小さい。僕はベットを降りた。

勉強机が大きく見えた。窓が高い。これは?たぶん、僕の背が低くなったからだ。

ベランダの窓に映る自分を見た。子供だ。小学生だ。たぶん3年生?かな。

僕は勉強机に近づいた。机の上には夏休みの宿題表が。3年2組バルと書いている。あーやっぱり小学生か。

落ち着け少し脳内を整えよう。僕はジルとエルダ、みんなと古代宇宙嵐モンズ星にいった。そして渦。モンズの心臓部の核。嵐の中に僕ら3人引き込まれて。それから...ズキン。電磁波が脳内を走る。

「バルー!早くしなさい。」

しょうがない、考えるのは後だ。行動あるのみ。ドアを開けた。窓のから夏の風とセミの声がスーッと部屋を走った。バタン。風の勢いでドアが閉まった。

「バタン!」怒ったワカの声。

「バル!ドアは静かに閉めなさい。」

「はーい。」僕はリビングに走って入る。あれ?このリビング知っている。ここは、ハルトの家。「あっハルト。」

ワカがまた叱る。「バル、お父さんを呼び捨てしない。それにあなた、さっきは、わたしのこともワカって呼び捨てしたんですよ。バルを注意してください。」

ハルトはやさしい「男の子は、たまに生意気になるんだ。いいじゃないか、いい子のバルが親を呼び捨てしたくらいで。」

「そうですけど。それに朝から、バルの様子がおかしくて。変なことばかり言うんですよ。ここはどこ?だとか?ほんとバル、大丈夫。どこか痛いとこはない?」

「大丈夫だよ。」

僕は椅子に座ろうとした。ハルトは僕を抱きかかえて抱っこする。僕は照れながら、いいよ、離して。ハルト。いや、お父さん、赤ちゃんみたいだよ。おろして。」

「そうか?」ハルトは僕をやさしく下ろした。

ワカが「2人ともふざけないで、早く朝ご飯食べてしまいなさい。バルはお友達、タク君達とカブトムシをとる約束してたんじゃなかったの。遅れるわよ。お父さんも日曜日だからって寝坊しない。2人ともわかった?」

「はーい。」「すまない。」

ワカが腰に手をあてて「ほんと、この家で一番良い子はおじいちゃんね。」

「おじいちゃん?」

ワカが「おじいちゃんは早起きで、もう庭の手入れしているわよ。2人とも少しは見習いなさい。」

”ジル。”ジルならこの状況を知っている。早く食べてジルに会わなければ。

僕はバクバク食べた。庭に出た。ジル。

人型のジルがいた。

「ジル。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る